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ネットスーパーで利益を出すのに、物流の自前化が必然の理由

食のECシフト680

黒字化が難しいといわれるネットスーパーで長年にわたり黒字を確保し続け、圧倒的なネットスーパー売上を上げているスーパーサンシ(三重県)。その強さの理由とネットスーパーで成功するために必要な知識と勘所、方法論について、スーパーサンシ常務取締役NetMarket事業本部長の高倉照和氏に語ってもらった。

ネットスーパー事業を黒字化させるためには

スーパーサンシ常務取締役 NetMarket事業本部長 高倉照和

 ネットスーパーは、リアル店舗と同じ発想で運営していては利益を確保するのは難しい事業だ。SMは原則として固定費率が低減すれば、黒字が見えてくる。客数や売上高を拡大できれば、その分だけ固定費の比率が下がり、結果として利益を得ることができる。

 しかしネットスーパーの場合、そういった手法で利益を出すのは厳しい。ネットスーパーを運営しているほとんどの企業が、物流を外部の専門業者に委託しており、コストがかかり過ぎている。そうした企業のネットスーパーは、荷物1つを運んだ時点で損が出ているケースが大半で、そういったスタイルで売上高を伸ばせば、それだけ赤字額が膨らんでしまう。配送費という変動費を考慮していないためだ。

 そもそも、SMのリアル店舗が利益を出せているのはなぜだろうか。それは、SMがセルフサービスを前提としているからだ。お客さまが店に足を運び、欲しい商品を売場でピッキングし、精算を済ませた後にサッカー台で商品をレジ袋に入れ、そして家に持って帰る。リアル店舗ではこれらのすべてをお客さまが自身で行っている。企業側の手間を省くことで、商品を安く提供でき、最終的に利益を確保できるというビジネスモデルなのだ。

 その一方で、ネットスーパーはお客さまから受注した商品を売場でピッキング、箱に詰め、最終的に家に届けるというサービスを、SM企業側がすべて提供しなければ成立しない。一連の作業には多くのコストがかかり、黒字化を阻む大きな要因となっている。

 このような条件のなかで、ネットスーパーの黒字化をめざすのであれば、物流は自前で行うことが必須となる。ただ、それだけでは不十分で、リアル店舗のように、ある程度、お客さまにも負担してもらうことも考えなければならない。そのため、当社のサービスでは定額の月間登録料をいただいている。

 さらに当社では配送効率を高める工夫もしている。会員宅には商品保管庫という宅配ボックスを無料で設置しており、ドライバーはそこへ荷物を入れて回るだけの決まりになっている。もしお客さまが在宅している時でも、直接、手渡すことはない。そのため不在時の再配達も生じない。こうした取り組みによって、わが社ではネットスーパーサービスで黒字を出すことができている。

「リアル店舗は楽しい」は本当なのか?

 「人々は『楽しさ』を求めてリアル店舗で買物をするのだ」と主張する業界関係者は多い。実際のところ、それは本当だろうか。私は違うと確信している。お客さまは、日々の食卓に出す食材を求めており、ほかの買物手段がないため、「しかたなく」SMへ足を運んでいる。体が不自由な方や妊娠している方、また仕事で忙しい方が、「楽しみ」を求めて来店しているとは考えにくい。

 「楽しい」という点について言えば、インターネット、とくにスマホを通じた買物のほうが勝るはずだ。スマホでは無制限に情報を提供でき、商品に関連する動画を見てもらうこともできる。事実、多くの人がスマホでゲームを楽しんでいる。同様に、リアル店舗で買物をするという行為がいずれスマホにとってかわられると予想している。

 当社では、ネットスーパーはすでに主力事業となっている。長い年月をかけ構築したノウハウはほかのSM企業でも活用できると自負している。昨年から当社では、ネットスーパーのFC事業を開始した。これにより、全国のローカルスーパーを支援したい。

 このビジネスのねらいは、ロイヤルティ収入だけではない。FC事業で得られた収益を、より充実した受注システムやアプリケーションの開発のために投資したいと考えている。これらの開発には莫大な費用がかかるため、投資費用を小規模な事業社1社で賄うのは難しい。今後、AIやAR(拡張現実)の技術が必要になってくれば、コストはさらに増えることになる。そういった意味でもFC展開には力を入れていきたい。

 ネットスーパーは多くの企業が取り組んでいるが、現段階で成功している企業は少なく、開拓余地が多い分野と言える。経営環境が厳しさを増すローカルスーパーが参入する意義は大きいはずだ。もし、興味を持っていただける企業があれば、いつでも歓迎したいと考えている。

 

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