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コンビニ飽和時代、活路は海外にあり!? コンビニ3社の海外戦略の現在

コロナ禍による行動制限などが緩和され、人流が回復したことから、業績改善の兆しを見せているコンビニ業界。苦しい経営環境の中でもラストワンマイル施策や非接触型決済の導入、店舗のメディア化など、各種新サービスの展開にチャレンジし、新たなライフラインとしての存在意義を提案してきた。国内の“コンビニ飽和”が囁かれて久しいなか、大手チェーン各社は海外事業にビジネスチャンスの余地を見出そうとしている。本稿では、コンビニ大手3社の海外戦略を概観する。

Zuraisham Salleh/istock

セブン-イレブン
2030年までに全世界30の国と地域で店舗展開へ

 「セブン-イレブン」を展開するセブン&アイ・ホールディングス(東京都)の23年2月期における海外コンビニエンスストア事業の営業収益は、対前年同期比70.3%増の8兆8461億6300万円、営業利益は同81.2%増の2897億300万円だった。

 同社の海外事業の中核をなすのが、米国最大のコンビニチェーンであるセブン-イレブン・インク(7‐Eleven, Inc.)だ。23年2月期時点で米国・カナダに1万3167店舗を展開する同社。2023年2月期のチェーン全店売上は同61.5%増の10兆4423億6000万円となっている。

 米国市場では労働力不足や物流障害による供給制約などの問題があったものの、プライベートブランド(PB)商品やフレッシュフード、専用飲料などのオリジナル商品の開発や販売強化に加え、約5700店舗で展開しているデリバリーサービス「7NOW」を強化したことで2023年2月期決算では大幅な増収増益を果たしている。

 2021年5月に買収したスピードウェイ(Speedway)との統合も順調に進んでおり、当初の計画値を大幅に上回る約6億8200万米ドル(約975億円:1ドル=143円で換算)ものシナジーを創出。2023年度には大型共配センター併設型のフレッシュフード製造工場を稼働する予定だ。

 2030年を見据えた新中期経営計画においても、海外コンビニ事業はグループにとっての成長の主軸という位置づけになっており、収益基盤のさらなる強化を図る見込みだ。グローバル戦略においてはフレッシュフードの売上構成比と客数の相関関係を見出しており、国内事業で培った「食」の強みを世界に展開していく。

 セブン&アイでは米国以外の市場でも店舗網を拡大する方針を打ち出しており、グローバルブランドの世界展開に向け2022年1月12日にはセブン-イレブン・インターナショナル(7-Eleven International LLC:7IN)が本格始動。2023年1月には、イスラエルのテルアビブに初出店し、今後5~6年をかけてイスラエル全土に店舗を展開する計画である。また2023年2月には既存展開国の成長に向けた取り組みの一環としてベトナム事業への追加投融資を決定している。
 
 今後は全世界における大きな成長機会を追求し、2025年度までに日本・北米を除く地域で5万店以上、2030年までに30の国と地域にて店舗展開することを目標としている。

ファミリーマート
台湾4000店舗を達成!

BING-JHEN HONG/istock

 1988年の台湾進出を皮切りに、海外での出店地域を拡大し、2022年には台湾ファミリーマート(全家便利商店股份有限公司)が4000店舗を達成したファミリーマート(東京都)。同社は1990年に韓国に進出したが2014年に撤退、2004年にアメリカに参入したが2015年に撤退と、海外展開においてはトライアンドエラーを経験している。

 1993年に進出したタイでは、2012年にタイ最大の小売企業であるCRCグループを事業パートナーとし展開してきたが、2020年5月にはCRCグループの経営資源を最大限活用したライセンス化事業にすることを決定。関連会社のCentral FamilyMart Co., Ltdに株式譲渡を行った。

 2023年5月末時点における、東アジアおよび東南アジアを中心としたファミリーマートの海外店舗数は合計8005店舗となっている。なお、ファミリーマートは2020年11月に上場廃止しており、海外事業の業績を開示していない。2024年2月期の戦略も明らかにされていないが、台湾ファミリーマートでは日本の店舗と同様に『Pokémon GO』とのパートナーシップを締結し、2022年12月より約4000店舗にて「ポケストップ」や「ジム」としてゲーム内に登場するなど店舗のエンターテインメント化も行っている。また、果物など地域の特産品を用いたデザートの開発および販売も行うなど地域に密着した独自の商品開発を強みとし、現地に根差した店舗運営を行っている。

ローソン
2025年度に中国1万店舗体制へ

 1996年に国内コンビニとして初めて中国・上海市に進出したローソン(東京都)は現在、中国、タイ、インドネシア、フィリピン、米国ハワイ州に合計6160店舗を展開している(2023年2月末時点)。

 事業セグメント別に見ると、ローソンにおける海外事業は国内事業やエンタテインメント関連事業、金融関連事業に次ぐ事業という位置づけとなっている。主なターゲットは中国であり、2023年2月末時点の店舗数は前期末比1060店舗増の5620店舗となっている。

 海外事業の営業総収入は対前期比51.1%増の921億3200万円、セグメント損失は30億6400万円(前期はセグメント利益23億4200万円)であった。海外店舗の9割を占める中国において、コロナ禍による大規模な行動規制の実施やロックダウンの影響を受けたほか、ゼロコロナ製政策緩和後も感染者数が増加するなど厳しい事業環境が減益の主因だ。人流の回復に伴い日販も回復傾向にある現在、強みである米飯やデザートなどの高品質なオリジナル商品の展開とデリバリー事業の強化に取り組んでいくとしている。

 ローソンが掲げる中期経営計画「Challenge2025」では、海外事業全般で出店を加速していくことが明記されている。中国では新規エリアへの出店加速と既存出店エリアの規模拡大および利益率向上に取り組み、2025年の1万店舗体制をめざす。具体的には、PBの強化や基本品質の見直しを行う。またデリバリーやOMO(オンラインとオフラインの融合)、ECを拡大し、営業・商品・開発領域でのDXを推進する。

 アジア・パシフィックでは、フィリピン、タイでPB商品の拡大やファストフード商品の強化、ベンダー政策を強化する。インドネシアでは新商品開発サポートに力を入れる。これらの施策を実施しながら出店を加速し、2025年にアジア・パシフィックにおいて3000店舗体制としたい考えだ。