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コロナ禍がきっかけ! カフェインレスコーヒー市場が急成長している理由とは

近年、カフェインレスコーヒー市場が成長を続けている。小売店においても、数年前と比べると目立つ位置に商品が陳列されるなど売場での存在感を増している。その背景について、コーヒー市場をけん引するキーコーヒー(東京都/柴田裕社長)と、UCC上島珈琲(兵庫県/朝田文彦社長)のブランド担当者に話を聞いた。

「カフェインマネージメント」が定着

キーコーヒー「カフェインレス 深いコクのブレンド」シリーズ

 カフェインレスコーヒーとはその名のとおり、カフェインを除去したコーヒーだ。カフェインには覚醒成分が含まれており、眠気を覚ましたり集中力を高めたりする効果がある。一方で、過剰摂取すると健康被害をもたらすことがあるため、カフェインレスコーヒーが注目を集めるようになった。

 日本国内では、1980年代ごろからカフェインレスコーヒーの販売が始まった。当時は通常のコーヒーと比べて味がうすいなどの理由で普及が進まなかったが、コロナ禍をきっかけに近年の売上は右肩上がりに推移している。

 その理由について、キーコーヒーでカフェインレスコーヒーの開発を担当するマーケティング本部R&Dグループ設計第一チーム主任の内原護氏は、「コロナ禍以降、ビジネスパーソンの在宅ワーク体制の浸透とともに『カフェインマネージメント』が広まったことが背景にある」と語る。

 カフェインマネージメントとは、カフェインの摂取を制限し自己管理することだ。カフェインマネージメントが在宅ワークとともに浸透したのは、自宅だと仕事に集中できなかったり気持ちのスイッチが入らなかったりと、コーヒーを飲みすぎてしまう人が増えたからだ。そのため、カフェインレスコーヒーを生活に取り入れる習慣が浸透していった。

 かつては、カフェインの摂取を控える妊婦や、カフェインの利尿作用を気にする人など限られた人が飲むものという印象を持たれていたカフェインレスコーヒーだが、昨今は年齢や性別を問わず多くの人に親しまれている。

 キーコーヒーはカフェインレスコーヒー市場の拡大を受け、2021年春に「カフェインレス 深いコクのブレンド」シリーズを発売した。商品開発で目をつけたのは、コーヒー豆の鮮度管理の方法だ。カフェインを抽出して除外したコーヒー豆は鮮度劣化が早くなるため、生豆の状態から焙煎するまでのあいだ、温度と湿度を一定に保つようコントロールすることで劣化を抑えた。

 「鮮度管理を徹底したことで、カフェインレスでありながらコーヒー本来の豊かなコクと甘い香りを実現した。今期の年間売上は、前年比で約2倍。当社におけるカフェインレスコーヒーの売上高構成比も年々上昇している」(内原氏)

 

2ケタ伸長を続けるUCC上島珈琲

UCC上島珈琲「おいしいカフェインレスコーヒー」シリーズ

 UCC上島珈琲も、カフェインレスコーヒーの売上を伸ばしている。直近の数期ではカフェインレスコーヒーカテゴリーの売上は2ケタ伸長を継続しており、2212月期決算では同カテゴリーの売上高が対前期比2ケタ増を記録した。

 同社も「おいしいカフェインレスコーヒー」シリーズを233月にリニューアルしている。リニューアルでは焙煎の温度を調整し、焙煎時間を従来よりも長くした。カフェインを抽出する過程で香りや味のもとになる成分が減少することがうす味になる原因だったが、焙煎時間を長くすることでコーヒーの甘みやコクを引き立てられるようになった。

 「おいしいカフェインレスコーヒー」シリーズからはインスタント商品とペットボトル商品、粉製品のレギュラー商品のほかにワンドリップ商品を販売している。ワンドリップ商品は通常タイプ以外に「コク深め」タイプを出しており、リニューアルでより引き立てられたコクを強調する。

 UCC上島珈琲の嗜好品マーケティング本部でカフェインレスコーヒーの開発を担当する豊田友希氏は、今後の展開について以下のように語る。

 「コロナ禍によりコーヒーが人々の生活習慣に馴染み、『カフェインマネージメント』に注目が集まっている。今後もカフェインレスコーヒーは売上を拡大していくだろう。一方で、カフェインレスコーヒーに対して、『おいしくない』『妊婦や高齢者のための飲料』といったイメージを持たれている人も少なくない。コーヒー専業メーカーである当社が味にこだわった商品を開発することで、市場をさらに拡大させていきたい」(豊田氏)

 近年はライフコーポレーション(大阪府)やセブン&アイ・ホールディングス(東京都)など、プライベートブランド(PB)からカフェインレスコーヒーを販売している小売企業も多い。カフェインレス市場の活性化で、今後も高質な商品の開発が期待される。