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買いたいものがない!

 1ドル80円を割る“大円高期”であるにもかかわらず、久しぶりに訪れた米国では買いたいものがなかった。10年前、5年前には、腹の底からあれほど買い物を楽しみ、洋服などは箪笥ストックとして溜めてきたものなのに…。今回の渡米では、ほとんどショッピングをせず、興味を持つこともなかった。

 

 この理由がどこにあるのか?

 ホテルの部屋に戻り、トレーダージョーズで買った1ドル99セントのワインを飲みながら考えた。

 

 ひとつには、ファストファッションなどの多くのブランドが日本上陸を果たし、いつでも最新の商品が日本に居ながらにして買えることだろう。世界の大都市には同じような店舗があふれており、商業の画一化が定着している。もはや、米国だけで店舗を展開しているブランドはそんなにはなく、新奇さも珍奇さも見出せない。

 

 もうひとつは、円高ではあるのだが、日本国内のデフレが続き、商品に割安感がないことだろう。オールドネイビーを覗き、アーガイルVネックのセーターの値段を見れば、29.94ドル(約2400円)。微妙な線かもしれないが、ギャップのセカンダリーラインであることを考えると「高い」と思えてしまう。

 

 さらには、日本国内の小売業の活躍も挙げられる。たとえば、カジュアルウエアで言えば、ユニクロを初め日本企業のモノが一番格好いい、と今日のこの時点では感じている。また、100円ショップに行けば気の利いた日用品だって、夢のような価格でなんでも手に入る。何が悲しゅうて、エア便で太平洋を跨いで運ぶ必要があるのだろうか?

 

 もちろん、個人的な問題として言えば、加齢とともに消費意欲が減退していることも考えられる。

 だが、そのことには、あえて触れないでおこう。