2022年から2年連続で価格改定を行った即席麺だが、おいしさと簡便性に加え、タイパ(タイムパフォーマンス)の高さから他のカテゴリーに比べて影響は少ないと考えられる。今年も需要期に向けて、各社では新商品の投入や主力ブランドの販促に力を入れ、需要拡大を図っている。
非常食としての需要も高まり、8月の金額PIは2ケタ増
KSP-POSデータの即席袋麺の期間通算(2023年9月~24年8月)の金額PIは、7861円で対前年同期比4.5%増、数量PIは31.11で同1.9%減となった。価格改定の影響で金額ベースでは前年を上回ったが、数量ベースでは微減となった。
月別数量PIは微減が続いているが、6月以降はプラスに転じている。とくに8月は金額PIが同11.6%増、数量PIが同8.4%増となった。
これは日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が8月に発生したことが影響しているようだ。南海トラフ地震との関連も心配されたことから、即席袋麺の需要がアップしたことが予想される。
即席袋麺は非常食としてのニーズも高く、災害が起こると一時的に需要が高まる傾向にある。これは即席カップ麺でも同様で、8月の金額PIは同11.5%増、数量PIは同11.3%増と大きく伸長した。また、6~8月は記録的な暑さとなったが、金額PI、数量PIともに堅調に推移している。
即席袋麺といえば、今までは5食パックが販売の中心となっていたが、世帯人数の減少により「5食は多すぎる」と感じている人が多いようだ。各社では5食パックに代わり、3食パックや1食タイプに力を入れている。
日清食品では今年3月に「日清ラ王」の5食パックを終売し、3食パックを発売した。それに合わせて品質もリニューアル。テレビCMでは時代に合わせて5食パックから3食パックに変わり、品質も向上したことを訴求している。
さらに3食パックで展開している「日清これ絶対うまいやつ♪」もこの秋にリニューアル。スープのおいしさと麺の食べ応えをアップし「これ絶対うまいやつ♪プレミアム」に変更した。パッケージに金色を使い、店頭でも目を引くデザインに一新した。
22年4月に3食パックで発売した東洋水産の「マルちゃん ZUBAAAN ! 」。同社の新技術を取り入れた麺に、今までにないスープで専門店のクオリティを実現した。この秋は、〈背脂濃厚醤油〉をリニューアルし、〈博多豚骨ラーメン〉を追加した。
また、生麺のようなもっちり食感の超極太麺が特徴の明星食品「明星 麺神(めがみ)」はこの秋、〈豚骨醤油〉と〈味噌〉はスープを強化し、新メニューとして〈油そば〉を発売した。
5食パックが中心の即席袋麺売場だが、3食パックや1食タイプの商品が増えることで、今後売場も変わっていくことが予想される。
一方、有名ラーメン店や一流料理人とのコラボレーション商品も人気を集めている。サンヨー食品では、和洋中の一流料理人が監修した「サッポロ一番」を11月に発売。コラボ商品発売は既存の消費者だけでなく、新たなファンを獲得することにつながっている。
ここ数年、急成長を続けているのが韓国の即席麺。農心ジャパンの「辛ラーメン」や「ノグリラーメン」などが好調に推移している。今年10月には「辛ラーメン」の世界観を体感できるポップアップを開催。
来場者が楽しめそうなコンテンツや試食会などを行った。同社ではこうした体験型イベントやSNSでプロモーションを強化している。
話題の新商品の投入で即席カップ麺は回復傾向
KSP-POSデータの即席カップ麺の期間通算の金額PIは、1万8989円で対前年同期比2.5%増、数量PIは139.15で同3.2%減。カップ麺も袋麺同様に価格改定の影響で数量PIでは前年割れ、金額PIでは微増となった。6月以降は数量PIでも上回り、回復傾向にあるようだ。
ロングセラーブランドを筆頭に定番商品が根強い人気の即席カップ麺。リーディングブランドの「カップヌードル」は、昨年9月に発売した「特上 カップヌードル」が好評で、今年9月にはその第2弾として同4品を新発売。「特製松茸風味オイル」や「特製トリュフ&バターオイル」などを加えて仕上げる商品で、ワンランク上のスープと具材が味わえる。
東洋水産の「MARUCHAN QTTA」はこの秋にリニューアル。パッケージデザインには、ブランドキャラクターの「クッタくん」のイラストを加え、愛着や親しみが持てるパッケージに変更した。また、〈シーフード味〉は、具材として新たにキャベツを採用し、具材感をアップした。
明星食品では、1984年に発売した「明星 青春という名のラーメン」を新たに令和版として新発売。当時のパッケージの印象は残しつつ、新開発の具材や麺を採用した。
ご当地商品など高付加価値の丼タイプが好調
即席カップ麺の中でも高付加価値の丼タイプが好調で、有名店とのコラボ商品やご当地の味わいを商品化したものなどが発売されている。明星食品の「明星麺神」ではこの秋、初となる丼タイプのカップ麺を新発売。ご当地ラーメンとして確立している横浜家系ラーメンと京都鶏白湯を商品化した。麺・スープ・具材すべてにこだわった味わいとなっている。
ヤマダイの「ニュータッチ 凄麺」のご当地シリーズは自宅にいながら手軽に本格的な味のご当地ラーメンが楽しめると好評のブランドで、今年秋にはシリーズ28品目の〈茨城けんちんそば〉を新発売した。
日清食品の「日清のどん兵衛」は、今年9月に麺・つゆ・具材・七味のすべてを東日本と西日本で分けた“ぜんぶ東西分け”を実現。テレビCMなどで訴求し好調に推移している。
10月からは東と西のきつねうどんと天ぷらそばの4品に加え、「博多」と「信州」を加えた6品を「利きどん兵衛」として期間限定で発売。食べ比べしたくなる商品の投入で、買上点数アップを図っていく。丼タイプのカップ麺は、今後も需要拡大が期待されている。