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ローソンがアバター接客を試験導入 多様な働き方の実現をめざす

会見を行うローソン竹増貞信社長とAVITACEO石黒浩CEO。
会見を行うローソン竹増貞信社長とAVITA石黒浩CEO。

 ローソン(東京都)は、アバター事業を手掛けるAVITAと協業で「アバターを使用した接客」を開始すると発表した。アバターの導入により、離れた場所からパソコンを介して接客に従事することが可能となり、時間・場所・年齢・性別などの条件や制限に縛られることなく働くことのできる環境を構築する。高齢者や子育て中の女性も働けることから、慢性的な人手不足解消への寄与が期待される。

時間・場所・年齢・性別に縛られず働けるローソンへ

会見で行われた接客のデモンストレーション。

 この新たなアバター接客システムにおいては、遠隔地にいるオペレーターがパソコンに向かって身振り手振りで商品説明やセルフレジの操作方法を説明すると、店舗のディスプレイに表示された「アバターワーカー」が連動して動き、接客・コミュニケーションを行う。もちろん、オペレーターの働く場所は限定されない。

 ローソンがこのシステムの導入によってめざすのは「時間・場所・年齢・性別などに縛られることなく働けるローソン」の構築だ。完全リモートのアバター接客ならば、子育て中の女性や、外出することにリスクを抱える高齢者や障がい者など、これまで接客業務に就くことが難しかった人々も働くことが可能になる。

 さらに、「将来的には海外からの勤務も可能にしたい」と竹増貞信社長は展望を語る。「たとえば、日本のローソンで働いていた青年が母国に帰り、『またローソンで働きたい』と思ったとき、アバターを利用すれば、海外からでも日本のローソンで接客ができる。そんな未来が理想だと考えている」。実現すれば、想定する働き手の幅が広がりを見せることになるだろう。

複数店舗勤務や作業分担による業務効率化も想定

 ゆくゆくは、アバターワーカーの複数店舗での兼務も視野に入れるという。「人手の足りない店舗へ流動的に接客に入ることにより、効率的な人員補充が可能になる」と竹増社長。

 また、アバターワーカーと店舗スタッフ間での業務の分担も計画している。たとえば、人手の少ない深夜の品出し中などは、接客をアバターに任せることで、店舗スタッフは品出しに集中できる。

 現時点で、アバター接客を導入予定の店舗は直営店のみだが、「業務の効率化や人手不足に悩むFC店の経営者にも興味を持ってもらえれば」(竹増社長)とFC店での活用にも期待を寄せる。

将来的にはケアマネージャーや薬剤師もアバター接客に

 ローソンが運営する、OTC医薬品の販売を強化した生活サポート型コンビニエンスストア「ヘルスケアローソン」や、ケア(介護)拠点併設型店舗の「ケアローソン」でも、アバター接客の導入を検討する。今のところ、前者には薬剤師・登録販売者、後者にはケアマネージャーが常駐しているが、将来的にアバター接客への転換も視野に入れている。

 「現状では時間帯によって訪来店客数に波があるため、薬剤師・登録販売者やケアマネージャーの業務負担がまばら。しかしアバター接客であれば、少人数で複数店舗の接客をこなすことが可能になり、こうした偏りを解消できるのではないかと考えている」。

 さらにAVITAが行った独自調査では、「個人的でセンシティブな問題は、アバターのほうが相談しやすい」との結果も出ているという。そうしたアバターならではの特性を訴求することで、「相談者数の増加も見込める」と竹増社長は自信をのぞかせる。

2023年には全国で1000名運用をめざす

  アバター接客は今年11月に首都圏でオープン予定の、未来型店舗「グリーンローソン」で実証実験を開始。2023年には東京、大阪の店舗で50名、2025年には全国の店舗で1000名の運用をめざすという。

 竹増社長は「アバター接客の活用によって、多様な働き方への対応が可能になるだけでなく、深夜帯を中心とした働き手の不足や経営効率化など、複数の課題解決につながるはず」とシステム実装にあたっての思いを熱く語った。

 ローソンの今回の取り組みは、慢性的な人手不足・働き方問題を抱えるコンビニ業界に新風を吹き込むことになるか、今後の動向が注目される。