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イトーヨーカ堂が神戸大学と提携し「AIスマート空調システム」を店舗に本格導入

イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)は神戸大学(兵庫県/藤澤正人学長)と共同で、人工知能(AI)を活用して空調エネルギーを削減する「AIスマート空調システム」を、イトーヨーカ堂の約70店舗に導入する。同社はこの取り組みによって、約2.2万トンのCO2排出量の削減を見込んでいる。

山本哲也社長(左)藤澤正人学長(右)

AIを活用し空調を最適化! 25年度中にIYの約70店舗に導入へ

 「AIスマート空調システム」とは、店舗内に設置されたカメラや温度計などによって収集した人流、温度、CO2濃度などのデータをAIがリアルタイムで解析し、学習することで、リアルタイムで店舗環境に最適な空調管理を行うシステムである。具体的には、人流や空調への負荷を予測したうえで空調システムの運転計画をAIが作成。その計画を実行しながら、店舗従業員が必要に応じて温度変更を行った場合もその操作内容を学習し、より最適な空調管理につなげるという仕組みだ。

 同システムは神戸大学が開発したもので、これまで「神戸三宮地下街」(兵庫県神戸市)、「阪急うめだ本店」(大阪府大阪市)、「伊勢丹新宿本店」(東京都新宿区)などの商業施設で導入実績がある。

 今回、イトーヨーカ堂は同社運営のショッピングセンター(SC)「グランツリー武蔵小杉」(神奈川県川崎市)にAIスマート空調システムを初めて導入し、25年度までに約70店舗に拡大していくことを明らかにした。すでに、同じく自社SCの「アリオ市原」「アリオ鷲宮」「アリオ葛西」「アリオ川口」の4カ所で導入を決定している。

セブン&アイの環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」の達成に寄与

 イトーヨーカ堂がAIスマート空調システムを導入した背景には、セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)が環境負荷の軽減を目的にグループ全体で掲げる環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」がある。同宣言では、2030年度までにグループ全体の店舗運営におけるCO2排出量を対13年度比で50%削減し、50年度までには実質ゼロにすることを目標としている。

 その一環として今回、イトーヨーカ堂、神戸大学、空調設備の研究や開発を行うユニテック(東京都)との3者で連携協定書を締結。産学連携による取り組みとしてイトーヨーカ堂の店舗におけるAIスマート空調システムの導入を進め、「GREEN CHALLENGE 2050」で掲げた目標の達成に寄与したい考えだ。

 イトーヨーカ堂の山本社長は「AIスマート空調システムは、我々がグループ全体で重要と位置付けている省エネ活動に大きく寄与するものだ」と今後の期待を語った。

 夏場のエネルギー消費量半減! 実証実験では大きな効果

 今回イトーヨーカ堂向けに導入したシステムでは、POSデータを活用し、曜日や時間帯ごとの売場の人流を解析できる機能などを新たに実装している。「AIでは、POSデータの分析に加えて、テナントや施設の特性を学習することもできる」と神戸大学の長廣剛特命教授は語った。

 イトーヨーカ堂では今回の本格導入に先立って、「イトーヨーカドー八王子店」(東京都八王子市)にて241月から7月にわたって、AIスマート空調システムを試験的に運用した。その結果、空調関連のエネルギー消費量が約40%減少し、CO2の排出量が136トン削減された。特にエネルギー消費量の多い夏場に創出される効果は大きく、同期間では56%の削減に成功した。

店舗内に設置されたカメラや温度計など

 八王子店での試験運用ではさらに、従業員のエネルギー消費に対する意識向上という副次的な効果も見られたという。

 同店の従業員からは「(システムの導入に伴って)従来と異なる視点からの温度管理に取り組んだことで、省エネ意識が高まった」「店舗における空調の仕組みやあり方について学ぶ機会になった」などといった声が寄せられた。

 計画どおり約70店舗への導入が完了すれば、「GREEN CHALLENGE 2050」で掲げた、2030年のCO2排出量削減目標に対して24年度以降に必要な削減量の4.2%にあたる、約2.2万トンの削減が見込まれている。

 同システムは当面、イトーヨーカ堂の店舗での導入を拡大していく方針。またシステムの仕様上、個別空調方式を採用している「ヨークマート」「ヨークフーズ」などへの導入は今のところ予定していないとしている。他方、イトーヨーカ堂各店で得られた成果については、グループ各社への情報共有も行っていくという。