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増税後に伸びる「内食需要」を取り込むための、イオンの差別化戦略とは?

イオン(千葉県/岡田元也社長)は9月、「イオン葛西店」(東京都江戸川区)4階のイベントスペースで「イオン 増税前 内食向け新商品発表会」を開催した。冷凍ミールキットやチルド総菜など、10月からの消費増税および軽減税率の導入により「内食」の需要が高まると想定されるなか、簡便商品のラインアップを拡大させる。

イオンは9月18日から「トップバリュ フローズンCooKit」の新商品6種類の販売を開始した

冷凍ミールキットの新商品を発売

 イオンが今回商品数を拡大するのは、同社のプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の冷凍ミールキットシリーズ「トップバリュ フローズンCooKit」(以下、フローズンクッキット)だ。電子レンジで半解凍した後、フライパンで炒め、同封されている調味液で味付けするだけで完成する。水や油、調味料などを追加で用意する必要はなく、1パックで味付けまで完了するオールインワン型の商品となっている。

 イオンのミールキットは、チルドタイプの「トップバリュ CooKit」(以下、クッキット)として20183月に発売を開始。チルドタイプのミールキットは新鮮な野菜を含んだ商品が多いが、消費期限が12日と短いという課題があった。

 そこで開発されたのが、冷凍することによって保存性を高めたフローズンクッキットだ。194月に6種類の販売を開始したところ、利用者からは「冷凍庫にストックできて便利」「食材を無駄にせず使い切ることができる」「手間もかからず味も本格的」と好意的な意見が出ているという。

イオントップバリュの和田浩二マーケティング本部長

 開発を行ったイオントップバリュ(千葉県/柴田英二社長)の和田浩二マーケティング本部長は「チルドタイプは3040代の有職主婦が購入することが多かったが、フローズンタイプは60代のシニア層にも支持を得ている。また、フローズンは土日の売上が高く、備蓄のためのまとめ買い効果もみられた」と話した。

フローズンクッキットの新商品「親子煮」。卵を使用せず、付属の卵液で作ることができる

 手応えを得たことからイオンは今回、フローズンクッキットで6種類の新商品を投入。そのなかでも注目したいのは「親子煮」(470g、約2人前、798円、以下税込)だ。添付の卵液を使用するため、卵を用意する必要はない。また、「白身魚の竜田揚げと花野菜のバジル炒め」や「白身魚と野菜の甘酢あんかけ」(いずれも470g、約2人前、798円)などの魚を中心とした商品を導入した。

 現在、チルドタイプのクッキットはイオン系列の総合スーパー、食品スーパーの約300店舗、フローズンクッキットは約1800店舗に導入している。チルドタイプの導入店舗数が少ないことに対して、和田本部長は「チルドタイプは廃棄ロスの問題が大きく、適正な売場面積や価格設定についてはまだ検証が必要だ。店舗数を急激に増やすよりは、持続可能なモデルづくりを優先して追求したい」と話した。

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イオンの商品政策における差別化戦略とは?

チルド総菜でも新商品続々
要望多い魚メニューも投入

チルド総菜では、肉や魚を使用した主食となる商品を拡充した

 また、新商品発表会ではフローズンクッキット以外の簡便の新商品についても発表された。皿に盛り付けるだけ、あるいはレンジで加熱するだけで食べることができるチルド総菜では「豚ロース生姜焼き」(100g、258円)や「牛カルビ焼」(100g、298円)、「国産さば使用 さばの味噌煮」(198円)などを導入。これまでは副菜メニューが多かったが、主食として食べることができる肉や魚を中心としたメニューを9月上旬に発売した。

 そのほか10月中旬には、レンジで7分間加熱することにより食材をスチーム調理する「おさかなレンジ調理セット」を4種類発売する予定だ。イオントップバリュが商品開発の際に参考にしているHUTHome Use Test調査で、「魚メニューを増やしてほしい」という要望が多かったことから、手軽に魚を味わうことができる商品を開発した。

 ※HUT(Home Use Test):一定期間家庭内で商品を使用してもらい、使用感や食後の感想などを客観的・定量的にデータとして収集するマーケティング手法。

プラスアルファの要素で差別化を図る

 共働き世帯、単身世帯の増加によって、総菜や冷凍食品、ミールキットなどの簡便商品の需要はますます高まりつつある。また、10月からの消費増税と軽減税率の導入により、消費者は税率が10%となる外食を控え、軽減税率が適用される中食や内食の需要が高まることが予測される。

 イオンはこうしたライフスタイルの変化や社会動向の変化を注視し、簡便商品の開発に磨きをかけていく。「ただ簡単で便利なだけの商品は、どの企業でも販売している。当社では簡便に加え、シニア対応や糖質オフ、オーガニックなど、プラスアルファの要素を付加することで差別化を図りたい」(和田本部長)。今後イオンはID-POSHUTのデータ分析を基に、付加価値の高い商品の開発を加速させていく考えだ。