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2021年の流行グルメ振り返り キーワードは「0.7食」「健康」

長期化するコロナ禍で
高まった食の傾向とは

 ちょうど1年前にも、2020年の流行グルメについて「ダイヤモンド・チェーンストア」誌に寄稿したことが記憶に新しい。しかし、まさか新型コロナウイルス(コロナ)の影響がこんなに長引くとは誰が想像したであろうか。
昨年は、コロナ禍において人々のライフスタイルが変化し、その影響が食生活にも影響を及ぼしていると記述した。そしてその結果、食のトレンドのテーマは「非日常感の再現」そして「プチ贅沢」の2つであると述べた。外出自粛生活が続くなか、コロナ禍以前に外食で味わっていたものを自宅で再現したり、他のレジャーで消費が出来ないぶん、自宅での食事を少し贅沢にしたりといった傾向が表れたものだった。

 そこからさらに1年が経過した2021年の流行グルメのキーワードは、昨年の「非日常感」「プチ贅沢」を受けつつ、そこに加えて「0.7食」そして「健康」を挙げたい。
「0.7食」とは、コロナ禍において日常的な活動量の低下により、お腹が減りにくくなり、1食を0.7食程度に抑える傾向のことだ。「おやつ以上、食事未満」とも「進化形軽食」ともいえる。また「健康」については、コロナ禍において健康志向が高まったことはいわずもがなであろう。

運動量の減少から
軽食ニーズが増加

 ここからは「0.7食」「健康」が注目された背景を振り返ってみよう。
 ホットペッパーグルメ外食総研は2021年11月末、全国の20~30代の男女約2000人を対象に、「2021年の流行グルメ」に関するアンケートを実施した。目的は、消費者が「2021年に流行ったと思うグルメ」のランキング結果の取得と、コロナ禍が生活スタイル・食生活へどんな影響を与えたのかを知ることであった。

 まず、日常の活動量や食事量については、コロナの影響により、「1日の平均運動量が減った」と答えた消費者は49.5%と約2人に1人だった。これは、リモートワークの浸透による通勤時間の減少、外出自粛による日常的な活動が減った事が大きな要因と考えられる。

 そのような状況下において「1日3食、毎食しっかりと食べることが食べすぎだと感じている」人は、38.1%いることも分かった。

 さらに、昨今軽食が注目されていることから、「1日のうち1食は『おやつ以上食事未満の軽食(1食7割程度の分量)』に変えたいか?」と問うたところ、49.7%と約半数の人がそう思うと答えた。
ホットペッパーグルメ外食総研ではこのような1回あたりの食事量を少し控えた、7割程度の分量の食事傾向を、新たな食生活のトレンドとして「0.7食」と名付けた。

 「2021年流行グルメ」の上位にランクインしたマリトッツォ、フルーツ大福、台湾カステラなどはまさに0.7食と言える。おやつとしてはちょっとボリュームがあるが、食事としてはちょっと軽めなメニューに人気が集まったのだ。

 

「健康に気を遣う」一方
「贅沢」「非日常」を求める傾向も

 コロナ禍での食生活に対する意識の変化では、全体の33.5%の人が「健康に気を遣うようになった」と回答した。2021年の食の流行ランキングにおいても、オートミール、糖質ゼロビール、発酵食品などが上位に入り、納得の結果となった。

 

 その一方、調査結果では「娯楽が減ったのでちょっと贅沢をしたくなった」32.6%、「非日常を味わいたい」18.8%といった回答も目立った。昨年に続き、消費者は最も身近な娯楽ともいえる「食」に対していつもより贅沢なものを求める傾向があると言える。

 コロナ禍にかかわらず、過去を振り返るとライフスタイルと食文化・食生活は相関性が高い。狩猟、採取の生活をしていた原始時代には、食材が手に入ったときが「食事時」であり、現代社会でいう「1日3食」といった概念は当然なかった。諸説あるが、その後も人々は太陽とともに活動し、朝と昼を兼ねた食事をとり、夕食は明るいうちに済ませ、暗くなれば就寝する、といった1日2食が当たり前だった。

 その後、行灯などに代表される明かりが普及したことで1日の活動時間が延び、1日2食では日中にお腹が減るため、朝食、昼食、夕食の1日3食になったともいわれる。「夜食」や「おやつ」といった中間食が生まれたのも、経済活動の活発化とともに、ライフスタイルが変化、多様化した結果といえよう。

生活・働き方の変化から
食スタイルは生まれる

 コロナ禍で人々は否が応でもライフスタイル、働き方の変化が求められている。そのことは、外食をする場所、相手、業態、また外食・中食・内食に関わらず、食事回数や1回当たりの量など、さまざまな形で食生活にも大きな影響を及ぼしている。そして長引くコロナ禍で変化した食スタイルは完全にもとには戻らないことが予想される。

 そういったなか、内食・中食・外食のボーダレス化はさらに加速していき、その時その場に行かなければできない体験からくる感動、利便性など、外食や中食それぞれに、他にはない価値がさらに求められてくるはずだ。

 2021年の流行グルメのキーワードである「0.7食」「健康」。なかでも「0.7食」は新たに生まれたトレンドで、2022年にはさらに定着し、さまざまな商品が開発されることが予想され、実際にすでに開発に着手している大手流通業、外食チェーンも存在する。このように事業主が切磋琢磨し、ライフスタイルの変化に合った食の開発が進み、人々の食生活が豊かになることを願ってやまない。

【執筆者】

有木真理(リクルート『ホットペッパーグルメ外食総研』上席研究員)
㈱リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めるとともに、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成やさらなる外食機会の創出をめざす。自身の年間外食回数は300日以上、ジャンルは立ち飲みから高級店まで多岐にわたる。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがウリで、1日5食くらいは平気で食べることができる。