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西友の新PB戦略 NBベンチマーク型から独自の価値持つブランドへ飛躍できる理由!

西友(東京都/リオネル・デスクリーCEO)は、コロナ禍における消費者ニーズの変化を踏まえた、今後のプライベートブランド(PB)戦略について明らかにした。現在西友の店頭では、スーパーマーケットのPBらしからぬエッジの効いた商品が存在感を見せており、そうした商品の中からヒット商品も出ている。なぜ、西友はPBの立ち位置を、ナショナルブランド(NB)のベンチマーク型から独自性の高いブランドへと転換できたのか。

PBらしからぬ“攻めた”フレーバー

 「ポテトチップス焼き鳥のタレ味」

 こんな一見ニッチな商品は、NBメーカーでも(地域限定などを除けば)おいそれと出せないのではないだろうか。ましてやこれがスーパーマーケットのPBだとしたらどうだろう。「どうした!?」と店頭で思わずツッコミを入れてしまうかもしれない。

 開発したのは西友、同社のPB「みなさまのお墨付き」シリーズだ。

 みなさまのお墨付きは2014年からスタートしたブランド。1品目あたり100人以上の消費者モニターに実際に食べてもらったり、使ってもらい、評価をフィードバック。この商品を支持すると答えた消費者が70%以上の場合に限り商品化が認められていた。多くの小売業のPBが「小売側の視点や外部の専門家の視点で価値を認めた」商品であるのとは対照的で、商品の品質や味についての担保を消費者の評価を基にしている点で、他にはないブランディングを行うPBであると言えるだろう。

 多くの小売業とは異なるポジショニングでPBを開発できる理由を、西友の成長戦略にPB戦略を落とし込みながら、解説していきたい。

グロサリーのPB比率20%以上めざす

 現在西友は、「ローカル・バリュー・リテーラー」というビジョンを実現するべく策定した中期事業計画「スパーク 2022」を実行中だ。「ローカル・バリュー・リテーラー」になるために、西友では大きく以下の4つの価値提供を進める。「毎日のお買い物を一番安く」「うれしい、おいしいお惣菜」 「新鮮な生鮮食品」、そして「快適な買い物体験」である。

西友商品本部食品・住居・衣料品部バイス・プレジデントの木下数基氏

 その考えのもと、「毎日のお買い物を一番安く」を実現するための施策の1つとして、PBを位置付けている。西友のPBは、消費者テストに合格した製品だけを商品化した「みなさまのお墨付き」とベーシックな商品に特化した「きほんのき」の2種類。「今後は品質の高い商品をエブリデー・ロープライス(EDLP)で提供できる主力の『みなさまのお墨付き』をいっそう強化していく」と商品本部食品・住居・衣料品部バイス・プレジデントの木下数基氏は語る。

 基本的には、2020年以降連続で2割ずつグロサリーにおけるPB売上高を伸ばしていきながら2022年までにグロサリーのPB構成比を20%以上に高めたい考えだ。

合格基準を一気に引き上げる

 その「みなさまのお墨付き」の合格基準を、西友では昨年、70%から80%へと引き上げた。その理由について木下氏は「PBの売上が数年、横ばいだった」ことを挙げる。「品質に対するお客さまの評価を突き抜けたものにすることで売上を大きく伸ばせると考えた」と語る。

 消費者の支持率を10ポイント挙げるのは、簡単なことではない。不合格になる商品も増えるだろう。それでも、改良を繰り返しながら再度消費者テストを受けることで、商品化を実現しているという。その一例がインスタントの豚汁。当初は65.1%の支持しか得られなかったが、「具材が少ないという消費者からの不満を聞き、具材を60%以上増やした結果、96.4%の支持を獲得するに至った」(マーケティング部ブランド担当マネジャーの本間哲太郎氏)。

PBカレーは16種類 一番人気はタイカレーの1つ

 さて、小売業のPBが良くも悪くも店頭を席巻しているのは、熾烈な「棚割り獲得競争」とは無縁だからだ。そうは言っても、売れるか売れないかわからない新奇性の高い商品は在庫リスクが高いため、開発しにくい。結局は、マーケットボリュームの見込めるNBを模倣した、ベンチマーク型PBの開発がメーンとなる。

 西友でも当初はベンチマーク型PBの開発が主軸だったというが、消費者の声を生かした商品開発を数多く進めていくなかで、徐々に「『みなさまのお墨付き』がベンチマークPBの殻を破り始め、お客さまの支持を得られるエッジの効いた商品を開発できるようになった」と木下氏は述懐する。

 その際たる例が、レトルトカレーシリーズだ。14年に4種類のレトルトカレーを発売して以来、150円という低価格で本格的なエスニックカレーが楽しめるとあって、PBにおける人気ナンバーワンカテゴリーとなっている。最も人気なのが、タイカレーの1つマッサマンカレー。「当初はお客さまに馴染みのないカレーだったが、今では西友のレトルトカレーカテゴリーで常に上位にある」(商品開発部の河合梨沙氏)。

コロナ禍で4つの切り口で商品開発

 そうしたなか、西友ではコロナ禍における消費者ニーズの変化として、巣篭もり・在宅による調理負担の増加と、生活防衛意識の高まりに対応した商品開発を進めることで、さらなるPBの拡大をめざす。

 具体的には、1Stay Home、2Quick & Easy、3Healthy4Guilt free4つの切り口で開発を進める。このうちQuick & Easyでは、女性をターゲットに小盛りのご飯の上にかけるだで、ガパオやユッケジャンなど家庭では作るのに手間がかかるメニューを手軽に楽しめる「On the ごはんシリーズ」を発売。4Guilt freeでは、コロナ禍で菓子カテゴリーが慎重する中、罪悪感を感じずにお菓子を楽しめるよう、食物繊維を含有させた糖質オフのお菓子を開発。NBにはないフレーバーも投入する。

 西友では商品開発のスピードも加速させ、20年の1000アイテムから、22年までに2000アイテムに増やし、グロサリーの構成比20%をめざす考えだ。