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中小企業のオフィスニーズ捉え福利厚生にまで踏み込む!イケア、本気のBtoBビジネス強化とは

イケア・ジャパン(千葉県)はこのほど、記者説明会を開き、スモールビジネス(中小企業、ベンチャー企業、個人事業主)向けのオフィス家具の購入、配置、設置までワンストップで手掛ける法人向けサービス「IKEA BUSINESS NETWORK」を紹介した。メンバーシップ会員はイケア専任のインテリアデザイナーに、オフィス家具についてのアドバイスを無料で受けられるなど、法人向けのビジネスを加速させる仕掛けがなされている。会見の様子とあわせて、イケア・ジャパンの法人向けビジネスの全貌を明かそう。

法人向けビジネスの核「オフィスのトータルコーディネート」

イケア・ジャパンは、201010月より、法人向けの家具販売事業を始めた。オフィス用のデスクや椅子、キャビネットなどを請求書払いなどに対応し販売する。現在、法人向けサービスが占める売上は全体の約10%である。BtoC向けのビジネスがメーンの同社だから意外な感じはするが、実は法人向けにも人気が高いのである。

202月には、同社初となる法人向けのプラニングスペースを展示するIKEA for Businessを渋谷にオープンさせるなど、BtoB向けビジネスの強化を図ってきた。

満を持して217月に開始したのが「IKEA BUSINESS NETWORK」だ。スモールビジネス向けのサービスで、入会費と年会費は無料。インテリアデザイナーからの無料アドバイスを1時間受けられる。さらに、「イケアと学ぶ」というオンライン講座を用意していて、イギリスファッション業界の大物、メアリー・ポータス氏ら世界のビジネスリーダーによるビジネス、マーケティング講座を受けることもできる。また、リロクラブと提携し、育児・介護やスポーツクラブの割引が利用できるパッケージを特別価格で販売するなど、福利厚生の充実が難しい中小企業を応援するプランになっている。

イケアは、グローバルベースでは19年より法人向けサービスの拡大を経営戦略の一つに組み込んでいるが、日本市場では10年前からBtoBに取り組んでいる。イケア・ジャパンは現在、約18万人の法人向け会員を有する。IKEA BUSINESS NETWORKは、これまでの法人向け販売の経験から、主に中小企業に勝ち筋があると見込み、コスト面と福利厚生を意識したモデルになった。

同社法人部門総責任者の佐川季由氏は「オフィス、飲食業、民泊、リフォーム関連業などイケアの『トータルコーディネート』の精神に共感して下さるお客さまは多数いる。オフィスの空間を丸ごとデザインできるのが強み。イケアのデザイン力、サステナブルな商品群を活かしながら、ビジネスの領域を広げていきたい」と話した。

ビジネスオーナーら1200人を調査、ニーズを探る

IKEA BUSINES NETWORK開始にあたり、イケア・ジャパンは、全国の週1日以上テレワークを行う会社員と経営者、総務担当者約1200人にアンケート調査を行った。コロナ禍で変化したオフィス環境の実態と、彼らが何を求めているか知るためだ。

その結果、90%が時間を有効活用できるという理由からテレワークにメリットを感じているが、85%がコミュニケーション不足によるデメリットを感じている、という知見を得ることができた。

「多くの人が、『テレワークをしながら、出社もしたい』と考えていることが分かりました。同時に、ニューノーマル時代のオフィス需要には『心の密』が必要不可欠であることも明らかになりました」(佐川氏)

イケア本社(千葉県船橋市)のオフィスには、入ってすぐに#Collaboration という、大人数でのミーティングが可能なスペースがある。階段とソファーを組み合わさった、大人数での話すことができる空間だ。リラックスできるよう、レゴなどのおもちゃもある。「心の密」を埋めるには最適な場所だ。

また、中小企業の経営者・総務担当者の約7割が「今後もテレワークを続けたい」と答えたという。ニューノーマル時代の働き方を実現するために、約半数がコロナ禍でオフィスのレイアウト変更やリフォームを検討していることも明らかになった。

イケア本社では、コロナ禍で出社頻度が減り、オフィスのレイアウト変更を実施。#FOCUSと呼ばれるレポート執筆など集中を必要とする作業をする際に従業員が使用する空間では、イケアの商品で防音効果のある「エイリフ」という自立タイプのスクリーンが用いられる。

デスク、椅子は長時間の作業に耐えられる人間工学に基づいたデザインの商品が本社でも使用されている。法人向けビジネスを拡大する上で、「隗より始めよ」の精神で、本社のオフィス空間のデザインもニューノーマル時代に適したものになったのだ。

アンケートの結果、スモールビジネスがリフォームで重視する点は「費用(70.8%)」、「可変性(30.3%)「サステナビリティ・品質の重視(28.5%)」と、価格に対する懸念が多いことが分かった。

佐川氏は「『IKEA BUSINESS NETWORK』は、メンバー限定価格が適用され、かなりお得にお買い物ができる。今後は、工務店と組み、キッチンのリフォーム需要を掴みたい。イケアのキッチンを導入したいと言って下さる飲食店やオフィスのオーナーさんは数多くいる」と意気込みを語った。