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世界旗艦店「無印良品銀座」にみる
食品強化の方向性と既存店への波及

良品計画は4月4日、世界旗艦店「無印良品銀座」をオープンする。昨年12月2日に閉店した有楽町店の後継店舗の位置づけで、有楽町店と比べて食品の広さ(陳列棚換算)を34%も増加させた。食マーケットへの侵攻を強める良品計画の、世界旗艦店「無印良品銀座」で見えた食品強化の方向性と既存店への波及の行方をまとめた。

無印良品銀座外観

年間230万人の集客めざす

 無印良品銀座は、東京都メトロ銀座駅、同銀座一丁目駅より徒歩3分、JR有楽町駅より徒歩5分、銀座の象徴ともいえる並木通り沿いにある。無印良品の店舗と、食堂のMUJI Dinner、そして日本初MUJI HOTELからなる無印良品のすべてがつまった施設だ。

 店舗は地下1階から6階までの全7フロアで展開。店舗面積(MUJI Diner317㎡を除く)は3981㎡で、無印良品単独の店舗面積では世界最大。地下1階が食品売場とMUJI dinner1階が青果、弁当、ベーカリー、ジューススタンド、2階から5階が衣料、住関連商品となっている。店舗最上階の6階は、お茶やお酒を楽しみながら文化に触れられる「ATELIER MUJI GINZA」、レストラン「WA」、MUJI HOTELのフロント、7~10階がMUJI HOTELの客室である。

 無印良品銀座の前身は昨年12月に閉鎖した有楽町店。良品計画の松崎暁社長は「有楽町店は2001年11月に、標準店舗の面積が150坪の時に1000坪に挑戦した店。1000坪を埋めるために、Café&Meal MUJI、ATELIER MUJIなど多くの取り組みを行い、話題となった。当時国内店舗数はいまの半分で、海外でも認知度が低かった。そうしたなかで銀座エリアに出店して好意的に迎えられたことが自信になった」と述懐する。

 無印良品の聖地ともいわれた有楽町店の年間客数は190万人。これを大きく上回る230万人をめざすのが、この無印良品銀座である。

食の領域 全世界で拡大していきたい!

良品計画の松崎暁社長

 なぜ、無印良品銀座は食品の売場を大幅に拡大したのだろうか?松崎社長は「生活の基本となるものを提供するという観点において、食の基本領域がこれまでの無印良品には欠落していた。(食の領域を)拡大するべく、有楽町店での青果の取り組みをはじめ、2018年には冷凍食品も開発してきた。食の領域は、我々の生活の基本であり、全世界で拡大していきたい」と話す。

 無印良品の商品コンセプトは、「これでいい」という自制を促す満足感が得られ、生産者や自然に配慮しながら自己を整えられる「感じよいくらし」ができる、というものだ。それは、大量生産のナショナルブランド商品とも、単なる珍品や高級品とも違う。昨年、イオンモール堺北花田店でスーパーマーケットを展開したときは、必要なものが揃う品揃えを重視するあまり、一部ナショナルブランド商品にたよらざるを得ず、「あえてその商品を無印良品が取り扱う理由」が見えないケースも見られた。

 その一方で、地産地消や有機栽培、添加物不使用、生産者と生活者が直接つながる、といった商品は、無印良品らしさと強く結びつくものだ。それゆえ、青果をはじめとする生鮮と無印良品のコンセプトにおける相性の良さを感じたものである。もちろん、地域ごとに特徴のある調味料や酒、素材にこだわるベーカリーなどもそうだ。

 そう考えていくと、堺北花田店であえてスーパーマーケットに取り組んだことで、無印良品に欠落している商品群が明らかになったのだろう。現在は、優先順位を付けて、順次、開発を進めているのが現在地点だと言えそうだ。もちろん食品を強化する背景には、他の衣料・住関連品と比べて圧倒的に購買頻度が高いことがある。これにより、館全体の集客力と販売力を高めるねらいがある。

銀座の食の取り組み
他店に導入していく

 以上を踏まえて、無印良品銀座の食に関する売場をみていく。1階で象徴的な売場は、青果売場、弁当・サラダ、ベーカリーである。青果売場は、30~40の農家・農業法人から青果物を仕入れる。これは有楽町店と比べると1.5~2倍である。生産者のこだわりを伝えるために、生産者による店頭販売や、生活者によるいちご狩りツアーなども企画する。弁当は化学調味料不使用の日替わり弁当5SKUのうち、毎日1種類をアウトパックで提供。近隣エリアに対しては、5個以上の注文で、配達サービスも行う。日替わり弁当のほか、世界のローカルごはん6SKU、カレーのごはん2SKU、サラダ4SKUなどを取り扱う。

青果売場は、30~40の農家・農業法人から青果物を仕入れる

 早朝7時半からオープンして、オフィスワーカーの朝食ニーズに応えるのがベーカリー。シンプルなロールパンやチョコレートを練りこんだ食パンなど、90~450円の価格帯でできたてパンを提供する。このほかスパイスやハーブを聞かせたフレッシュジュースや、32種類のレシピから好みの茶をその場でブレンドしてもらえる「ブレンディ―工房」などがある。

有名飲食店出身のシェフが腕を振るう厨房では、豚肉、牛肉、鹿肉を一頭買い

 地下1階が朝食、昼食、夕食を提供する「MUJI Dinner」だ。席数は118席。朝食は500円~、ランチも850円~と手ごろな価格が特徴で、夜も客単価3000円ぐらいを想定する。有名飲食店出身のシェフが腕を振るう厨房では、豚肉、牛肉、鹿肉を一頭買い。鹿肉は店内でさばき、豚肉は店内でソーセージに加工して提供する。

できたての温かい豆腐を朝、昼、夕と毎食ごとに楽しめるのも特徴。宮古島にわたって伝統的な豆腐の製法を取り入れ、沖縄の塩と地釜、相性の良い長野県産の大豆を使ってつくり上げる。

できたての温かい豆腐を朝、昼、夕と毎食ごとに楽しめる

 このように食に関する取り組みを強化した無印良品銀座。このうち、「化学調味料不使用の弁当、ジビエ、地域と生活者がつながる取り組みについて、他店に広げていきたい」(松崎社長)方針だ。