インフレの影響が長引くなか、100円ショップは消費者にとって、これまで以上に日常生活に欠かせない業態となっている。筆者もその1人で、自宅は100円ショップで購入した商品であふれている。なぜ100円ショップはこれほどまでに消費者にとって魅力的なのか。安さ以外の価値や強みとは何か、生活者の視点も交えながら商品や店舗をあらためて見つめ直し、考察してみた。
SM・専門店の縮小カテゴリーを網羅
今回、筆者の身の回りに100円ショップで買った物がどれくらいあるかをあらためて調べてみた。
図表は、一般的な食品スーパー(SM)における衣料・住居関連品部門の商品分類と、大創産業(広島県/矢野靖二社長)が展開するECサイト「ダイソーネットストア」のトップページで表記されている商品カテゴリー、そして筆者自身が所持している商品を列記したものだ。
こうして見てみると、「ダイソーネットストア」が掲げるカテゴリーはSMの非食品の商品分類をほぼ網羅しており、さらに筆者の所持品もほぼ全カテゴリーをカバーしていることがわかる。そしてそのほとんどは、SMや専門店ではダウントレンドになっているカテゴリーである。
つまりSMや専門店の売場が縮小するのと反比例するように、100円ショップの取り扱いカテゴリーが拡大し、自身も知らず知らずのうちに100円ショップを日常の買物先として選定していた、というわけである。
「ダイソーネットストア」ではさらに、「推し活」グッズや、若年層に人気のファッションショー「TOKYO GIRLSCOLLECTION」とコラボしたコスメ商品など、マーケットトレンドにいち早く対応した商品も豊富に展開。あらゆる角度からMD(商品政策)を策定し、消費を牽引する業態として成立していると言える。
出店拡大の背景にある出店先・消費者のメリット
近年、100円ショップはSMの隣接・近接した場所で展開したり、あるいはインショップのかたちでの出店も目立っている。
一般的なSMの平均1品単価は210円強であり、100円ショップ(とくに100円をメーンとしつつそれ以上の価格帯も展開しているチェーン)と1品単価ではほぼ同価格帯である。そのため100円ショップとSMをセットで展開すれば、総合スーパー(GMS)のような買い回りが可能になる。
かつ、前述したように100円ショップが扱うカテゴリーは多岐にわたるため、立地や商圏特性に応じて品揃えを柔軟に変化させることができる。出店余地はほかの業態に比べて明らかに大きく、それが100円ショップ各社の積極的な出店につながっているのだろう。
他方、100円ショップは消費者の買物利便性の観点でもメリットが大きい。扱う商品はGMSやホームセンター(HC)と重複するところも多いが、同一カテゴリー内でプライスレンジの広い品揃えの中から、低価格帯の小物を探すのには労力が必要だ。だから、
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