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ライトオンがEC化率を2年で2.5倍の2ケタにするための秘策とは?

コロナ禍を契機として、リアル店舗が強かったジーンズセレクトショップ大手のライトオンも、EC化を加速させている。2021年現在で約4%のEC化率を、23年には二ケタまで拡大する計画だ。計画達成に向けて、EC限定のオリジナル商品の受注・予約販売といった、独自性の高いMDを打ち出す。並行して、ECで注文した商品の店頭受取りといった、リアル店舗とECを融合させるOMOOnline Merge Offline)で、経営資源を有効活用する。

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 茨城県つくば市を本拠地とする、ジーンズセレクトショップ大手のライトオンは、インターネットの浸透やコロナ禍での巣ごもり需要の急増を背景として、EC戦略を加速させている。

 同社は現在、全国で412店舗(2021年8月末時点)を展開している。出店立地が多岐にわたり、「とりわけ、郊外立地(ロードサイドなど)は、コロナ禍でも影響は少なかったようです」と、オムニチャネル部 ECチーム リーダーの大野一郎氏は明かす。また、もともとジーンズショップでデニムが主力であることから、フィッティングも重視されてきた。

 そのため、同社は、ほかのファッション専門店に比べて店舗数も多く、リアル店舗の売上比率が高いのが特徴となっている。ECをスタートしたのは、2013年11月なのだが、21年のEC化率はわずか4%にとどまっている。

 「しかし、リアル店舗だけではデジタルネイティブでこれから消費の中心を担うようになっていくZ世代を取り込みきれないと、社内で危機感が広がってきました。当社の主客層は30~40代なので、顧客層の若返りを進める必要があります。さらに、新型コロナウイルスの蔓延が転機となって、販売機会を確保するため、EC強化に会社として舵を切ることになりました」(大野氏)。

 EC戦略の柱となってきたのは、「ライトオンならでは」の独自性の強化と、強力なリアル店舗網とのシナジーを追求するOMOだ。

 独自性の強化では、自社サイトの育成に本腰を入れてきた。自社サイトを担当する企画運用チームは現在、主に「バナー特集」の作成や配信を行う特集作成チーム(社員3名+外部スタッフ)、いわゆる「ささげ」(ECの商品情報制作)を行うささげチーム(社員とアルバイト5名+外部スタッフ)で構成され、今後も戦略に応じて強化する予定だという。

受注生産販売を行ECは少数派

東京リベンジャーズとのコラボ商品

 18年までは売上拡大を最優先として、ECモールへの出店に力を注いできたため、ECに占める自社サイトの割合は約2割だった。しかし、19年からは「自社サイトファースト」を掲げて、ポイント提携していた楽天を除いてECモールへの出店を20年に再開するまでいったん休止、経営資源を自社サイトに集中した。その結果、自社サイトの売上高は現在約10億円、ECに占める割合は約60%まで高まっている。

 自社サイトでは、例えば、バナー特集を組んで、対象アイテムの訴求力をアップしているほか、ささげを内製化し、年代や嗜好に合わせて、商品の掲示方法を変えている。「商品のロケ撮影を増やしたところ、Z世代の購買率が上がるといった成功事例が出てきています」(同)。

 ECの利用を促進するため、買い上げ金額5,500円以上の送料無料を、21年9月からは3,980円以上に引き下げた。2011月からは、コロナ禍に対応するためもあって、東西の旗艦店2店舗で毎月各2回の「ライブコマース」にも乗り出し、新作の紹介などを行っている。

 自社サイトがメーンのオリジナル商品も拡充を予定している。中でも、特徴として打ち出しているのが、21年から始めたネット限定の受注生産販売だ。

 「発注済み商品の予約は各社実施されていますが、受注生産を手がけているECは少なく、お客さまが求めれられている商品を確実にお届けしたいという想いからです。また、商品の廃棄ロスが削減できるので、お客さまの支持も得やすいと考えています」(同)。

 例えば、「CAMP7(キャンプセブン)」といったPB(プライベートブランド)で予約販売サービスを行っているほか、7月には人気漫画ドラマ『東京リベンジャーズ』の実写映画公開に合わせて、コラボレーション商品の一部を、ウェブ限定で受注生産を行った。受注・予約販売の販売額は、20年が約5,000万円、21年が約1億円に急増する見込みで、「来期には1.5億円を目指したいですね」と、大野氏は意気込む。

店頭受取りの拡大でOMOを促進する

 一方で、OMOについては、リアル店舗とECを併用する「クロスユース」を促す。同社の顧客のうち、クロスユーザーは現在、78%に過ぎない。しかし、リアル店舗、もしくはEC単独のユーザーに比べて、「クロスユースのお客さまの買い上げ金額は、34倍にも達しています」(同)。

 クロスユーザーは、ネットで商品を調べてから、リアル店舗で実際の商品を確かめるといった購買行動を取るケースが多いが、それだけに購買率が高く、店舗へのロイヤリティも高いのだという。

 クロスユースを拡大する取り組みの一つとして、「ネイティブアプリケーション」(プロバイダー経由でなく、自社サイトに直接アクセスできる専用アプリ)のユーザーを増やしている。例えば、店頭でネイティブアプリを立ち上げ、QRコードを読み込めば、スタンプ(ポイント)を付与する仕組みを取り入れた。また、飲料メーカーや菓子メーカーとのコラボで、ネイティブアプリのユーザーにリアル店頭で商品をプレゼントするといった企画も実施している。ネイティブアプリのダウンロード数は、ダウンロードを強化した20年9月には約280万だったが、現在では400万を超えているという。

 もう一つの取り組みとして、試着方法を多様化し、利便性アップを図っている。デニムのボトムは、サイズ対応がキーとなり、試着へのニーズも根強い。そこで、ECユーザーに対しては、ネット上でお勧めのサイズを提案するフィッティングサービスのほか、サイズが合わなかったら無料返品可能な「試着便」のサービスを一部商品に導入している。

 さらに、「ネットで注文、リアル店頭で商品受取り」の利用促進を図る。リアル店舗への顧客の誘致、売場活性化にもつながるからだ。ECユーザーがリアル店頭で商品を試着してみて、満足できなかったら無料でキャンセルできるし、店頭でボトムの丈直し無料サービスも受けられるようにしている。「21年は、自社サイトで購入されたお客さまの約23%が店頭受取りを利用されたのですが、将来的には利用率を3040%まで高めたいですね」(同)。

 同社では、こうした取り組みによって、ECでも大手小売他社をキャッチアップしたい考えだ。「現在、3カ年計画に取り組んでいて、EC化率は22年には6%、23年には10%を目指しています」と、大野氏は力強く語った。

オムニチャネル部 ECチーム リーダーの大野一郎氏