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6月に社長交代のバローHD、田代正美会長兼社長が決算説明会で語ったこと

2022年5月12日に行われたバローホールディングス(岐阜県)の22年3月期決算説明会に先立って、6月30日付けで28年間の長きに渡り同社を率いた田代正美会長兼社長が会長兼CEOに、横山悟取締役副社長が社長に就任することが発表された。田代氏が兼務していたバローの社長は森克幸専務となり、田代氏は代表取締役会長となる。本稿では、決算説明会における田代正美会長兼社長の発言を抄録する。

生き残りをかけた各事業の方向性

 私が実質的に経営を担って35年になる。2~3年前からホールディングスに関しては横山に、スーパーマーケットは森に、それぞれやり方を見せてもらい、体制を変えてきた。今後は両人が「経営のプロ」として力を発揮してくれると期待している。

 とはいえ、すぐに政策が変わるとは思っていない。人口が減少していく郊外に多くの店舗を展開するバローグループが生き残っていくためにはどうすべきか、ここ数年間考えてきた。

 たとえば2km商圏を相手にしているスーパーマーケットは、商圏内にコンビニやドラッグストアが出店した際に、平均的なスーパーマーケットとしての便利性をうたっているようでは生き残れない。ほかの商圏にあるスーパーマーケットを超えてでも来店していただけるようなスーパーマーケットでなければならない。そのためにわれわれは、来店動機となる強い商品・カテゴリーを持った「デスティネーション・ストア」を志向してきた。

 近頃はドラッグストアやコンビニでも生鮮を扱い始めているが、当社は競合とは「圧倒的に違う」というレベルの生鮮食品を展開している。デスティネーション・ストアでは生鮮三品が(取扱商品の)45%を占める。ほかのスーパーマーケットを超えて、お客さまが肉や魚を買いに来ていただけるというのがここ数年の一番大きな成果であり、当社のスーパーマーケットの特徴となっている。

 ドラッグストア事業については、中部薬品は出店先のほとんどで病院と併設またはそれに伴って調剤を行う、あるいは大学構内の中に調剤薬局を出している。昨年あたりから、調剤またはビューティに特化した店づくりに路線変更している。現在、病院と併設したドラッグストアは好調であるため、単独出店または食品比率の高いドラッグストアからこれにシフトし、効率性および収益性を高めていく予定だ。

 ホームセンター事業では、アレンザホールディングスにおいて、PB商品のほか、バローホールディングスのさまざまなノウハウを提供したことにより、安定した収益が見えてきた。足元では、立地が非常に限られ、大規模店舗をつくることが難しくなってきているため、「カテゴリーショップ」というかたちでキャンプ用品やハードウェアなどの専門店をチェーン展開していく。

 今後は、たとえば園芸であればタイム(岡山県)など、先行企業のノウハウを導入することでシナジー効果を追求していきたい。とくにPB商品が粗利益率上昇につながっているため、より一層強化していく。

 スポーツクラブ事業は、コロナ禍において規制が幾度もあった影響で、休会会員が増えた。そ経験によって損益分岐点を下げていく力がついてきたと考えている。

都市商圏を攻略する店舗フォーマット

 郊外で「デスティネーション・ストア」を強化している一方で、都会に目を向けると、交通の便がよい場所に引っ越すなど人口移動が増えている。都会や人口の多い場所での商売が今後マーケットとして大きくなると予測しており、都市部におけるフォーマットをどうつくり上げるかポイントになるだろう。

 その一環で、6月13日に名古屋の錦2丁目という場所に、タチヤの生鮮スーパーをオープンする。(都市立地では)従来型のバックヤードが店舗面積全体の3分の1以上を占める店舗は、経営的に採算が合わない。

 生鮮を扱う当社は「売り切り」のノウハウを持っている。「今日仕入れたものを今日売る」ということを徹底的につくり上げていけば、バックヤードや冷蔵庫のためのスペースが必要ない、あるいは冷蔵庫すらつくらない経営ができるだろう。

 実際に、昨年子会社化した八百鮮(大阪府)、ヤマタ(大阪府)の店舗面積は100坪ほどだが、非常に大きな売上高がある。50坪の店舗でも年末には鮮魚だけで1000万円を売ることもあった。これらの店舗からノウハウを得て、都会のフォーマットに展開していきたい。また、リアル店舗だけではなく、アマゾンさんとの協業からも学びながら、インターネット販売や無店舗販売にも力を入れていく。

行政との協力や外販戦略

 当社はドラッグストア、ホームセンター、スポーツ事業などを通じて、さまざまなかたちで行政と関係ができている。岐阜県では新型コロナウイルスに罹患されたお客さまに1日3食の弁当を供給し、自宅療養者の方々には1週間分の生活物資を届けている。災害の多い地域では、自衛隊への食事の供給なども行ってきた。給食事業も請け負っており、地域とのつながり、商品とのつながりができている。

 また、グループ会社のVソリューションでは、商品開発および外販事業を行っている。バローグループを相手にするのではなく、外部のスーパーマーケット企業へ商品やサービスを売っていくのが大きな戦略となっている。物流に関しても、自社のモノだけではなく、ほかのスーパーマーケットの物流を請け負うなど、物流システムを販売することで売上を積み重ねていきたい。

 ほかにも、総菜やベーカリーの生地なども他企業へ販売しており、年間70億円の売上をあげている。これを数年で200億円まで増やしたい。また、バローグループでは事業者向け配送の「ainoma(アイノマ)」というネットスーパーのシステムも有しており、これも拡大していきたいと考えている(談・文責編集部)。