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合従連衡は先手優位か?

 1980年代の後半に都市銀行は、大まかに言って17行あった。都市銀行とは、普通銀行の中で大都市に本店を構え、全国に支店を展開している銀行を指す。

 定義づけによっても異なるが、ここで言う17行とは、三菱銀行、東京銀行、三和銀行、東海銀行、住友銀行、太陽神戸銀行、三井銀行、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行、協和銀行、埼玉銀行、大和銀行、日本長期信用銀行(現:新生銀行)、日本債券信用銀行(現:あおぞら銀行)、北海道拓殖銀行(消滅)、第一相互銀行の各行だ。

 

 バブル時の過剰融資から発生する不良債権問題に苦しんでいた都市銀行各行は、1996年の第二次橋本龍太郎内閣が提唱した金融制度改革(金融ビッグバン)を受け、こぞって合従連衡に乗り出す。

 この時点で先陣を切っていたのは、1991年に協和銀行と埼玉銀行が合併して設立された協和埼玉銀行(後:あさひ銀行)と1992年に太陽神戸銀行と三井銀行が合併して設立された太陽神戸三井銀行(後:さくら銀行)である。

 

 続いたのは、1996年に三菱銀行と東京銀行の2行で設立された東京三菱銀行だ。

 そして、《強・強連合》である東京三菱銀行の登場に衝撃を受けた各行は、真剣に合従連衡を模索するようになる。

 

 2002年には、三和銀行と東海銀行によりUFJ銀行が、第一勧業銀行と富士銀行、日本興業銀行により、みずほ銀行(&みずほコーポレート銀行)が相次いで設立された。

 

 残された感の否めない、さくら銀行と住友銀行は2003年、元第一相互銀行(わかしお銀行)を交えた3行で三井住友銀行を設立した。また、同じ年に、あさひ銀行と大和銀行が合併し、りそな銀行(&埼玉りそな銀行)を設立する。

 

 さらに2006年に東京三菱銀行とUFJ銀行が合併して三菱東京UFJ銀行が発足。これによって、都市銀行再編の大勢が決した。

 

 現在、都市銀行がさらに巨大化した金融グループ(通称:メガバンク)は、三菱UFJ・フィナンシャルグループ、みずほ・フィナンシャルグループ、三井住友・フィナンシャルグループの3大体制になっている。

 

 この都市銀行再編の歴史は、寡占化に向かう市場では、合従連衡は先手必勝であり、後手を踏むと時代取り残される可能性があることを示唆している。

 

 だからというわけではないのだろうが、このところの小売業界は、勝ち馬に乗れとばかりに、めまぐるしいまでの合従連衡の流れにシフトしている。

 

 ただ、都市銀行と小売業の違いは、いくつもある。

 

 ひとつは、その企業風土の違いだ。創業経営者に牽引されることによって成長してきた多くの企業の風土は独特のものがあり、簡単には企業間同士の融和が進まない。誰もがイニシアチブを握れない対等合併ならなおのことだ。

 2つには、ほとんどの小売業は地域に密着しているということだ。特に生鮮食品を主力にする食品スーパーの場合は、合併による統合効果を簡単には享受できない可能性が大きい。

 3つには、都市銀行の場合は約17行しかなかったが、小売業の場合は、売上高1000億円超の企業は131社(『チェーンストアエイジ』誌2011年9月15日号)もあり、パートナー探しは限定されたものではないということだ。

 そして、4つめは、企業規模は大事な要因のひとつではあるが、小売業の競争にとっては、絶対優位とは言い切れないことである。

 しかも、食品スーパー業界に限って言えば、市場は寡占化に向かわない可能性もあり、都市銀行のように迅速に合従連衡に動くことが得策とは言えないかもしれない。