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売上高伸長率10%増のトップバリュ 年商1兆円めざすリブランディングの中身

イオン(千葉県)がプライベートブランド(PB)「トップバリュ」のリブランディングを発表した。値上げラッシュによって消費者の節約志向が高まるなか、国内大手イオンはどのようなPB戦略をとるのか、レポートする。

イオンはプライベートブランド「トップバリュ」のリブランディングを発表した

約2500品目を発売
またはリニューアル

 「トップバリュ」の売上動向は好調だ。2022年度の売上高実績は約9000億円で、対前年度比で10%伸長。ブランドエクイティ調査では過去10年間で最高の評価が得られたという。トップバリュ(千葉県)の土谷美津子社長は「変化の厳しい1年だったが、変化にはチャンスもあると考え取り組んできた」と振り返る。

 そして23年度はさらなる支持を獲得し売上高1兆円を達成したい考えだ。

 これを実現させるべく、イオンが発表したのがトップバリュのリブランディングだ。加えて23年度は全アイテムの約50%にあたる約2500品目を新たに発売またはリニューアルする。

最上級シリーズを
「トップバリュ」に統合

 新しいブランド体系で柱とするのが、主力の「トップバリュ」、低価格を訴求する「ベストプライス」、環境や安全・安心に配慮した「グリーンアイ」の3つのシリーズだ。品質にこだわる、最上級シリーズの「トップバリュ セレクト」については、「トップバリュ」の中に順次統合していくという。

新しいブランド体系では「トップバリュ」「グリーンアイ」「ベストプライス」の3つのシリーズを柱とする

基本シリーズで
より「価値」を訴求

 それぞれのシリーズには、ブランドのメッセージを訴求するための「タグライン」を新たに設定。なかでもメーンの「トップバリュ」は「さぁ、ワクワクするほうへ!」を掲げた。

 “ワクワクする”ブランドをめざし、「おいしさ」「食のたのしさ」「驚き」「使い心地」「かっこよさ(クール)」といった価値を訴求していくという。

 このようにベーシックシリーズである「トップバリュ」でも、これまで以上に「価値」を強調する背景には消費者の価値観の変化がある。同社調査による消費者が商品を選ぶ際の価値観の分析では、19年度と21年度を比較すると、「価格」「家族やりくり」といった「価格意識」は30.0%⇒30.8%に増えた。しかし、「こだわり」「健康」「環境」といった「価値意識」は30.6%⇒32.3%とそれ以上に増加。とくにこうした傾向はMZ世代(ミレニアル世代とZ世代を掛け合わせた造語)の間で顕著だという。

 土谷氏は「自分の価値観をしっかり持ち、それを基準に商品を買うという新しい時代の流れになっている。これに対応し、新しいカテゴリー、独自の価値ある商品開発に取り組んでいく」と述べている。

 実際、すでにトップバリュでは、世代や性別ではなく価値観のセグメントによる商品開発を進めているという。

トップバリュ(千葉県)の土谷美津子社長

飲食店の味をめざした
スープを11種類発売

「トップバリュ もぐもぐ味わうスープ」シリーズ

 では、リブランディングしたトップバリュではどのような商品を販売するのか。
 3月16日、新たな方向性を具現化した新商品として「トップバリュ もぐもぐ味わうスープ」シリーズを発売した。
 
 「徒歩0分のレストラン」を掲げ、飲食店に負けないおいしさを追求し、野菜、肉、海鮮など、ゴロゴロと具材が入った、食べ応えあるのスープだ。価格帯は税抜298円~498円と、これまでのトップバリュと比べて高い。

代表的なメニューだけでなく、スンドゥブチゲやタッカンマリなど、さまざまな国のスープも揃える。

 メニューのラインアップは全部で11種類。クラムチャウダーやミネストローネといった代表的なメニューだけでなく、トムヤムクン、ボルシチ、タッカンマリなど、さまざまな国のスープも揃える。個々の価値によって選ぶ選択肢を提供するほか、昨今増加する単身世帯にも利便性の高い商品として開発している。
 
 先行的にテスト販売した店舗では、既存のトップバリュのスープと比較して「こだわり(洗練上質)」セグメントに属する顧客に支持されているという。

「バーリアル」は
味を向上し30円値上げ

「バーリアル」は、東北産希少ホップを使った発泡酒「バーリアルグラン」として販売を開始する

 もう1つ同日されたのが「トップバリュべストプライス バーリアルグラン」だ。

 トップバリュが10年に発売して大ヒット商品となった新ジャンルビール「バーリアル」を、今回を機に、東北産希少ホップを使った発泡酒として販売する。

 ベーシックの「バーリアルグラン」に、「リッチテイスト」「糖質50%オフ」を含んだ計3種類展開で、1本・350ml税抜108円だ。これまで1本78円だったため、実質は値上げとなる。「既存の商品はかねてより後味に雑味があるというお声をいただており、今回のリニューアルで大きく味わいが向上した。モニターさまからの評価からも十分に戦っていける価格だと考えている」と述べている。
 
 「ベストプライス」は、22年度のトップバリュ全体の売上高構成比で48%と、メインの「トップバリュ」(45%)より高く、売上高対前年度伸長率も114%と、3シリーズの中でも最も高かった。消費者の財布が固くなるなか、この低価格訴求シリーズでもこれまで以上に「価値」を訴求していく考えだ。

「ベストプライス」は今回のリブランディングで、ロゴマークを変更した

発売30周年を機に
「グリーンアイ」を進化へ

「グリーンアイ」シリーズから発売された「宮城県産三十浜産わかめ」

 さらに「グリーンアイ」シリーズからは同日「宮城県産三十浜産わかめ」(80g・税抜298円)を発売した。日本で初めてASC認証を取得したわかめとして発売する。
 
 今年、「グリーンアイ」は発売から30周年を迎える。これを機にさらに持続可能性を追求するブランドへ進化するべく、23年度は品揃えの拡充や、生産者情報の積極的な発信による価値訴求、「グリーンアイ」の進化に向けた協議の開始などに取り組む。

「グリーンアイ」は今年、発売から30周年を迎える

「品質」「価格」の
両観点から選ばれる商品へ

 このようにPBの販売強化を打ちだしたイオン。同社だけでなく昨今、食品小売業界におけるPB競争は激化している。たとえばセブン&アイ・ホールディングス(東京都)は2022年度にPB「セブンプレミアム」の抜本的な改革を実行し、22年9月には低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」を発売している。

 こうした外部環境に対してイオントップバリ取締役副社長の森常之氏「他社の商品は徹底的に調査しており、たとえばカップ麺であれば具材も1つ1つ計量して比較するほどだ。そのうえで『品質』と『価格』の2つの観点から総合的にお客さまに安いと感じていただける商品を提供していくことをルールとして定めており、追求していきたい」と述べている。

 今回のリブランディングによってトップバリュは23年度、さらに売上を伸ばし年間売上高1兆円の壁を越えることができるのか注目だ。