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家具のサブスク「subsclife」 社長の実体験から生まれたサービスが家具の常識を変える?!

一定期間、定額でサービスを受けられる「サブスクリプション」。もともとは雑誌などの「定期購読」を意味するが、ここ数年で音楽や動画配信、電子書籍、食品などさまざまなサービスで導入され、「サブスク」として今では市民権を得た課金形態の一つだ。しかし、そんなサブスク全盛期の世の中において「家具のサブスク」サービスが増えていることをご存知だろうか。家具のサブスクリプションサービスを日本で初めて提供したsubsclife(東京都)の 町野健社長に話を聞いた。

社長の実体験を元に生まれたサービス

 subsclifeは、同名の家具サブスクリプションサービス「subsclife(サブスクライフ)」、アウトレット・リユース家具のシェアマーケット「subsclife SHARE(サブスクライフシェア)」の企画・運営を行う企業。社長の町野氏はこれまで、大手PCメーカーのコンサルタントや、経営企画、新規メディア立ち上げなどを行ってきた人物だ。経歴からも分かる通り、もともと家具業界に繋がりがあってサービスを立ち上げたわけではない。「まったくゼロからのスタート。売上ゼロの状態から、取扱ブランド開拓のため一社一社メーカーを回った初期は本当に大変だった」(町野社長)という。

subsclife 町野健社長

 にも関わらず、家具のサブスクを事業として立ち上げた理由は何だろうか。そこには、町野社長の実体験が大きく関係している。2017年、引っ越すために家具店巡りをしていた町野社長は、「一式揃えると(家具は)なかなか高い。かといって、安価な量産型の家具には心を動かされない」という感想を抱いたという。家具店の店長とも話をするうちに、いわゆるブランド家具はあまり売れない・儲からないという家具業界の現状を知り、ちょうどアメリカで勃興し始めていた「モノ」のサブスクと組み合わせる方法を思いついたのがきっかけだ。こうして18年3月、日本初の「家具のサブスク」が誕生することになった。

「家具は所有するもの」という常識を変える

 現在、サブスクライフが取り扱うのは約600ブランド/11万アイテム。いずれも人気ブランドの製品ばかりで、機能性に加えてデザイン性に富んだ家具が並ぶ。さらに、「インテリアを総合的にコーディネートする」という観点から、家電や照明、観葉植物など家具以外のアイテムも全体の約2割程度取り扱っている。貸し出すアイテムはすべて新品で、ユーザーからの申し込みを受けてサブスクライフがメーカーから所有権のみを買い上げ、家具自体はメーカーから直送というかたちを取っている。

 家具・家電は月額最低500円から利用でき、およその目安として3万円の家具なら月額1500円程度でレンタルできる。利用期間は3カ月〜24カ月の間でユーザーが自由に設定し、利用期間終了後は継続・返却のほか、気に入ればそのまま買い取ることも可能だ。

 ユーザーは個人利用と法人利用が半々。サービス開始から順調にユーザー数を増やし続けてきたが、コロナ禍で追い風がさらに強くなった。コロナ禍でオフィス移転が活発になり、大企業ですら今後どうなるかわからないという状況のなか、家具に対する考え方が変わったのだ。「今までのように、すべてを所有するのが正しいのか?という“常識”を疑う考えが生まれてきた」と町野社長は語る。オフィスが縮小するにせよ拡大するにせよ、フレキシブルにその時々の需要に合わせられるサブスクライフのサービスは、いまの時代によくフィットしている。実際に、法人利用では「オフィスに必要な家具を丸ごと借りる」という使われ方が多いという。

 さらに今伸び始めているのが、飲食店向けのレンタルだ。とくにカフェなど、内装や家具にこだわる必要のある店舗で、初期費用を抑えられるとして人気を集めている。

シェアマーケットとの合わせ技で家具業界を救う

 良い家具を安く提供するため、subsclifeがサブスクに加えて提供するのが「サブスクライフシェア」だ。サブスクライフシェアはBtoCのシェアマーケットで、アウトレット家具や展示家具、リユース家具などを売買できる。これまで、目を凝らしてみないとわからない傷があるだけの家具や、新商品が出たために売れなくなった家具は、まだ十分使えるにも関わらず廃棄・処分されてきた。家具業界には、アパレル業界のように大幅な値引きをしてでも売り切る習慣がなく、いわゆる“投げ売り”はブランドイメージを棄損するとして敬遠してきたためだ。サブスクライフシェアでは定価の3〜4割引での販売が多く、メーカーも最低限利益を確保しつつ、良い家具を欲しい人の元に直接・割安で届けることができる。

サブスクライフシェアで販売されているアイテムの例。いずれも大幅に割引されていることが特徴だ

 サブスクライフシェアがいっそう盛り上がっていくためには、多くのメーカーの参入が不可欠だが、21年2月のサービス開始以降、わずか4カ月で60社の提携を得ることができた。これはサブスクサービスと比べて約5倍の速度での増加で、「良いものを安く買いたい」というユーザーの要望を叶えるだけでなく、メーカー側からも強く望まれているサービスであることがわかる。

今後の目標はユーザー数10倍!

 今後の目標について町野社長は、「アイテム数は今のさらに倍をめざす。家具市場はまだまだ未開拓。ユーザー数は10倍くらいまで拡大していけるとみている」と話す。まだ一般的には馴染みのない「家具のサブスク」だが、最近ではクチコミ利用も増え、認知向上を肌感じる場面が増えてきたという。

 「家の中を、世界一、豊かな国へ。」をビジョンに掲げるsubsclife。これからも家具に対する常識を変えるサービスで新たな価値創出をめざしていく。