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ロピアと至近で競合! エイビイ海老名店に見た、ローコストオペレーションの真髄

ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)傘下でディスカウントスーパーを展開するエイヴイ(神奈川県/川野澄人社長)は2月16日、同社14店舗目となる「エイビイ海老名店」(以下、海老名店)をオープンした。前編では、同店の青果、鮮魚、精肉売場をレポートした。後編となる本稿では日配、冷凍食品、菓子、加工食品、酒類の売場を解説。同店の強さに迫ってみたい。
調査日=2月23、27日、3月5日 ※本文中の価格はすべて本体価格

エイビイ海老名店の外観

日配・加工食品・冷食は売れ筋NB中心の構成

 和日配はオーソドックな売場配置で、陳列もどこかゆったりとした印象を感じる。商品を見ていくと、豆腐はロピア(神奈川県/高木勇輔代表)でも扱いのある「ハギハラ」の商品を揃えおり、「濃い豆乳絹ごし豆腐・木綿350g」(54円)を販売。こだわり商品としては、「おとうふ工房いしかわ・究極のきぬ350g」(148円)、「ヤシマ食品・相模の国大山絹350g」(98円)などを揃える。

 納豆は売れ筋をベースに31SKUでラインナップしており、オープンケース最下段で「タカノフーズ・極小粒ミニ50g×3」(65円)、「オーサト・昔ながらの納豆屋さん40g×3」(45円)を価格訴求していた。全体的に和日配はナショナルブランド(NB)の売れ筋をベースとした堅実な対応である。洋日配も同様にNB売れ筋をベースとした商品構成となっていた。

 冷凍食品・アイスクリームは広く売場を割いており、冷凍食品を重視した構成となっている。こちらもNBを中心としたバランスのよい品揃えで、「業務用商品」「餃子」「唐揚げ」をとくに充実させているようだ。

 調査日は「ハーゲンダッツジャパン・ミニカップ」各種を1家族10点限り限定で128円の超特価で提供。開店時から売場に列ができ、スタッフ4~5人が対応に追われていた。正午過ぎに一度売り切れとなったものの、再入荷で午後も販売を継続していた。

 加工食品はほかの既存店と比べて売場面積が広いこともあって、商品の扱いも多い。たとえば、2018年オープンの「新鶴見店」(神奈川県横浜市、売場面積1100坪)では、海苔コーナーは12尺84SKUの扱いだったが、海老名店では18尺120SKUを扱っていた。同様にパスタコーナーも21尺で、「スパゲティ」34SKU、「マカロニ」28SKUと新鶴見店(合計40SKU)とくらべて大幅に増えている。

 菓子はジャンブルケースを多用して売場を展開する。「浪花屋製菓・柿の種ピーナッツ入り6袋入」(178円)、「不二家・カントリーマアムチョコまみれ」(168円)など売れ筋NBをEDLP(エブリデイ・ロープライス)で提供する。

 酒類はエンドを含めると約170尺で売場を展開しておる、売場スペース構成比も9%と高い。圧巻は日本酒銘酒一升瓶の品揃えで、346本のスペースで、「獺祭」「久保田」「景虎」「剣菱」など104本をラインナップ。同様に、焼酎乙類も充実させており、3尺4段6本で「佐藤」「魔王」「「いいちこ」など一升瓶128本を揃える。この品揃えは地域ナンバーワンであるのは間違いないだろう。

開店時から長蛇の列も、エイビイとしては想定内?

 エイビイの店舗では原則、チラシ販促を実施していないが、開店時はチラシを投入し、日替わりで販促を実施。調査期間中は、「オープンセール第3弾」として、「明治・ブルガリアヨーグルト400g」(78円)、「ヤマサ・昆布つゆ1ℓ」(100円)、「東洋水産・マルちゃん焼きそば3袋」(78円)、「日清フーズ・小麦粉フラワー1kg」(100円)など、ほかのチェーンでは見られない超目玉価格で売れ筋NBを提供していた。これらをチラシで見たお客が店舗に足が向くのは当然であろう。ただ、3月上旬になるとチラシ販促は行わず、EDLPスタイルの営業となっていた。

 調査期間中、オープンしてから2回目の日曜に店舗を訪れると、「オープンセール第3弾」の期間中とあって、開店時から店舗の前には長蛇の列ができ、駐車場が満車状態で、駐車場に入るクルマで店舗前の道路が渋滞となっていた。

 また、開店から約30分間は入場制限を実施しており、11時過ぎには16台のレジがフル稼働していた。キャッシュレス決済を扱わず現金決済のみで、セルフ精算機を導入していることもあってレジ作業はスムーズだったものの、レジ待ち行列は店舗奥側壁面い達するほどだった。ただ、こうした光景はエイビイの日曜午前中ではおなじみであり、同社としては想定内といったところだろう。

エイビイに見る、ローコストオペレーションの真髄

 前編で述べたとおり、海老名店は約400m離れた場所にある「ロピアららぽーと海老名店」と競合関係にある。両チェーンが競合するのはこれが初めてではなく、神奈川県大和市の中央林間エリアにて、「エイビイりんかんモール店」「ロピア中央林間店」が約650mの距離でしのぎを削っている。

 海老名店、ロピアららぽーと海老名店で主要商品を比較してみると、日配と加工食品は互いが意識して価格を合わせているような印象を受ける。具体的に言うと、エイビイはロピアの価格に合わせたEDLP政策を展開する一方で、ロピアはエイビイの特売価格を合わせた価格設定をしているようで、互いに一歩も後に引かないという意地を感じた。

 生鮮では、青果は両店でサイズやグレードが異なり、共通する商品は少なく、単純に価格を比較するのが難しかった。精肉でも、たとえば豚肉では両店とも千葉県産を扱っているが、エイビイは「名水もち豚」、ロピアは「三元豚」といった具合に微妙に商品が異なる。輸入豚も、エイビイは米国産ホエー豚、カナダ産、スペイン産で対応する一方で、ロピアはカナダ産、スペイン産、メキシコ産を揃える。

 全体的にロピアは銘柄肉にこだわった商品ラインナップであり、売場を見ていると、エイビイは「スーパーマーケット型」でロピアは「精肉専門店型」であるような印象を受ける。お客がどちらを選択するかは今後の両店の動向に注目したいところだ。

 「ディスカウントストア」として語られることも多いエイビイだが、同社は“高鮮度・高品質・美味しさ”(会社サイトより)を追求した「スーパーマーケット」であり、自らを「ディスカウントストア」とは表現していない。あくまでスーパーマーケットというフォーマットを構築するための「ロ―コストオペレーション」の追求が、エイビイ独自のスタイルを重要な構成要素となっていると言っていい。競合関係にあるチェーンは、エイビイをディスカウントストアではなく、スーパーマーケットとして認識する必要があるのかもしれない。

 最近の新期出店を見ていると、ローコストオペレーションという視点が薄れてきているような印象も受ける。エイビイの店舗を見れば、ローコストオペレーションとは何かを再考させられることだろう。

(店舗概要)
所在地 神奈川県海老名市泉2-5-1
開店日 2022年2月16日
営業時間 10:00~19:00
売場面積 1500坪
駐車場台数 389台