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OMO絶好調!なぜ「しまむら」ではECで買う9割のお客が店で受け取るのか!?

コロナ禍がきっかけで、ECへの傾斜を強める流通業界。しまむら(埼玉県/鈴木誠社長)も例外ではないが、全国約2200のリアル店舗を生かした、ECとのOMOOnline Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)で一線を画す。鈴木誠社長は、今後も年間30〜40店舗のペースでの出店を表明。「バースデイ」「アベイル」「シャンブル」といった業態の育成に力を注ぐ。一方で、大都市圏で主力の「しまむら」の出店攻勢をかけ、シューズとファッションの新業態の開発を進めるなど、新しいビジネスチャンスの獲得にも依然、余念がなさそうだ(注:本インタビューは3月上旬に行われました)。

ECで、リアル店舗の客層も拡大

ファッションセンターしまむらホームページTOP

アパレル企業のECシフトが進んでいます。

鈴木 当社も、大都市圏を中心に売上が順調に伸びています。郊外のリアル店舗での購買が中心でしたので、リアル店舗の少ない大都市圏のお客さまにオンラインでよりご購入いただいていると認識しています。オンランストアのラインアップのうち約6割をEC専用商品として、「ECで購入する理由」を作っています。

一方、EC化率はまだ低く、アパレル業界全体でEC化率が約11%と言われるなか、当社は5%ぐらいを目標値に置いています。EC用の物流センターは現在、1カ所ですが、関西にももう1カ所増設します。

品揃えもリアルとオンラインで変えているのでしょうか。

鈴木 かなり変えています。現在のオンラインストアのラインアップのうち、約60%が専用商品です。例えば、当社では、有名インフルエンサーである「プチプラのあや」さんとのコラボレーション商品も展開していますが、「オンライン限定カラーのバッグ」といったオリジナル商品を6割ほど揃えています。また、全国約2200のリアル店舗を生かし、ECで一定の販売期間が過ぎた商品を全国のリアル店舗に回して売り切るようにしています。ECのお客さまは飽きが早いですから、そうすることで、オンラインストアの商品鮮度を高めています。商品回転率はリアル店舗の約2倍、年1014.5回です。

オンラインストアでは、商品の店頭受取りサービスも手がけられています。

鈴木 実は、ECのお客さまのうち90%以上がこの受け取りサービスを利用されています。とくに東京都心のリアル店舗では、受け取りに来られるお客さまが郊外店と比べて10~20倍も多く、来店時に新たに2~3点お買い上げいただいています。いわゆるOMO(オンラインとオフラインの融合)が予想以上にうまくいっていると受け止めています。

そのほかに、オンラインストアの新しい活用法はありますか。

鈴木 デジタルの顧客データを得られるのが、何と言っても、オンラインストアの強みでしょう。当社は今後、高感度、高品質、低価格の実現に加え、潜在的なニーズ=ウォンツの提案に注力しようと考えています。ウォンツは、販売データといった過去の結果からは見えてきません。ECサイトや動画サイト「しまむらTV」の視聴情報、SNSへの書き込みといったデジタルデータを集積・分析して、その中からウォンツを探り当て、需要予想や商品開発につなげる試みを始めています。商圏の顧客分析も、もっときめ細かく、パーソナライズできるようになるでしょう。

台湾事業は将来、100店舗規模に拡大

流通業界では、ECやコロナ禍の拡大に伴って、リアル店舗網の見直し・縮小といった動きも起こっています。御社はどうお考えでしょうか。

鈴木 他社とはスタンスが異なるでしょう。リアル店舗は、当社の最大の武器ですから。OMOの効果も見えてきたところですので、これからはリアル店舗とECが成長の両輪となります。新規出店は中計3年間で100店舗の計画を出していますが、業態によって出店戦略を変えます。

全国に約1400店ある「しまむら」の出店余地はあと50100店。リロケーションがメーンとなり、店舗の大型化を進めます。22年度上期には、12001300㎡フォーマットの新店をオープンする予定です。一方、「バースデイ」「アベイル」はともに約300店舗ですが、中長期的にはいずれも500店舗規模に増やす計画です。雑貨中心の「シャンブル」も200300店舗体制を目指したいですね。

強化する出店エリアは、どの辺りでしょうか。

鈴木 まずは、手薄な大都市圏を“リベンジ”で狙おうと考えています。コロナ禍以降、大都市圏での店舗開発の環境は、かなり改善しましたから。とりわけ、東京、神奈川、埼玉の一部がメーンターゲットです。立地は、都心部周辺のインショップが中心ですが、フォーマットにはこだわりません。2フロアからなる物件に出店することもあり得ます。重視するのは賃料と売上のバランス、収益性です。それから、条件が整えば、店舗は賃貸だけでなく、自社で保有することも想定しています。将来的には、大阪、名古屋、福岡などへの出店にも力を入れたいです。

日本市場が縮小する中、成長戦略として海外市場に目を向ける流通業も増えています。しまむらは現在、台湾市場にすでに乗り出されていますが、今後の海外事業の展望もお聞かせください。

鈴木 台湾市場は有望視しています。将来的には100店舗規模まで事業を拡大したい。ただし、中国に再上陸するつもりは、今のところありません。ブランドが浸透し、越境ECなどで一定の客層を確保できたら、その時改めて検討しようと思っています。

しまむらの売場拡大で、生活雑貨を拡充

「しまむら」について、取扱いカテゴリーも増えているようですが、店舗規模は拡大するのでしょうか。

鈴木 22年度上期には、12001300㎡のフォーマットの新店をオープンする予定です。拡大するカテゴリーは、「巣ごもり生活」でニーズの高まっている生活雑貨です。スリッパやクッションといったインテリア用品のほか、ヨガマットのようなウェルネスグッズ、化粧品などを拡充するつもりです。生活雑貨は、アニメキャラクターとのコラボレーション商品などで、差別化も図っていきます。

新業態の開発にも積極的に取り組まれていますが、現在進行中のプランがあれば、ご紹介いただけますでしょうか。

鈴木誠社長

鈴木 「ディバロ」というシューズ業態を約20年前から展開しているのですが、なかなか成長できませんでした。そこで、ディバロをバージョンアップさせ、シューズとファッションを融合させた新しい業態として、リスタートさせることにしました。2211月に、1000㎡規模の第1号店を新設する予定です。ご期待ください。