食品小売の店頭で、必ずと言っていいほど見かけるPOP。なにげなく売場に配置されているように見えるPOPだが、簡単な工夫を凝らすだけで、その効果をぐっと高めることができるという。POPの効果を最大化するためには何が必要なのか。行動心理に基づいた、店頭POP・商品パッケージをはじめとする販売促進ツールデザイン事業を手掛け、セミナーや研修を通じて6000人以上を指導する“POPのプロ”、モリモトデザインオフィスの森本純子氏が解説する。
POP効果が出ない原因は「情報」か、「デザイン」か
皆さんのお店で貼られているPOPはどんな種類がありますか? パートタイマーさんやアルバイトさんが作ってくれた手書きPOPやパソコンPOP、または商品と一緒に送られてきたメーカーPOPなどさまざまだと思います。
そのPOPたちですが、効果は継続していますか? POPを貼ってしばらく商品は売れていたのに、気がついたらあまり売れなくなってしまった……など効果が続かないことはどんな業種でもあると思います。それには、いくつか原因があります。
たとえば、
- POPに書かれている情報が商品パッケージに書かれている情報と同じ
- 他商品にも貼っている「店長おすすめ」「新商品」などの既存POPを貼っている
- POPに書かれている情報が古い
など、「情報」が原因の場合や、
- 数か月、数年と貼り替えていない色あせたPOPをそのまま貼っている
- 商品パッケージと同じデザインにしてしまい、商品に埋もれて気づいてもらえない
- 文字やデザインにこだわり過ぎて、キャッチコピーが目に入ってこない
といった具合に「デザイン」が原因である場合もあります。
「情報」が原因でも「デザイン」が原因でも、あることをするだけでPOPの効果をアップさせることができるのをご存じでしょうか。それは「ひと言POP」を追加するだけです。
ここでいう「ひと言POP」とは、商品をオススメする理由が短い言葉で書かれたPOPのことを指します。スタッフが書いたPOPでも、メーカーPOPでも、小さなひと言POPを追加するだけで効果が上がるのです。
ひと言POPを書くうえでのポイントはいくつかありますが、一番大切なのは「 自分の言葉で書く 」ことです。商品やサービスを実際に自分で体験した際に感じた想いなどを「自分の言葉」で伝えることで、リアリティある情報になり、それは信ぴょう性の高い情報になります。
縦書き? 横書き? 効果が上がるレイアウトとは
POPの研修や勉強会でよく質問をいただくのが「縦書きor横書き問題」です。「縦書き=和風」「横書き=洋風」という概念は少しずつ変化してきている昨今、重要になるのは「ブランドイメージに合った、読みやすいレイアウトになっているのか」という点です。
そして、お客さまがスムーズに読めるように「流れとリズム」を意識して情報を配置(レイアウト)することがポイントになります。流れとはレイアウトを見る「視線の流れ」と、情報を伝える順番という「話の流れ」です。本編では、レイアウトを見る「視線の流れ」についてお伝えします。
まず、「縦書き」の場合。お客さまの視線が最初に向くのは、紙面右上です。そこから真下へ降りて、左上へ上がり、左下へ下がる「N」の形で動きます。
次に「横書き」の場合。視線が最初に向く場所は、紙面左上です。そこから右へスライドして、左下へ降りて、右へスライドする「Z」の形で動きます。
この視線の流れに合わせて、伝えたい情報を配置していくことで、お客様はストレスなくスムーズにPOPを読んでくれるようになります。
ここで大切なのは、「最初に視線が向く場所に何を配置するのか」という点です。人は最初の3秒で「自分にとって興味があることなのか」を決断すると言われています。ですので、最初に目につく場所には、「お客さまが興味を持てる情報」や「インパクトある情報」を配置することが重要になります。それにより、すべての情報を最後まで読んでくれやすくなるのです。
配色でお悩みの方へ!オススメの色組み合わせ
私が考える配色の基本は、
- ブランドイメージ
- 補色
- NO!ハレーション
の3つです。
1.ブランドイメージ
商品やサービス、店舗の雰囲気に沿った配色を選ぶことで、ブランドイメージを視覚的にお客様へ伝えることができます。また同時に、季節色を取り入れることで、季節に合わせた提案演出につなげることもできます。
2. 補色
皆さん、色相環(カラーチャート)を覚えていますか?中学美術でやったなぁ~と懐かしい方もいらっしゃると思います。補色とは、色相環で正反対に位置する関係の色の組合せのことをいい、相性の良い組み合わせになります。たとえば、「赤」と「緑」、「青」と「橙」、「紫」と「黄」など。
3. NO!ハレーション
上記の補色組み合わせで気をつけなければならないのが、ハレーション(通称:リープマン効果)です。相性がよすぎてお互いを際立たせるため、明度差のない2色を隣接させると、文字の輪郭がぼけたり、目がチカチカしたりします。2色の間に「黒」「グレー」「白」などの無彩色を挟むことで抑えることができますので、補色を使う際は気をつけましょう。