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コンフォートマーケット、店内在庫をスマホで確認!なぜ革新的だと言えるのか?

セブン&アイグループの新型スーパーマーケット「コンフォートマーケット」は、どんなところが革新的なのでしょうか? 総菜売場をラウンド式に配置したレイアウトでしょうか? オールセルフレジなど効率化を追求した運営方法? 冷凍食品の品揃え? スマホで購入できる便利さ? こうした特徴のすべてが革新的かもしれませんが、しばらく検証しないと成否は分かりません。ただ1つ、すでに革新的と断言できることがあります。店の商品在庫をスマホアプリで確認できるようにしたことです。それだけで売上が伸びるわけではないとしても、食品スーパーの未来へと続く扉は、この店によって開かれました。

ガラス面が少なく倉庫のような印象を与える外観のたたずまい

顧客は店頭で購入品を決める、は本当か?

 コンフォートマーケットでは、スマホアプリで購入した商品を店頭の「FOODロッカー」で受け取れます。利用客は、店を回りレジで精算する必要がありません。この利便性もさることながら、特筆したいのは店の外で商品を探し、価格や在庫の有無を確認できるという点です。食品スーパーでは従来、これができませんでした。

 「あるといいな」と期待して店まで足を運び、欠品していたり、取り扱いがなかったりでショックを受けるという事態が度々起こります。ネットショッピングの買物体験を通じて、いつでもどこでも探している商品の在庫の有無と価格をチェックできることに慣れた今どき、出かけた先で「無い」と分かるダメージは重いものです。しかも、このガッカリ体験の多くはいまや食品分野で起きます。例えばユニクロや無印良品のような専門店では、気になった商品の店頭在庫は当然のようにアプリやネットで確認できるようになっているからです。

 商品の在庫と価格を事前に知ることができるコンフォートマーケットの利便性は画期的です。ロッカーでの受け取りサービスを利用しないとしてもです。スーパー業界ではよく、利用客のほとんどが来店してから購入するものを決めるといわれますが、それは来店しないと何を・いくらで売っているか分からないことの裏返しに過ぎないと思います。仕事帰りの主婦にとって夕方の時間は貴重です。商品の在庫状況を事前に調べることができれば、スキマ時間で何を買うのか考えることができます。わざわざ時間を割いて店に来た挙句、「目的のものは欠品」というショックを受けることもなくなります。

 商品情報を開示したら、競合店に手の内をさらしてしまう・・・、店側にはそんな心配もあるわけですが、本当に必要な心配でしょうか。多くの場合、競合はすでに自店の価格を知っています。競合の価格も知っているはずです。店同士は相互に知っている価格ですが、顧客はチラシ掲載以外の商品について知りようがありません。事前に商品を調べることができて、さらに買物リストを作るような機能があるだけでも、顧客にとっては買い忘れ防止の利便性になり、店にとっては買上点数が増えるかもしれません。

 コンフォートマーケットの場合、ロッカーで保管する都合上、アプリからでは総菜や冷凍食品は買えません(19年8月中旬時点)。アプリで買えないものは店を一回りして買うとしても、やはり時短になるでしょう。目的の商品を漏れなく買い揃え、店で発見した商品をさらについで買いする・・・、リアルとネットが融合した売場の利点とは、そういうことではないでしょうか。

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これからのスーパーマーケットも、スマホを起点にリアルの買い物体験を考えるべきか

スマホを起点にリアルの買物体験を考える! 

 商品の在庫情報を開示するというコンフォートマーケットの試みは、スマホを起点に買物体験を再構築するものです。それはニュー・リテールとして注目を集めるアリババグループの「盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)」とも通じるものがあります。どちらもリアル店舗は売場というだけでなく、顧客の生活にほど近い倉庫という位置付けでしょうか。そういえば、コンフォートマーケットの1号店である中延店(東京都品川区)の外観は、どことなく倉庫のようなたたずまいです。

 フーマー・フレッシュとコンフォートマーケットでは違いもあります。フーマーは宅配にも力を入れますが、コンフォートマーケットはやりません。顧客に来てもらうだけです。日本では店から家までのラストマイルを埋めるコスト上の合理性にめどが立ちません。ネットスーパーがなかなか確立できない理由です。

 利用者にとっては、帰宅までのほどよい距離に店舗がある場合、自宅まで届けてもらうよりも店でピックアップした方が事は早く済みます。午後7時に帰宅する有職主婦が、8時までには子供の食事を済ませたいとしましょう。調理に20分、7時30分には食べ始めたいとして、ネットスーパーはその日に使いたい食材をピンポイントで届けてくれるでしょうか? 至難です。帰りに店に寄った方が確実ですし、コンフォートマーケットのような仕組みがあれば、一から買物をするよりも10分早く帰宅できるかもしれません。

 スマホを起点に買物体験を考える、これこそ未来の食品スーパーの方向性だと期待しています。来店頻度の高い業態だからこそ、買物体験は時間と場所の制約から解放されるべきです。