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感謝祭で七面鳥味の豆腐!?前年比4割増、コロナ禍のアメリカで豆腐の売上が急増する事情

アメリカの食品業界では、ここ数年、植物由来食品に大きな注目が集まっているが、新型コロナウィルス(コロナ)の影響を受けて、更なる広がりを見せている。アメリカの植物性食品協会(Plant Based Foods Association)と市場調査会社SPINSが今年5月に発表したデータは、パンデミックの中で、消費者の購買習慣が変化していることを示した。3月中旬のパンデミックの期間中、植物由来の食品の売上高は昨年の同時期と比較して、全体で90パーセント増加した。その後の4週間でも、植物由来の食品の売上は、27パーセント急増し、小売食品の総売上高の伸びを大きく上回った。植物由来の食品の中でも、豆腐の売上が劇的に伸びている。 

コロナ禍で店頭で品不足となった豆腐

韓国企業の豆腐がアメリカ市場を席巻

 市場調査会社ニールセンの調査によると、アメリカでの豆腐の売上高は、コロナのパンデミックの間に大幅に増加した。もともとアメリカでは、豆腐は味がなくて、何が良いのか、分からない味として見下されてきたと、アメリカの植物性食品協会の事務局長のミシェル・サイモンは言う。

 そんな不評の豆腐の売上が2015年頃から伸びてきて、2020年上半期の豆腐の売上高は、昨年に比べて40パーセント増加。特に3月のパンデミック以降、シアトルからワシントンD.C.まで、豆腐の不足が報告されており、メーカーは高まる需要に追いつくのに苦労した。また、食肉加工場の閉鎖が発生した5月には、サプライチェーンの混乱と、店頭の一部から動物性の肉が不足したことで、消費者は代替案として、豆腐を選び、その結果売上は32.8%増となった。

 ブルームバーグによれば、売上を伸ばしているメーカーには、カリフォルニア州オークランドに本社を置くHodo Foods(ホドフーズ)、日本に本社を置くHouse Foods(ハウスフーズ)、韓国に本社を置くPulmuone(プルムオーン:Nasoya、Wildwood、Azumayaなどの各ブランドを生産)などが含まれている。中でもPulmuoneはアメリカの豆腐の売上の約78パーセントと圧倒的なシェアを占めている。2015年には4.9パーセントのシェアだったことから見ると、急成長が窺える。

 この夏、売上があまりに好調でアメリカ国内の豆腐不足により、韓国からさらに100万パックを輸入せざるを得ない事態となった。スーパーマーケットでも豆腐の販売は急増していて、アメリカのスーパーマーケット・チェーン大手のKroger(クローガー)では、3月中旬から5月下旬にかけて9パーセントの増加、東部7つの州で、約100店舗を持つWegmans(ウェグマンズ)では、昨年と比較して、豆腐販売数がほぼ2倍になったと報告している。

 アメリカ大手スーパーマーケットのTrader Joe’s (トレーダー・ジョーズ)やWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)も自社ブランドの豆腐を販売している。アメリカの豆腐は種類が沢山あり、Extra Firm(とても硬い), Firm(硬い), Medium (中くらいの硬さ), Soft(柔らかめ), Silken(絹:日本の絹ごし豆腐に相当する)と硬さによって分類されている。

豆腐人気の理由は、健康、低価格、そして・・・

全米で人気が高まっている豆腐しらたき(tofu Shirataki)

 非営利団体Nutrition Facts.orgを運営するマイケル グレガーさんによれば、「豆腐のカロリーは、人気のある植物由来のハンバーガーよりも40パーセント少ないのです」と語った。また、豆腐やその他の大豆食品の摂取と、がんの発生率、心血管疾患の罹患率の低さには関連があるという。市場調査会社ミンテルのグローバル食品アナリストであるダシャショル氏によれば、「豆腐は価格に敏感で、食事にもっとタンパク質を加えたい健康志向の消費者にとっては、有望な代用品です」と話す。

 低価格であることも人気の1つだ。例えば、アメリカで人気のある植物性由来の肉のブランドであるBeyond Meatの代替肉は、ひき肉1ポンド(約450グラム)が8.99ドルに対して、豆腐14オンス(約400グラム)2.99ドルで販売されている。アメリカの植物性食品協会のスポークスマンであるマイケル・ロビンズ氏は、豆腐の売上は、このまま成長し続けるだろうと予測している。

 豆腐を使った製品では、日本のハウスフーズが、アメリカ限定で販売しているTofu Shirataki (豆腐しらたき)も、ここ数年売上を伸ばしている。しらたきに豆腐を練り込んだもので、形状もスパゲッティ、フェットチーネ、エンジェルヘア、マカロニなど種類も豊富だ。サラダやパスタ、スープに最適という謳い文句も、アメリカならではだ。

サンクスギビングに豆腐のターキー? 様々に加工される豆腐

豆腐製のターキー、Tofurky

 他にも、アメリカでは、毎年11月第4木曜日の祝日「感謝祭(サンクスギビングデー)」に家族が集まって、収穫や恵みの1つ1つに感謝をし、七面鳥の丸焼きを食べる習わしがあるが、七面鳥の丸焼きに見た目と味を似せて豆腐を加工した、トーファーキー(Tofurky)が、食卓に上がることも増えているようだ。

 トーファーキーは、豆腐と小麦粉からできていて、ハムの塊のような形をしている。中にはワイルドライス、ハーブ、マッシュルームなどのスタッフィングが詰められていて、植物由来でできたグレービーソースがついてくる。トーファーキーは、豆腐(Tofu)とターキー(七面鳥:Turkey)の造語で、オレゴン州にあるタートル・アイランド・フーズが1995年から販売している。

 当初製造したのは、500個だったが、顧客からの反響が非常に良く、売上は伸び続け、2001年までに10万個のトーファーキーが販売され、2012年には300万個に達し、売上高は年間数百万ドルに達するようになった。現在トーファーキーブランドの製品は、アメリカ国内2万7000の食料品店で購入できる。今年は、感謝祭に先立ち、トーファーキーの小売業者からの注文が22パーセント増加した。

 新型コロナウィルスの感染拡大で、アメリカでは同居家族以外との感謝祭の会食を自粛するように米疾病対策センターから促されており、フルサイズの七面鳥を避ける動きもあった。

 トーファーキーの売上は、今年アメリカの大型スーパー、Target(ターゲット)や小売最大手のWalmart(ウォルマート)などの主流小売店で、32パーセント増加した。タートル・アイランド・フーズ社は、トーファーキー以外にも、植物由来のハンバーガー、豆腐を使ったソーセージなどを製造販売しており、今年のイースター前後には通常より多くの食料をパントリーにストックする人が激増したことも重なり、同社の豆腐を使ったビーガンハムローストの売上が、前年比で600パーセント増加したという。

 今やアメリカで豆腐は、Tofu (豆腐)で通じるようになっていて、アメリカのスーパーには、豆腐のアイスクリームや、豆腐でできたビーガンクリームチーズなど、豆腐を使った新しい製品が続々と登場している。日本の食卓に欠かせない豆腐が、今後アメリカでさらに売り上げを伸ばしていくのか。植物由来の食品の動きと合わせて、今後も豆腐の動きに目が離せない。