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丸井21年3月期第2四半期決算、小売はコロナで苦戦もフィンテック事業が好調で黒字を維持

丸井(東京都/青井浩社長)は11月12日、2021年3月期第2四半期決算説明会を行った。主に新型コロナウイルス(コロナ)の流行による小売事業での落ち込みを受け、減収減益となったが、営業利益の減益幅は8.2%減にとどまった。小売とフィンテックの2つの柱で事業展開していることが、百貨店各社の業績とは一線を画すことになった。

黒字確保も大幅な減収減益

 丸井の2021年3月期第2四半期連結決算は、売上収益1093億1900万円(対前年同期比87.1%)、営業利益207億3200万円(同91.8%)、純利益89億2100万円(同63.8%)だった。コロナ禍での店舗休業や外出自粛などの影響を受けて業績は大きく落ち込んだものの、黒字は確保した。同社は、コロナ禍による影響額は営業利益ベースで40億円に上るとみている。また、同社が主要指標としているEPS(1株当たり純利益)は、41.6円(同65.0%)と9期ぶりの減益となった。

 事業別の営業利益では、小売事業が11億円(同24.0%)と大きく落ち込んだ一方、フィンテック事業が227億円(同107.0%)で、コロナ禍においてもフィンテック事業は順調な成長を見せた。同社は小売事業と並んでフィンテック事業を柱に据えているが、そのねらいは将来的にも継続する見込みが高い売上(リカーリングレベニュー)の割合を引き上げることにある。グループ子会社が提供するクレジットカード「エポスカード」を通じたサービス拡充により、メインカードとして毎月コンスタントに利用してもらうことをめざす。今期の売上総利益ベースのリカーリングレベニューは約595億円で、売上総利益全体の65.0%(同1.8%増)となった。うち、フィンテック事業でのリカーリングレベニューが438億円と大部分を占めている。

コロナ禍で苦戦する小売事業と、「売らない店舗」への取り組み

 上期の既存店の状況は、第1四半期の緊急事態宣言による休業に引き続き、7~8月の感染再拡大を受けて苦戦が続いている。外出控えなどの影響によって、郊外店よりも都心店で売上高が伸び悩んでいたが、10月に入ってからも都心店の売上高は対前年同期比で75%、郊外店では同94%と同様の傾向が続いている。今後の見通しについては、「予測が大変難しいが、(コロナ前の水準に戻るには)最低でも1年半~2年はかかるのではないかと見ている」と、同社副社長執行役員の佐藤元彦氏は語った。

 このような状況の中でアフターコロナの社会を見据え、上期は体験型店舗の拡大に注力した。従来のアパレル中心の店舗から、飲食やサービス、メーカーがユーザーに直接商品を販売するDtoCモデルの店舗など、体験価値を提供する店舗へのニーズが今後高まると同社はみている。

 6月、新宿マルイ本館にオープンした「mercari station(メルカリステーション)」は、フリーマーケットアプリ「mercari(メルカリ)」初のリアル店舗で、アプリの使い方教室や商品の発送・梱包ブース、サポートデスクなどを備えた体験型店舗だ。

 また、8月には同じく新宿マルイ本館に「b8ta(ベータ)」の日本初となる店舗をオープンした。ベータはサンフランシスコ発のRaaS(リテール・アズ・ア・サービス)型店舗で、商品を開発した企業から固定額の出品料を受け取って、店頭に商品を展示するというシステム。特徴は、直接商品を販売するためだけの店舗ではなく、体験してもらうための店舗だということにある。店内には豊富な商品知識を持ったスタッフも配置されているが、商品脇に設置されたタブレットでも一通りの情報を得ることができ、顧客が1人でゆっくり、時間をかけて商品を試す中で購入するかどうかを決めることができるようになっている。こういった「売らない店舗」の拡大によって、新たな小売のスタイルを追求する。

家賃関連サービスで好調のフィンテック事業

 フィンテック事業では、上期とくに取扱高を伸ばしたのがECと家賃支払だ。ECについては、コロナ禍で社会全体での利用が増える中、その恩恵にあずかった形で上半期取扱高2264億円(同36%増)となった。家賃関連では、「ROOM iD(ルームアイディ)」という、エポスカード経由で家賃の支払いをしてもらうことを前提に、入居時の家賃保証を行うサービスを提供しているが、この利用が前年同期比で30%増加している。毎月の確実なカード利用につなげることができる家賃関連サービスは、エポスカードのメインカード化を促進するほか、リボ・分割手数料などと並んでリカーリングレベニュー比率の引き上げに貢献した。

通期見通しは減収減益予想

 また丸井は、業績回復時期の算定が困難なため、第1四半期決算公表時点では未定としていた21年度3月期の業績予想についても公表した。通期での見通しは売上収益が2230億円(対前年同期比10%減)、営業利益が355億円(同15%減)としている。EPSなど主要指標は、いずれも最終目標に達しない見通しだが、「次期中期計画のなるべく早い時期に達成したい」と佐藤副社長は話した。