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PCとインストア駆使し魅力を最大化するヤオコーの総菜SPA戦略

ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)の総菜といえば、多くの食品スーパー(SM)がベンチマークすることで知られる。店内調理をメーンに、素材や味付け、製法にこだわったメニューの数々は、“ヤオコーらしさ”を形成する要素の1つだ。一方でプロセスセンター(PC)の活用域も徐々に広げ、チルド総菜の内製化が進むなど、SPA(製造小売)化も進みつつある。
※調査日:2024年7月26日 調査店舗:ヤオコー武蔵浦和店、浦和パルコ店 文中の価格はすべて税抜

PCを活用しつつインストアの魅力を最大化

 ヤオコーの総菜は、他チェーンに比べてもインストア比率が高い。一品一品、人手をかけて店内でつくり込み、手づくりの総菜をできるだけ出来立ての状態で販売する。それでいて、店舗間で出来栄えにはほとんどブレが生じない。これがヤオコーが考える自社の総菜の価値であり、お客の高い支持につながっているのである。

 一方でヤオコーは現在、埼玉県東松山市に「東松山デリカ・生鮮センター」(以下、東松山PC)、熊谷市に「熊谷デリカ・生鮮センター」(以下、熊谷PC)の2カ所のプロセスセンター(PC)を稼働している。ヤオコーの決算資料によると、23年3月期時点で、両PCの出荷高は180億円に迫る規模である。

 同社におけるPCの役割は大きく2つ。①店内調理品のキット製造(最終調理前の段階までPCで仕上げる)と、②オペレーションの観点で店内調理は難しいが、PCで自社製造することによる独自化・差別化が期待できる商品群の製造、である。つまり、競争力の高い商品開発を起点に、PCかインストアか、製造拠点やプロセスを柔軟に使い分けているのだ。

ヤオコーはインストアに比重を置きつつ、PCを有効活用することで総菜全体のバラエティと品質向上を図っている

 とはいえ、前述のとおりインストアの比率が高いため、店舗オペレーションの負荷は決して小さくない。実際、ヤオコーの店舗を午前中の開店直後の時間帯に訪れると、多くの店舗で数十人規模の従業員が調理作業にあたる光景を目にする。

 「まずは午前中にしっかりつくり込む」ことが徹底され、昼のピーク前に品揃え豊富な売場を完成させ、午後は夕方以降に需要が見込まれる商品製造と売場管理がメーン業務になっている。午前中だけを切り取るとかなりの人時がかかっているように見えるが、1日をとおしてみると、部門全体で人時をコントロールしたうえでしっかりと利益が出る人員配置ができているのだろう。

 SPAとは、PCに作業をできるだけ移行して、効率化を図ることを意味するわけではない。ヤオコーのように

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