2021年10月のフェイスブック(Facebook)による突然の社名変更の発表を皮切りに、世界的なブームとなった「メタバース」。なぜ、メタバースはここまで注目されるようになったのか。小売業にはどのような影響があるのか。法人向けにメタバース支援事業を行うメタバースの専門家、SynamonのCOO武井勇樹氏に解説してもらった。
メタバースブームの裏にFacebookの“焦り”
フェイスブックは2021年10月、社名を「メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms:以下、メタ)」に変更することを突如発表し、同時にメタバース事業に注力する方針を明らかにした。法人向けにメタバース支援事業を行うSynamonのCOO武井勇樹氏は、フェイスブックの大胆な路線変更の背景には2つの要因があると指摘する。
「1つめは、旧フェイスブックがApple(アップル)の『App Store』やGoogle(グーグル)の検索エンジンのような、“儲かるレイヤー”を押さえることができなかった点にある」
現状のメタの主力事業は、アップルやグーグルの経済圏に乗って展開しているものである。そこにアップルが広告掲載のプライバシー保護の強化に乗り出し、「Facebook」のターゲティング広告に必要なデータ供給が遮断されるなど、従来のビジネスモデルが揺らぎ始めている。グーグルもこの動きに追随する構えを見せており、不安定なビジネス基盤から脱却するためにも、メタバース事業では自分たちがインフラになろうと考えているのではないかというのだ。
「もう1つは、10代~20代前半の若者の“Facebook離れ”だ。次世代のコア消費者となるZ世代と呼ばれる若年層は、一日の大半をスマホゲーム内で過ごすといわれている」
Z世代は、米国では人口構成比の30%を占めており、彼らにしっかりリーチできる関係性を構築できなければ、今後のビジネス展開が難しくなる。Z世代が時間消費をするメタバース分野に積極参戦せざるを得ないという側面もあるのかもしれない。
メタの動きに呼応するように世界的なブランドもメタバースに関わり始めている。
たとえば、NIKE(ナイキ)はオンラインゲーミングプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」に、自社本社を模した「NIKELAND(ナイキランド)」を展開。21年12月にはデジタルスニーカーの制作を手がける「RTFKT(アーティファクト)」も買収した。ウォルマート(Walmart)も、
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。