酒税改正以降、ビール類ユーザーの流入も増え、好調に推移するRTDのカテゴリー。さまざまなサブカテゴリーが存在するが、甘くなく食事に合わせやすい、本格感のある味わいとして、焼酎やジンなどの原酒を使用した原酒ソーダが注目されている。
ウイスキーハイボールから始まり
ジンや焼酎などアイテムに広がり
RTDのカテゴリーは、一躍ブームとなった高アルコール系をはじめ、フルーティーで果実味のある果汁系、若年層や女性に人気の低アルコール系など、さまざまなフレーバーやサブカテゴリーを生み出してきた。コロナ禍中はレモンサワーが大きな話題となり、メーカー各社さまざまな商品を発売したことで酒類売場を席巻したことも記憶に新しい。
RTDカテゴリーが伸長する背景には、コロナ禍でより顕在化した家飲みニーズとともに、酒税改正も大きく影響している。2023年10月の酒税改正では新ジャンルと発泡酒の税率が一本化されたこともあり、新ジャンルユーザーが他の酒類に流入。中でもRTDへの流入は加速度的に増えている。
ストロング系や果汁系、レモンサワーなど、さまざまなサブカテゴリーが誕生し、酒類売場を盛り上げてきたRTDだが、近年、特に伸長しているのが、無糖系と呼ばれるサブカテゴリーだ。無糖系のRTDはキリン「氷結®」やサントリー「-196」といった各社のメガブランドから主に展開されているが、余計な甘さのないすっきりした飲み心地と、多彩なフレーバー展開で好調に推移している。
「甘さがない」「食事に合う」といったワードは、ビール系ユーザーに特に刺さりやすいフレーズだ。しかし、一部の消費者は既存のRTDに対し「人工的な味や香りで誤魔化していそう」「酒感や本格感が感じられない」といったネガティブなイメージを抱いている。
こうした既存のRTDの不満点を解消する次世代のRTDとして期待されるのが、キリンビールの提唱する「原酒ソーダ」というサブカテゴリーだ。
原酒ソーダとは、特徴のある原酒を炭酸で割ったRTDを指し、原酒由来の品質感を期待して購入を検討する本格的な味わい、という点が大きな特徴となっている。
これまでの原酒ソーダは、「角ハイボール缶」や「トリスハイボール缶」といったウイスキーハイボール缶が中心だったが、近年は、「翠ジンソーダ缶」「アサヒGINON」といったジンベースの原酒ソーダが登場し、徐々に市場が広がっている。
冷蔵ケース内でもコーナー化が進む
キリンビールでは、次世代のRTDとして原酒ソーダ商品の開発に注力。23年秋に「キリン 上々 焼酎ソーダ」を発売した。同品はメルシャン八代不知火蔵の本格麦焼酎を一部使用。焼酎らしい飲みごたえや香りを感じつつも、ソーダ割りによるさわやかなおいしさで新たなユーザーを獲得している。
さらに24年8月にはジュニパーベリー100%※の国産ジンを使用した「KIRINPremium ジンソーダ 杜の香」を発売。ジュニパー・ジンのさわやかな清涼感と軽やかな炭酸感、さらにレモンとライムを加え、スッキリとした食事にも合うジンソーダに仕上げている。
※ジンのボタニカル原料に占める割合
原酒ソーダのアイテム数が増えてきたことで、小売業の冷蔵ケース内でもハイボール系をはじめとした原酒ソーダをコーナー化する動きが出てきた。また、ウイスキーハイボール缶で広がった原酒とRTD缶のクロスMDは、他の原酒ソーダでも今後広がっていくことが期待される。
原酒ソーダは、甘さのないおいしさや本格感のある味わい、食事との合わせやすさから、今後も伸長が期待されるカテゴリーだ。しかし、原酒ソーダはまだサブカテゴリーとして歴史が浅いこともあり、まずは消費者の認知率を上げ、トライアルを促すことが必要だろう。店頭でも冷蔵ケース内で原酒ソーダのアイテムを集積したり、レールPOPなどで視認性を高めるといった工夫でカテゴリーへの興味を促し、トライアルにつなげていきたいところだ。
顧客の来店価値を高める売場づくり
酒税改正の影響やRTDのフレーバー多様化を背景に、売場でも存在感を増してきた原酒ソーダ。ウイスキーハイボール以外の商品も出てきたことからコーナー化する動きも出てきている。
ヤオコーは、ハイボール缶を中心に原酒ソーダのコーナー化を進めている。浦和三室店では「キリン 上々 焼酎ソーダ」「翠ジンソーダ缶」といった原酒ソーダ系を集積。松戸上本郷店では冷蔵ケース内でハイボールをコーナー化しており、さまざまなウイスキーハイボール缶とともにジンソーダも集積。さらに炭酸水のクロスMDも行っている。
ヨークベニマル塩釜店の冷蔵ケースでは、「こだわり酒場」や「タカラ焼酎ハイボール」などの居酒屋系の棚と「キリン 氷結無糖」の棚の間にハイボール缶・原酒ソーダを集積してコーナー化している。 東急ストア新綱島スクエア店では原酒ソーダのコーナー化はしていないものの、ウイスキーハイボールや梅酒ソーダ、スパークリングワイン缶の近隣で「キリン上々 焼酎ソーダ」「翠ジンソーダ缶」を展開している。
原酒ソーダは、RTDの基となる原酒とRTD缶とのクロスMDという、他のRTDにはない独自の売場をつくることができる点も特徴だ。
フレッセイ沼田栄町店では国産ウイスキーの定番棚で付加価値型の「山崎ハイボール缶」をクロスMD的に展開。
ライフコーポレーションでは、同社限定のジャパニーズクラフトジン「葉(よう)」の販売に注力。セントラルスクエアららぽーと門真店では「葉」のボトルとともにRTDの「葉ジンソーダ」も展開している。
※掲載した写真はすべて取材時のものです。現在の売場と異なる場合があります。
ヤオコー浦和三室店(埼玉県さいたま市)
「キリン 上々 焼酎ソーダ」「翠ジンソーダ缶」といった原酒ソーダ系を集積