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シーインがアマゾン化!?気づけば周りは「シーイン」だらけの脅威 

今回はShein(シーイン)の「残品」を使った海外販売の動かぬ証拠と、アマゾン化している実態について話した上で、このことが何を意味するのかを説明したい。

 中国からの手紙 シーイン「残品・再販」動かぬ証拠

 今回は、私のシーインの論考を読まれた、中国在住の方からのお便りをご紹介しよう。

「河合さんお久しぶりです。まずは、二つのEC販売を比較してみてください。左がSheinで右がタオバオです。これはGUUKAっていう中国のローカルブランドなんですが、いまでもECで売ってるものがSheinでも売られているのです。人民元で309元なのでシーインの価格とほぼ近いです。
 たしかに、河合さんのいうとおり、中国市場だけでも巨大なので既存のブランドにとって、売れ残りをSheinが海外で捌いてくれたら、助かるし。中国だけ集中できるというのはメリットがあるように感じます」

左がSheinで右がタオバオ。全く同じものが同時に売られている

 続いて、自宅にある私の新書籍『知らなきゃ行けないアパレルの話』(ダイヤモンド社)を手に取った私の娘 (27) が、「パパ、確かにウチのまわりの人、パパの言うとおりシーインだらけになってきたよ」と言いだした。

 冒頭の中国の方がお便りで、わざわざタオバオとシーインの「残品・再販証拠」を送ってきてくれたことに感謝する一方で、こうもあからさまに、同じモデルと同じ写真を使いながら、「中国では販売されていない」と報じられているシーインをみるに、日本と中国の常識の違いに驚きを隠しきれない。

 私の周りにはシーインを買い、その完成度を確認する「おじさま」方が増えてきた。また、すっかりシーインアナリストになってしまった私に、「シーインは、Z世代だけでなくミドルエイジ、それ以上の層も攻めるのか?」という質問も来るようになった。

 

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アマゾン化していくシーイン

シーインがアマゾン化している!?

  久しぶりにシーインのサイトをみて驚いたのは、大分類として「WOMEN」「MEN」「KIDS」「PLUS SIZE」に並んで「Home +Pet」ができており、そこではペット用品からはじまり、なんと、家具、キッチン用品から家電用品まで販売していた。アパレルの成長を天井とみたのか、アマゾンのような総合ECサイトを目指しているのか定かではないが、成長の第二ステージに入っていこうとしていることは明らかだった。なお、アマゾン中国撤退という記事と、私の「アマゾンは中国から排除されている」という論考は「矛盾しているのでは」という質問が来たが、正確にはアマゾンは中国においてマーケットプレイス事業からはすでに2019年に撤退、電子書籍配信サービスである「Kindle」事業も23年6月に停止予定で、残るは越境ECだけとなるが、その存在感も「全く無い」(中国の友人からの便り)ということである。

 次に私は、一年前の「ペラペラの生地」から、多少は品質があがったのか、また、私のようなシニアが着られる服があるのか確認するため、いくつかの商品を買ってみた。

 やはり、驚くべきはその価格で、デニム、Tシャツ、ソックスあわせて、5000円もしない。まずは、Tシャツだ。お世辞にも、私たちユニクロ世代の高品質になれている人間からしてみれば、縫製の悪さは明らかで「価格なり」だった。生地は流行遅れの細番手に、なんとスパンデックス(ゴムのような強い伸縮性のある糸)が入り、生地感を厚くしているも縫製ムラが激しく、チープ感は明らかだった。

左がシーインのTシャツで、右が日本メーカの縫製だ

 ちなみに、私が過去にレポートしたとおり広東省の工場から個別配送で直送されてきた。

 今は、クーリエと国内物流業者のバケツリレーで、海外からのドアトゥードアサービスはわけなく可能だ。(Guang Dong : 広東省)

  デニムは破壊的にNGだった。恥ずかしい限りだが、私のウエストに合わせてデニムを頼んだのだが、股下やヒップが超巨漢で、これは米国あたりの売れ残りではないかと感じた。生地はしっかりとしたもので縫製も問題ないが、我が家の雑巾として活躍してもらうことにした。

巨大なヒップ 筆者のウエストとのギャップに注目

 このように、話題ばかりが大きくなり、また、確実にZ世代に浸透しつつあるシーインだが、なかなか40代以上がマスとなる日本市場で存在感をだすのは、まだまだ先ではないかと感じたものだったところ、大手広告代理店に勤めている娘が、「シーインは、YouTuberが、これはNG、これはOKという具合に買い方ガイドをしてくれて、同年代の女子達はそれを観て買っている」と教えてくれた。

  N=1で、これを普遍的な同社のマーケティング戦略だというつもりはまったくないが、先週ご紹介した論考のように、昨今のマーケティング戦略は、ターゲット以外のクラスターには知られることもなく、ひたひたと市場を奪っており、今までのマスメディアを主軸としたマスマーケティングに慣れた40代以降の世代の常識で考えていては危険であるということは確かだろう。

 高齢化が進む日本市場で、ビジネスパーソンの意思決定者の多くも無音の足音で忍び寄るアジア企業に「気がつけばオセロの四隅を取られていた」状態にならないよう、「その話はもう聞いた」「それは古い」と投げ捨てず、常にアンテナを張っておくべきではないかとあらためて感じる。

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プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。 現在は、プライベート・エクイティファンド The Longreach groupのマネジメント・アドバイザ、IFIビジネススクールの講師を務める。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
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