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店内調理も自動化へ 世界的な外食・小売企業が注目するAIロボットFlippyを独自取材 

世界の食に特化したコンサルティング会社Baum +Whitemanが2019年に注目すべきトレンドを発表し、その1つにロボットによる業務自動化の増加をあげた。食品業界におけるロボット活用の最先端事例を紹介しよう。

増え続けるロボットレストラン、カフェ

 アメリカの食品業界では、ロボットの活用が活況を呈している。サンフランシスコに現在3店舗ある「Cafe X」は、バリスタロボットが1時間あたり120杯ものドリンクを作ることができ、価格もエスプレッソが2.25ドル、ショートのカフェラテが2.95ドルと、他のカフェと比べると割安になっている。ラスベガスにあるバー、「Tipsy Robot (ほろ酔いロボットの意)」では、ロボット・バーテンダーが1杯12ドル〜16ドルするドリンクを1分から1分半で作り、1時間に120杯のドリンクを提供できる。導入されている2台のロボットがこなす仕事量は、8人の人間のバーテンダーに相当するという。

 去年9月にサンフランシスコにオープンしたロボットレストランの「Creator」、完全にロボットによって作られたハンバーガー店としては世界初だ。コンシェルジュ(これは人間)に従って、タブレット端末で好きなバーガースタイルを注文すると、ロボットの圧縮空気官がその日に焼かれたバンズを右側のエレベーターへと押し出す。その後、振動するナイフで半分に切られた後、ベルトコンベアーで下まで行き、トーストされてバターが塗られる。ソースはミリリットル単位で、スパイスはグラム単位で軽量され、自動でバンズにかけられる。ピクルスやトマト、玉ねぎ、チーズは、パンに乗せられる直前にスライスされる。更に、ロボットはホルモン不使用の牧草地で育てられた牛肉を、オーダーが入ってから挽く。レストランでは10ドル超えはするであろうクオリティのバーガーを6ドルで提供できるのは、ロボットを活用することで、人件費を節約できるからだ。創業者の1人Frehnは、「我々のビジネスモデルは、とてもシンプルだ。人々が好む本当に良いバーガーを、半額で売ること」と話す。(https://techcrunch.com/2018/06/21/creator-hamburger-robot/ より引用)

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多くの外食・小売企業が注目するAIロボット、Flippyとは!?

各種揚げ物にも対応!多くの外食・小売企業が注目する
AIロボット、Flippyとは!?

 ロサンゼルスの近郊に本拠を構えるMiso Roboticsは、ロボットアームでハンバーガーのパテをひっくり返すAIロボットFlippyを開発し、去年よりハンバーガーショップの「CaliBurger」で“働いて”いる。Flippyには、人工知能技術とデータを取り込むことを可能にする複数のセンサーとカメラが搭載されていて、このセンサーでパティを確認し、焼き具合を検知。パティがちょうど良い感じに焼き上がった所で、アームを伸ばしてパティを掴み、ひっくり返して、また鉄板の上に落とす。キッチン専門のロボットアームはこれまでも開発されてきたが、このMiso RoboticsのAIロボットアームは地元の環境衛生局で認可を受けており、実際に現場で稼働したのは、Flippyが初めてだ。

Flippyは様々な食品を揚げることもできる。揚げ物の温度や種類を確認し、すでに調理済みか未調理か、まだ温度の状況も察知できる。

 また、様々な食品を揚げることもできるFlippyは、去年ロサンゼルスのドジャー・スタジアムのフードステーションで、チキンテンダー(骨なしチキン)やミニハッシュドポテトの揚げ物の手伝いをした。Flippyにとっては、揚げ物技術を導入した最初の仕事場であるが、業務用キッチンにおける生産効率を向上し、野球のシーズン中に、長期間に渡るピーク需要を調理することができ、キッチンアシスタントとしての信頼を勝ち取ることができた。Flippyは一緒に働く仲間(人間)と共に、揚げ物の温度や種類を確認することができ、すでに調理済みか未調理か、まだ温度の状況も察知することができる。Miso RoboticsのCOO、Melissa Burghardtさんは、「未来の厨房には、人とロボットがいて、ロボットが反復的で危険な仕事を担い、人間はその間想像性や発想力を高め、サービスを向上することができる。調理の一部をロボットが担当することで、業界を活性化し、効果的に働くことができる」と話す。

 2018年12月、Yahoo Financeは、Flippyがアメリカ大型スーパーマーケットチェーンのWalmart本社のイノベーションセンターで、Walmartのデリセクションで使用できるかの試験運用をしている所だと発表した。現在、他の食品業界もFlippyに強い関心を寄せている。レストランの仕事は特に離職率が高く、アメリカの労働統計局によると、2016年の離職率は76%だったという。そのため、オーナーやマネージャーは、より安定した代わりの労働力を求めている。KFCやPizza Hut, Taco Bellを傘下にもつYum BrandsのCEO、Greg Creed氏は、2017年のCNBCの取材に対し、「2020年代の中期から後期にかけて、人間と同じ役割を果たすロボットがさらに増えるだろう。しかし、レストランを完全に自動化するのは、非常に難しいだろう」と語った。

 ロボット革命が進化していく中で、ロボットと人間はどのように共存していくのか、高騰する人件費にとって代わる生産力として、また繰り返しの多い危険な仕事を担う労働力として、今、ロボットに大きな期待が寄せられている。