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第5回 東急ハンズ、ウエルシアに学ぶ!コロナ禍の新買い物行動に対応する「売場の流儀」とは

ショッパーインサイトを掘り下げる際に、売場や買い物の環境などがショッパーの購買行動に大きく影響することを前回のテーマで取り上げた。対象者をショッパー(買い物客)とした場合、カスタマー(顧客)やコンシューマー(消費者)との捉え方の一番の違いがここにある。
ショッパーがそれほど環境に影響を受けるのであれば、その売場で行われていることや、買い物環境についてあらためて注意をする必要がある。今回は、ショッパーと商品の接点である売場の「流儀」と「見方」について掘り下げてみたい。

売場にある様々な「流儀」について

皆さんが普段無意識に歩き、買い回る売場には様々な情報や売り手(小売業やメーカー企業)の工夫がある。「習慣商材」といわれる、日常使いが多く比較的低単価な商品ほど、この取り組みが重視されている。まずは次のQ1から10の設問を見て「Yes」または「No」どちらかをご自身で考えてみてほしい。

Q1 スーパーマーケットの導線は入り口から右方向に向かう店舗が多い。
Q2 店舗の入り口付近では青果・農産売場が配置されている。
Q3 買い物かごは売場のあちらこちら〈多箇所〉に置かれている。
Q4 生鮮品の売場の中に、調味料や加工食品が一緒に陳列されている様子をよく見る。
Q5 商品が山積みされている売場のエンドは目が留まる。
Q6 売場の照明は入り口付近と生鮮、精肉の売場とではちがう様に思う。
Q7 総菜や鮮魚の売場に、ビールや日本酒などアルコール類の商品が陳列されているのを見る。
Q8 売場の外周を歩くことが多く、サブ通路は目的によって歩く。つまりお客の数はサブ通路より外周の方が多い。
Q9 お米やお酒の売場はレジに近く、買い物の最後に立ち寄る。
Q10 牛乳や卵は売場の奥に配置されていて、他の買い物をしながら立ち寄る。

上記は従来の売場の「定説」と呼ばれているもので、長年に渡り(こうした設問の多くの答えとして)「Yes」言われてきた。

ただしコロナ禍により、これらの内容には変化が生まれた。例えば、買い物を短い時間で早く済ませたいと思う買い物客のために、購入頻度の高い商品を入り口付近に陳列したり、至る所に置いていた買い物かごを衛生面から「衛生済み」のPOPを付けて入り口で手渡したり、レジ周辺で訴求(陳列)する商品を変えたりと、様々な変化が見られるようになった。

この様に買い物行動に合わせてその店が行う売場づくりや販売のやり方を、筆者は「売場の流儀」と呼んでいる。

コロナ禍によってお店では以下のような新しい買い物行動が生まれた。

●あらかじめ用意した「買い物メモ」をチェックしながら買い物をする。
●買い物客は店内での買い物を短い時間で済ませたい。
●インスタントや冷凍食品など保存期間の長い商品を購入(使いながら備蓄)する。
●レジ周りでの「ソーシャルディスタンス」から、レジ付近での買い物行動が変わった。
●まとめ買いが増え、以前に比べて買い物かごや買い物カートの利用が高まった。
●健康、安全安心、免疫力に関する商品やサービスへの関心が高まった。
●男性(20代から40代)ひとりの買い物客が増えた。
●時短を目的にする買い物と、手づくりなど時間をかける料理のための買い物とを使い分けるケースが生まれた。
●免疫効果のある商品を、その機能を紹介するPOPを付けて店内の目に付く場所に集積する。

ではこうした買い物行動に売場ではどのような「流儀」が反映されているのか、具体例をみていきたい。

コロナ禍の直後に展開された東急ハンズの新習慣スイッチマーケット

2020年3月の緊急事態宣言下のステイホームによって、「リモート飲み会」「自宅筋トレ」「おうちでキャンプ」など様々なトレンド(テーマ)が生まれた。それは、「コロナ禍の今だからできるコト」でもある。東急ハンズではそれらを踏まえ、新習慣に切る変える様々なアイデアを「新習慣スイッチマーケット」として展開した。

こうした取り組みは業態を問わず多くの店舗で見られたが、東急ハンズは、コロナ禍による不安や消費の減退が起こる中で、気持ちと行動を切り替える(スイッチを入れる)ことで、従来とは違う生活様式の中での楽しみや発見の仕方を訴求する点で、際立っていた。

コロナ禍と防災意識を捉えた「ながら備蓄」の展開

食料品・飲料・生活用品・化粧品など、普段使うモノをちょっと多めに買い置きして、使ったらまた買い足す――。これは、経済産業省が推奨する、日常から緊急時の備えをすることを目的とした新習慣「ながら備蓄(ストック)」だ。防災の日などに行う防災用品の訴求との違いは、使いながら(食べながら)補充するローリングストックの視点がある点だ。

売場では写真のように、従来の災害対策、緊急事態を思い浮かべる黒色と黄色のツートンカラーで恐怖感を煽るのではなく、「気軽に試してみましょう」といった呼びかけがある。インサイトを行動につなげる際に、こうした表現(初動を起こしやすくする見せ方や伝え方)や印象はポイントになる。

売場での撮影をOKにするメリット

業種業態を問わず、売場での写真撮影を禁止する店舗は多い。理由は価格表示や展示方法などの競合店対策や、ショールーミングの防止などが背景にある。ところが、コロナ禍において「買い物中に購入するかしないかを迷う際に、売場でゆっくり検討することに躊躇することがある」「長い時間立ち止まって考えるくらいなら購入をしない」などの声(ホンネ)や買い物中の傾向が見つかった。

ある小売業ではこれをチャンスロスとして捉えて、写真のように「お買い物に迷ったら、商品やサービスを撮って、相談したい人に聞いてみよう!」と訴求し撮影を奨励していた。

洗剤も柔軟剤も量り売りで?

10月にオープンしたウェルシアイオンタウン幕張西店では、ウエルシアホールディングスが花王と企画した売場「量り売り堂」を展開。注目を集めている。これはお客が来店時に持参したボトル、もしくは量り売り堂オリジナルボトルに、お客の希望量を補充して販売するサービス(食器用洗剤と柔軟剤、衣料用濃縮洗剤、おしゃれ着用洗剤の4商品が対象)。

未来のために容器を「捨てない」選択をするために、省資源とごみの削減につながる取り組みとして、もったいない精神といったインサイトに働きかけた施策。今後、こうした取り組みは業種業態を限らずに生まれてくるものと思われる。

インサイトを見つける方法

このようにショッパーのインサイトをテーマや切り口にして、自社の商品の購入やサービスの利用につなげようとする様々な取り組みが売場では多く見られる。それらの展開が「集客数や客単価が上がらない」または、「自社製品の店頭での取り扱いや、指名買いにつながらない」と言った課題を持つ小売業やメーカー企業においても〈ヒント〉になる。

商品やサービス自体が違っても、そうした売場での展開がショッパーのどの様な望みや悩み(これらを掘り下げることがインサイトの追求)を捉えて、商品やサービスを介して解決をしようとしたかといった「ストーリー」や「文脈」を見つけることがポイントになる。

ショッパーのインサイトを見つけようとする人が、そのスキルアップを図るには、こうした売場や売り方の中にある〈ヒント〉に目を向け続けることがとても重要なことだと思う。