メニュー

ドラッグストアの針路 #2 ツルハとウエルシア、そして… 混沌の首位争いレース

ウエルシアホールディングス(東京都:以下、ウエルシアHD)とツルハホールディングス(北海道:以下、ツルハHD)。ドラッグストア“2強”の両社が目下力を注いでいるのが、生鮮食品需要の取り込みだ。両社ともに、新規出店店舗や改装店舗への生鮮売場設置を急いでおり、食品スーパーやコンビニからお客の流入を図ろうとしている。

生鮮強化に乗り出すドラッグストア“2強”

 ツルハHDは今期末(2021年5月期)までに660店に生鮮食品売場を設置する方針を打ち出している。660店といえば、「ツルハ」屋号の店舗の約5割、グループ総店舗数の約3割を占める。ツルハHDの鶴羽順社長も「今期(21年5月期)に導入を拡大している青果、精肉は順調に進捗している」と発言しており、導入店は今後さらに増えると見込まれる。ウエルシアホールディングスは生鮮食品の設置店数を公表していないが、同社も急ピッチ導入を進めていると見られる。

 ドラッグストア2強の2社はなぜ、生鮮食品の取り扱いを広げているのだろうか。

 ドラッグストア業界では、北陸地盤のチェーンが生鮮食品の導入において先行している。すでにクスリのアオキホールディングス(石川県)は精肉、青果の取り扱い店が60店を越え、「ゲンキー」を運営するGenky DrugStores(福井県)では総店舗数309店(21年2月1日時点)のほぼ全店に生鮮食品を導入しているようだ。

 こうした先行チェーンの動きが大手各社の背中を押しているともいえるが、店舗数が増え競争が激しくなっているドラッグストアにとって、「ワンストップショッピング」の実現に向けた商品ラインの拡大は必然だ。

 これは、ドラッグストアが食品スーパーやコンビニのお客の取り込みに本腰を入れ始めたとも言える。大手2社が生鮮食品の強化を本格化させれば、雪崩を打つようにドラッグストア各社が生鮮食品導入を加速させる可能性もある。

「生鮮食品に取り組まざるを得なくなる」

 日本チェーンドラッグストア協会の池野隆光会長も今年1月に開かれた年頭所感発表会で「ドラッグストアは今まで以上に食品スーパーの食料品やホームセンターの生活関連品(の需要)を取り込むようになる」と発言、今後も成長が見込まれるドラッグストア業界の未来に自信を示した。

 ウエルシアHD、ツルハHDのドラッグストア2強が今後、生鮮食品の扱いをどこまで広げるかは明らかにされていない。ある経営コンサルタントは、「ドラッグストア各社は対抗上、生鮮食品に取り組まざるを得なくなる」と指摘する。

 現在、業界首位のウエルシアHDの21年2月期業績予想では、売上高が対前期比9.9%増の9541億円、営業利益が同14.5%増の433億円となっている。20年12月に上方修正を発表したツルハHDは、通期(21年5月期)の売上高が同9.4%増の9200億円、営業利益が同8.9%増の490億円を見込む。2社ともに売上高1兆円が目前に迫っている。

 「1兆円連合で巻き返しを狙っている」といわれた、マツモトキヨシホールディングス(千葉県)とココカラファイン(神奈川県)は、今年10月に経営統合を予定する。ただ、両は社ともに、インバウンドと化粧品の扱い比率が高く、コロナ禍においては強い逆風を受けている。「マツキヨ・ココカラ連合」が誕生しても、ウエルシアHDとツルハHDがそん色ない規模で並ぶ格好となり、場合によってはウエルシアHDが首位をキープする可能性すらある。

 混沌としてきたドラッグストア業界のトップ争い。その行方は、ドラッグストアの生鮮食品が市民権を獲得できるかにかかっている。