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「GO GREEN」チャレンジ宣言でSDGsを従業員一人ひとりの自分ごとに

近年、「SDGs」という言葉がよく聞かれるようになった。持続可能な未来のために、小売業においてもさまざまな取り組みが行われている。中でもサミット(東京都/服部哲也社長)では、SDGs を踏まえて「GO GREEN」チャレンジ宣言を定め、従業員一人ひとりが“自分ごと”として社会課題の解決に取り組んでいる。そのねらいについて、経営企画部·広報部担当役員の山元淳平氏に聞いた。

サミットの使命と連動した「GO GREEN」チャレンジ宣言

「GO GREEN」チャレンジ宣言のロゴマーク。

 いまや至る所で耳にするようになった「SDGs」。これは「SustainableDevelopment Goals/ 持続可能な開発目標」の略称で、2015年に国連で採択された、30年までに持続可能でより良い世界をめざす国際目標のこと。地球上の「誰ひとり取り残さない」という共通理念のもと17のゴール(目標)がある。これを踏まえて、サミットが21年7月に制定したのが「GO GREEN」チャレンジ宣言だ。持続可能な世界のために、サミットとして社会課題にどう取り組むべきかを、5つの重点テーマにまとめている。

 具体的には、「『食と健康』を軸とした健康長寿社会への貢献」、「地域コミュニティとの共生」、「『2050 年までにCO 2排出量実質ゼロ』へ」、「地球にやさしい調達·利用の促進」、そして「誰もが生き生きと働ける環境の実現」だ。サミットの特筆すべきことは、社員はもちろん、パートタイム社員やアルバイトなど従業員一人ひとりがこれら5つのテーマに向き合って、“自分ごと”として行動していることだ。その理由を山元淳平氏は「『GO GREEN』チャレンジ宣言が当社の使命と連動しているから」と話す。

 サミットの使命とは、「生きる糧(かて)を分かち合うお店」であること。「生きる糧」は、食品や生活必需品などの物質的なものだけでなく、元気や活力、心の支えといった精神的な豊かさも意味する。物心両面から分かち合えるお店になれば、地域の中でなくてはならない存在になれるはず。それがサミットのめざすべき姿であり存在意義だ。

 実は、現· 取締役会長である竹野浩樹氏が16年に社長に就任した際、「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」という事業ビジョンを掲げた。以来、その実現に向けてサミットは自らのありようを問い直し続けたという。

 「これまでは『日常の食事の材料を提供する店』であることが当社の使命でした。しかし、時代の流れとともに社会の求めるものが変わる中、よりどころとすべきものが昔のままでいいのか。実際、現場では機能面でも情緒的な面でも広がりがあったにもかかわらず、それを表現しきれていなかった。自分たちは何者なのかを再定義しなければ、新しい時代に踏み込んでいくことはできない。そう考えて、みんなで何度も議論してたどり着いたのが『生きる糧を分かち合うお店』。だからこそ、従業員一人ひとりに浸透しているのです」(山元氏)

「GO GREEN」チャレンジ宣言で掲げる5つのテーマと取り組み例

小さな行動の積み重ねで、豊かな未来へとつなげていく

 とかくSDGsは大仰に捉えられがちだが、一人ひとりが半径500メートルの世界をちょっと良くすることが大事と山元氏は言う。

 「身の丈に合ったことを集合体で行えば、一つのムーブメントになります。会社が何をするかではなく、自分が何をするかを考えようと呼びかけました」(山元氏)

 バイヤーならば、開発した商品が完売すれば、フードロスの削減につながる。あるいは、ノントレイ商品を増やせば、ゴミが減り、環境にもやさしい。それぞれの役割の中で、ほんのちょっと気を遣うだけで、自分たちの暮らす社会が少しずつ良いほうへと変わっていく。一人の100歩より100人の1歩が大切だと伝え続けた結果、それぞれの店長がしっかりと受け止め、自分たちのGO GREENな活動を展開している。

 例えば、コロナ禍で社会科見学ができなくなった地元の小学校に出向き、出張授業を行った店長もいた。小学生たちが喜んだのは言うまでもない。日頃から地域と向き合い、連携してきたからこそ実現できたことだ。こうした事例は「生きる糧の種」として、社内SNS で共有される。この1年で1000件あまりの事例が集まり、1万件ちかくの「いいね」があったという。共有することで、「自分たちもやってみよう」と伝播し、自発的な取り組みが次々と生まれている。現場発のアイデアを全店に導入するケースも少なくない。

 「生きる糧の種」の事例はデジタルで共有するだけでなく、紙に出力したものを本部の1階に貼り出しているため、従業員だけでなく、取引先などもGOGREENな活動を知ることができる。おかげで、社会に向き合っている会社として企業姿勢を評価されることが増えたと山元氏は話す。

「生きる糧の種」として事例をデジタル&アナログで共有

 「一人ひとりが考えて企画して行動する。それが連鎖していくと、持続性が担保され、好循環が生まれます。こうした草の根運動的なことがSDGsの達成のためには大事であり、小売業においてはそういうアプローチのほうが持続するのではないでしょうか」(山元氏)

従業員一人ひとりが自らのGO GREENな活動を宣言

SDGsに対応した店舗を今年4月にオープン

 サミットでは、22年度を最終年度とする3カ年中計のテーマに「GO GREEN2022~社会に必要とされる新しいSMの創造~」(以下、GG2022 )を掲げている。ステークホルダーに「お客」「社員」「取引先」だけでなく「社会」を加え、単に食材を提供するにとどまらず、事業を通じて高齢化や環境保護などの地域社会の課題にも貢献し、SMの枠を超えた存在になることをめざしている。「GO GREEN」チャレンジ宣言は、まさにここから来ているものだ。

 この中計GG2022を体現する店として、今年4月にオープンしたのが「サミットストア世田谷船橋店」だ。環境への配慮や防災対策、地域コミュニティとともに行うイベントなど、「GOGREEN」な取り組みが行われ、SDGsに対応した店舗運営を実践。小売業界から大いに注目されている。

 「私たちの取り組みはすべて『サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする』という事業ビジョンの実現に向けたものです。これが伝播すれば、きっと社会は良い方向に向かい、小売業のプレゼンスも上がることでしょう。これからも従業員一人ひとりが社会課題に向き合い、お客さま、お取引先さま、地域、社会と連携して、持続可能な未来のために取り組んでいきたいと思います」(山元氏)