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カスミ新業態「BLANDE」2号店 研究学園店を徹底レポート!

「食の専門性」深掘りした売場の全貌とは

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/藤田元宏社長)傘下のカスミ(茨城県/山本慎一郎社長)は2月17日、新業態の「BLANDE(ブランデ)」2号店である、「BLANDE研究学園店」を茨城県つくば市内にオープンした。「食と健康美」をテーマにドラッグストアのウエルシア薬局(東京都/松本忠久社長)の売場を併設した1号店とは異なり、「食の専門性の深掘り」コンセプトとした売場づくりを志向している。※文中の商品はすべて税抜

「ここにしかない商品」と滞在型の店づくりで買い上げ点数アップめざす

BLANDE研究学園店は、つくばエクスプレス「研究学園」駅から車で約5分、直接距離で約1.4kmの場所にある。店舗から半径2kmの商圏内には約200のショップが集まる、北関東最大級のショッピングセンター(SC)「イーアスつくば」や、高い集客力を誇る「コストコホールセール つくば倉庫店」等がある。同圏内には、8276世帯/2469人が居住、戸建てが中心で比較的所得の高い3040代のファミリー層が多い。

2月17日にオープンした、BLANDE研究学園店

カスミは、つくば市内に旗艦フォーマット「フードスクエア」を含め計17店舗を出店している。研究学園店から半径1.5km圏内に限っても「フードスクエアつくばスタイル店」や「フードスクエア学園の森店」があるほか、128日にはBLANDE業態の1号店「BLANDEつくば並木店」をオープンするなど、ドミナントエリアでの出店を拡大している。

カスミの山本慎一郎社長は、BLANDE研究学園店の位置づけを「つくば市内の既存店にはない、食に特化した、お客さまにゆっくりとお買い物をしてもらう店」だと説明する。2階建て(1階が売場、2階はラウンジとクッキングスタジオ)のBLANDE研究学園店の売場面積は1997㎡で、取り扱いSKU1452SKU。このうち、BLANDE出店を機にローンチしたオリジナルブランドの「MiiL Kasumi(ミールカスミ)」は1375SKUに上る。さらに、ナショナルブランド(NB)商品についても「イズミ うずらの卵のピクルス(798)」など、既存店では販売されていないメーカーの商品も豊富に販売する。

お客の滞在時間を伸ばすため、イートインスペースを広く確保したのもBLANDE研究学園店の特徴だ。2階の、会員制プログラム「BLANDE Prime(ブランデ・プライム)」のゴールド会員(年会費5000円)だけが利用できるソファや高級感のある椅子が設置されるラウンジをはじめ、カフェとしてもダイニングとしても使える「Café&Dine」等、合計4つのイートインスペースがある。

「BLANDE Prime」のゴールド会員だけが利用できる2階のラウンジ

BLANDE研究学園店のねらいはドミナントエリアでの差別化にあり、「ここにしかない商品」を訴求し、広々としたスペースを用意することで、お客の滞在時間を伸ばし、一人当たりの買い上げ点数を増やすことにあると言える。

「食」に特化するため非食品は販売せず! 大胆な売場づくりの中身

BLANDE研究学園店の売場を詳しく見ていこう。

「食に特化した店」の言葉通り、研究学園店には生活雑貨や日用品等、非食品の商品が販売されていないのが大きな特徴だ。

1階の店舗右側の入り口を入ると、青果、精肉、鮮魚の生鮮食品コーナーが並ぶ。

青果売場では地元・茨城県で採れた、ケールとブロッコリーを掛け合わせた新品種「ケロッコ」(198円)や、甘くて葉っぱまで食べられる「かつらの赤ねぎ」(198円)等、珍しい野菜も販売していた。

地元茨城県産の野菜をわかりやすく訴求する「やさいバス」。

精肉、鮮魚売場では、専門店に来たかのような印象を受けた。精肉売場では茨城県産「ローズポーク」のロースうす切(100グラムあたり298円)や「飯村牛カルビバラ焼き肉用(100グラムあたり1680円)」などを量り売りする。カスミとしては初めて、精肉の対面販売を直営で行っている(既存店の「フードスクエア」業態を中心に61店舗で対面販売は導入されているが、それらはコンセッショナリーにて運営されている)。

精肉の対面販売を直営で行う。

鮮魚売場では、「北海道産 松川ガレイ(5000円)」や「静岡県産 金目鯛(2890円)」など丸魚がガラスケースにところ狭しと並べられていて、種類も豊富だった。さらに、「北海道産 活きあさり(100グラムあたり198円)」や「日本太平洋北部 生メカジキ角切り(100グラムあたり198円)」等の量り売り販売も行っていた。

