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競合店と差別化するアークランズの特化型MD、工具の買取サービスも実施

プロショップ

「ホームセンタームサシ」「スーパービバホーム」などを展開するアークランズ(新潟県/坂本晴彦社長)は2024年度までの中期経営計画で「専門店事業の深耕・開発」を掲げ、プロショップの強化を進める。直近では業態転換や居抜き物件への出店を加速している。

先行する競合店とどう差別化するか

 現在、アークランズはプロショップとして3つの屋号の店舗を持つ。日本海側を中心とするエリアでは「ムサシプロ」の屋号で女池店(新潟県新潟市)、安茂里店(長野県長野市)、松本店(同松本市)の3店舗。プロショップにリフォーム専門店を併設した「住DEPO」の屋号で新発田店(新潟県新発田市)を展開。

 そして、「ビバホームプロ」の屋号で日高店(埼玉県日高市)、浦和さいど店(同さいたま市)の合計6店舗を運営する。同社は2024年度までの中期経営計画で「専門店事業の深耕・開発」を掲げ、プロショップの強化を進めている。

23年8月にオープンした「ビバホームプロ浦和さいど店」

 アークランズは「ビバホームプロ日高店」のオープンでプロショップの本格的な強化に乗り出した。同店は、ホームセンター(HC)業態のビバホームの小型店を業態転換し、同社として関東エリアに初めて出店したプロショップだ。それまで、アークランズのプロショップは「ホームセンタームサシ」の小型店を業態転換したムサシプロが順調に業績を伸ばしてきた。

 そのため、ビバホームプロ日高店も既存のムサシプロのノウハウを導入して、 22年8月にオープンした。当初は、工具、作業衣料を強化し、金物、住宅設備機器、電設資材、建築資材や木材などを揃えた全方位型の商品政策(MD)を採用した店舗だった。その一方で、中古工具の買い取り・販売などの新たな試みも始め、中古工具を適正価格で買い取ることで、新品への買い替えを促して、工具の売上アップをめざした。

 しかし、関東エリアでは、すでにコーナン商事(大阪府/疋田直太郎社長)傘下の会員制卸売業の建デポ(東京都/竹内栄吾社長)や「コーナンPRO」など、競合企業の店舗が根づいていた。そうした状況下で、ビバホームプロ日高店は競合との差別化をねらい、生き残りをかけて、半年後に思い切った改装に踏み切った。

HC事業部プロショップ事業部長の吉野徳久氏

 HC事業部プロショップ事業部長の吉野徳久氏は、「顧客に『プロショップといえば先行する競合店』のイメージが定着しているなかで、同じような店舗をつくっても勝ち目はない。それならば、『あの店は特定分野の商品は品揃えが深くて、非常に役に立つ』とお客さまに思ってもらえれば、それが差別化につながる」と考えた。

 そこで、建材・木材などの売場を圧縮して、工具と作業衣料を一段と強化し、中古工具の買い取り・販売、アウトレットを組み合わせて、売場をゼロベースでつくり直した。

 その結果、工具と作業衣料は好調に推移し、空調電材、アウトレット、中古工具の買い取りも順調に伸びている。

 多くのプロショップがローコストオペレーションで、効率重視の店舗運営をめざすなか、中古工具の買取サービスを実施しているプロショップは少ない。買い取るためには、査定が必要で手間がかかり、人材育成も不可欠だ。その点では、工具の買い取りも大きな差別化戦略の1つになっている。

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特化型MDで驚きを与える

 その後、同じくビバホームを業態転換して、 23年8月にオープンした「ビバホームプロ浦和さいど店」も日高店の売場づくりを踏襲した。工具、作業衣料、空調資材、アウトレット、中古工具の買い取りを「5大カテゴリー」に据えて、それらに特化した売場づくりを行った。木材や建材は扱っていない。

工具の買取サービスやアウトレット商品の販売など他社にはないサービスも実施

 とくに電動工具の充実ぶりは注目される。プロから高く支持されている「マキタ」や「ハイコーキ」を軸に、海外メーカーの「ミルウォーキー」も商品ラインアップに加えた。需要が高い丸ノコは広い売場スペースを取って、標準的な外径165㎜だけでなく、各種サイズ、コード式や充電式など、さまざまな商品を幅広く揃えた。さらに、電動工具に関連する先端パーツや、作業工具、腰袋などの装備品も充実している。

「電動工具なら浦和さいど店」と思ってもらえるように圧倒的な品揃えを実現
同事業部グループリーダーの近藤圭司氏

 「初めて売場を見た人は、圧倒的な品揃えに驚くはず。そういうインパクトが重要で、お客さまには電動工具ならビバホームプロ浦和さいど店と思ってもらえる。それが来店動機になる」と近藤圭司グループリーダーは話す。

 作業衣料は、職人の支持が高い「寅壱」と「BURTLE」、安全靴では高い安全性と機能性を誇る「アシックス」を強化した。取り扱うブランド数を絞り込む代わりに、そのブランドの商品は徹底的に品揃えするという戦略だ。

 作業用手袋もプロショップでは取扱店舗が少ない皮手袋まで揃えている。空調資材では、各種サイズや豊富な色の配管を揃え、スイッチ・コンセントも充実させた。空調資材に限れば、住宅設備機器のカテゴリーキラーとして知られる小泉(東京都/長坂剛社長)の「プロストック」にも負けないだろう。

 一方、顧客からは木材はないのかと聞かれることもあるという。吉野氏は、「家を建てるにもリフォームにも木材が必要なので、お客さまが木材を求めるのは当然。しかし、売れることはわかっていても、浦和さいど店では木材は扱わない。あえて入れないという覚悟で、この店舗のコンセプトは崩さない。今後もお客さまに品揃えの価値を認めていただいている工具と作業衣料などを深掘りしていく」と、信念は固い。

トップシェアのブランドに絞り込み、その商品を深掘りするMDを採用

スピードアップがいちばんの課題

 今年4月には、「ヤマダアウトレット松本店」跡地に居抜きで「ムサシプロ松本店」をオープンさせた(詳細は22〜23ページ参照)。同店は、売場面積が約1700㎡で浦和さいど店よりも広いため、木材や建築資材も充実させた。まとめ買いにも対応できるように在庫量も確保している。

 従来のHCの業態転換に加えて、松本店のように居抜き物件に出店することで、出店パターンのバリエーションも広がってきた。今後は地域性や売場面積などの物件の条件に対応して、さまざまなタイプの店づくりを進めていく。

 吉野氏は、「同業他社の出店スピードが加速しているため、アークランズにとっても、出店のスピードアップがいちばんの課題」と言う。

 今後は、人材の育成や女性活用にも積極的に取り組んでいく。

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