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徐々に広がりを見せる「日常生活で消費しながら備蓄する」ローリングストックの考え方

台風や地震、豪雨など自然災害の多い日本。いざという時のために普段から家庭で備えておくことが大切だ。最近は常温保存可能な食品を一定量ストックしながら消費する、ローリングストックという新しい食料備蓄の考え方が広がっている。普段食べ慣れているものを備えておくことで、家族も安心できる。今回はミドリ安全の「災害に関するアンケート」の結果をもとに消費者の防災意識の実態を探った。

i-stock/zepp1969

ローリングストックの認知は5割以上 実践している人は2割

 ミドリ安全では子供のいる女性800人に「災害に関するアンケート」を実施。「各種災害に対応するための防災食を現在、ご自宅に備えていますか?」という問いに対して、「家族全員が3日以上対応できる量を備えている」と答えた人はわずか16.1%だった(図表1)。「家族全員が1~2日対応できる量を備えている」人は27.4%で、「防災食を備えたことはない」人は30.5%もいた。

 防災食を自宅に備えていない理由に対して、「何を備えてよいかわからない」(20.7%)、「備えたいがつい忘れてしまう」(24.1%)、「お金がかかる」(23.2%)という結果になった(図表2)。災害発生時、居住可能な場合は自宅待機が原則で、その場合、1週間分くらい備蓄食料があると安心だが、非常時のためだけにそれだけの量を備えるのは大変だ。また、非常食を備えていても賞味期限が切れているなど、いざという時に役立たなければ意味がない。

 そこで効果的なのが、日常的に消費しながら備える、ローリングストックという新しい食料備蓄の考え方だ。常に一定量の食品をストックできて賞味期限切れを心配する必要もない。ローリングストックを知っている人は5割以上いるが、「現在実施している」人は20%程度。「知っているが実施したことはない」(26.5%)、「知っており過去に実施したことはあるが、現在は実施していない」(8.5%)という結果となった(図表3)。

 「ローリングストックを実施したいと思いますか」という問いに対しては、「実施してみたい」が78.2%にもなった(図表4)。ローリングストックに対して関心は高いものの、どのような食品をどれくらい備蓄すればいいのか、わからないというのが本音のようだ。

 防災食といえば「すぐに食べられるもの」というイメージがあるが、すぐに食べられる食品と、調理が前提の食品の2種類を揃えておくことが基本。野菜の水煮や乾燥野菜、ツナ缶詰などアレンジ自在な使いやすい常温保存食品が便利だ。賞味期限は必ずしも長い必要はなく、短いものは消費する回転を上げるようにすれば大丈夫。また、主食・おかず・副菜・汁物といった定食ができあがるイメージで備えることが大切だ。冷凍食品は停電になった場合、1日で使えなくなるため、ローリングストックにはあまり適していない。

カレーやスープなどのレトルト食品はストックに最適

 メーカー各社はローリングストックの啓発活動を積極的に行っており、ホームページではローリングストックの必要性や最適な商品を紹介している。なかでも保存性が高く、普段から家庭でストックされるレトルトカレーは備蓄に最適。ハウス食品ではレトルトカレーを豊富にラインアップしているが、温めなくても食べられる「温めずにおいしいカレー」はライフラインが止まった時に便利だ。植物油脂やトマトペースト、りんご繊維をいかした素材を使用し、温めなくてもさらっとなめらかでスパイスの香り高いカレーが楽しめる。

 丸大食品では、野菜ブイヨンの旨みが溶け込んだ「ビストロ倶楽部」シリーズや、まろやかで濃厚な味わいの「シェフの匠 バターチキンカレー」、香り豊かな中辛タイプの「同 キーマカレー」などを対象にした「ローリングストックスタートキャンペーン」を実施。キャンペーンを行うことで、ローリングストックの意識を高めるのが目的だ。

 カゴメでは、豊富な種類の野菜、豆、穀類がたっぷり入った「野菜たっぷりスープ」シリーズを提案。1食あたり食塩相当量1g以下のヘルシー設計で、常温でも食べられる。同社ではそのほか、30品目の野菜350g分をぎゅっと濃縮した「野菜一日これ一本」なども手軽に野菜摂取ができる商品として提案している。

 丸美屋食品工業では、ごはんと具材がセットになった「ごはん付き」シリーズをラインアップ。具だくさんなので1品で満足感があり、電子レンジか湯煎で簡単に調理できる。親子丼やとり釜めし、ビビンバなど豊富なメニューバリエーションだ。押し麦入りごはんとスープがセットになった「スープdeごはん」シリーズは、お湯を注いで3分で出来上がるので非常食はもちろん、忙しい時の食事にも便利だ。雑炊やお茶漬けなど、メニューバリエーションも豊富に品揃えされている。

顆粒みそや和総菜など普段の食事にも便利な食品

 マルコメでは、大豆の栄養を手軽に摂取できる低カロリー、低脂質の「ダイズラボ 大豆のお肉」シリーズを展開。レトルト・乾燥・冷凍の3タイプあるが、レトルトタイプは賞味期限が12カ月で常温保存が可能。湯戻しも不要なので、デイリーストックに最適だ。

 また、従来の粉末みそと違って、みそ本来の風味を生かせる特許製法の顆粒みその「料亭の味 フリーズドライ
 顆粒みそ」は賞味期限が3年。好みの具材と合わせてお湯を注げばみそ汁に、炒め物やあえ物にもさっとかけるだけだ。

 森永製菓では「森永ホットケーキミックス」をローリングストックとして提案。少しの水と電子レンジさえあればいつものおいしさを簡単につくることができる。また、「もみもみホットケーキミックス」なら、袋の中に水を入れてもみもみすれば、後は加熱するだけで、洗い物も少なくてすむ。同社ではマグカップでつくる「レンジで蒸しパン」を提案。3ステップで簡単につくることができる。

 非常食といっても特別なものを揃えるのではなく、普段から食べているものをストックしておくと、食事でのストレスは軽減される。メーカー各社ではローリングストックの重要性を訴求し、家庭での備蓄率アップを図っていく。