鮮魚売場では、100グラム毎の量り売り販売も行う。
「北海道産 毛ガニ(8000円)」や「三重県産 伊勢えび(5000円)」など、高価格帯の商品も

精肉や鮮魚売場をはじめ、総菜売場の揚げものコーナー、やきとりコーナーとベーカリーの計5か所で対面販売が行われている。この数字は、カスミとしては最多だ。

「食品スーパーはセルフサービスが主だが、対人接客でお客との接点を増やし『食』の専門性をより尖らせたかった」(山本社長)。

酒類売場でも、BLANDEが打ち出したい方向が見える。並木店同様、研究学園店でも豊富な種類のワインやクラフトビール等を販売していて、特にワインはゴンドラ4本を使い、フランス、イタリア産ワインをはじめ、国産ワインの「ジャパンプレミアム 穂坂メルロ(3180円)」やチリ産の「カッシェロ ディアブロ ロゼ(1280円)」等、様々な産地のものを陳列する。これは、BLANDEつくば並木店での成功事例を受けたもので、通常では酒類全体の売上のうち、ワインが占める割合は約8%だが、同店では約24%に上るという。クラフトビールも約25%(既存店では19%)と、酒類の収益構造が大きく変化した。

さまざまな産地のワインが並ぶ種類売場。専門店のような雰囲気を感じさせる。

並木店では「土曜日」好調 「BLANDEでしか買えない」が魅力

カスミが満を持して開発した新業態BLANDE。1号店であるつくば並木店は開店から約1か月で対予算比140%の売上を記録するなど、好調に推移しているという。

そして、BLANDEでは既存店とは異なる買物動向が見られるようだ。「並木店では、特に土曜日の売上が良い。MiiL Kasumiをはじめ、品質にこだわった特徴的な商品を多く取りそろえる同店では、『その日の食事』のために休日に家族連れで来店するお客様が多い。ストック型の生鮮食品やグロサリーをメインに買い物をする『フードスクエア』業態をはじめとした既存店とは利用動向が異なる」(カスミ常務取締役・塚田英明上席執行役員)。

MiiL Kasumiの総菜。地元茨城県産の素材を使った商品が多く販売される。

お客1人あたりの平均購入金額も、通常のカスミの店舗では平均で約2200円だが、並木店では約2700円。同店の商品の平均単価が約320~330円と他業態の約190円よりも高いことがその大きな理由だが、生鮮・総菜の売上が約60%(他業態では約50%)であり、MiiiL Kasumiの売上も全体の内半分を超えていることを考えると、「BLANDEでしか買えない」商品に魅力を感じ、買い物を楽しんでいるお客が多いことが伺える。

「お客さまの新しいライフスタイル、新しい価値観に沿った商品をBLANDEでは提供し、既存の店への『起爆剤』にしたい」(山本社長)。

大容量ティラミスなど、「家族で楽しめる」商品訴求 

前述のとおり、BLANDE研究学園店の顧客層は30~40代のファミリー層が多く、つくば並木店に比べて年齢層が比較的若いという特徴がある。そこで、彼らに向けた商品提案にも力を入れている。たとえば、大容量の「MiiL ティラミス(798円)」や高級アイスクリームの「朝日 モエツカ ワイルドベリーアイス(980円)」等、 子どもと一緒に楽しめる商品を充実させている。

大容量の「MiiL ティラミス(798円)」

BLANDE研究学園店の年商目標は20億円(つくば並木店は16億円)。並木店と比べると、生鮮部門と総菜部門の売上構成比が高いため、そのぶんを積み増した。また、「生鮮・総菜の売上が6割(通常5割)」を象徴するよう、並木店ではアウトパックの総菜よりも店内で手をかけて調理したものの方が、売上が伸びているという。「鉄板ナポリタン(498円)」や「きのこクリームオムライス(498円)」等の「BLANDEでしか販売されていない総菜を目的に来店されるお客様が多い(塚田氏)」のがその理由だ。研究学園店でも店内調理の総菜を充実させるべく、製造ラインを見直し、自動発注できる商品群を増やしていく。

店内で調理された「鉄板ナポリタン(498円)」。

BLANDEの今後の出店計画について、山本社長は「具体的には決定していない」としつつ、「これまでのフォーマットでは出店できなかったエリアにオープンするのも選択肢の一つ」と話した。