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ビームス販売員に聞く「オンラインで売上を上げるコツ」

販売スタッフ2500人をオムニチャネル化 

「ウェブで商品を売る方法が分からない」「ライブ配信をできる人材がいない」などの悩みを抱える企業は少なくない。大手セレクトショップのビームス(東京都/設楽洋CEO)は、全国の販売員約2500人を“オムニチャネル化”し、オンライン売上を飛躍的に伸ばしている。なぜビームスの販売員は、オンライン接客に長けているのか。同社の「ウィメンズドレス」カテゴリーで2年連続トップのページビュー数を誇る「オムニスタイルコンサルタント」の隈元楓さんに、オンライン接客の秘訣を伺った。

対面もオンラインも、すべてを「接客」と捉える

コーディネイト提案のスタッフ投稿

 販売員の“オムニチャネル化”とは、販売スタッフがメディアとなり、公式サイトやYouTube、インスタグラム、ライブコマース を駆使して、自ら着用したコーディネートなどを提案することで、客とブランドがダイレクトにつながり、実店舗やECの集客につなげるというもの。

 ビームスが販売員のオムニチャネル化に動いたのは、20169月。コーポレートサイトとECサイトを統合して「BEAMS公式サイト」をリニューアルし、サイト内に、全国のスタッフが個人目線で文章を綴るブログや、実名と顔写真付きでファッションのコーディネート紹介をするスタイリングページといったスタッフ投稿の機能を持たせた。これにより、現在は、全国約2500名の販売員がそれぞれの裁量でコーディネート紹介などをするようになり、サイト内の回遊性が高まるだけでなく、来店や売上の増加につながっているという。

 「ウィメンズドレス」のカテゴリーで2年連続トップのページビュー(以下PV)数を誇るデジタル部オムニスタイル課スタイルコンサルタントチーム所属の隈元楓さんは、「ECやライブコマースなど、あらゆるコンテンツをすべて”接客”と捉えて販促活動を行なっています」と話す。

 隈元さんはこれまで新宿、二子玉川、六本木の店舗で販売員としてのキャリアを構築。2016年からスタッフ投稿を始め、PV数を継続的に稼ぐ能力が買われて、「オムニスタイルコンサルタント」に抜擢された。

 オムニスタイルコンサルタントの発足は2020年5。当初は店舗スタッフと兼任の10名を含む11名のメンバーでスタート。隈元さんもそのうちの一人だった。マネジメントを担当するデジタル部オムニスタイル課 課長の橋本直久氏は、「対面接客とオンライン接客の両方で成果を出せる人は、実は稀なんです」と言う。だが、2021年9月の組織改編で、店舗、ECを管轄するカスタマーエンゲージメント本部内にオムニスタイル課を設立し、隈元さんら3名の専任スタッフを含む「オムニスタイルコンサルタント」を263名まで増員した。

メディア特性に沿ってキャラを変える

スタイリングページ投稿画像

 隈元さんの活動は多岐に渡る。スタッフ投稿、YouTube、インスタグラム、ライブコマースなどあらゆるチャネルで販売活動を行うことで、多くのファンを獲得してきた。

 「接客」と一口で言っても、実店舗、ECサイト、動画(ライブ配信)では、その方法が異なるそうだ。

 店舗では、客一人ひとりの要望に合わせてコーディネートを提案し、One to One接客を行う。ヒヤリング力が物をいい、客が求めるニーズにいかに的確に応えられるかがポイントとなる。

 ECサイトでは、販売員がモデルとなって商品を着用し、リアリティを持ってコーディネート提案を行う。スタッフ投稿と異なり「商品を紹介すること」が大前提なので、プライベートな投稿は控え目に。商品説明をわかりやすい文章で行うスキルが求められる。

 YouTubeやインスタグラムなどの動画配信は、ECサイトより販売員の人格が伝わりやすいという特性がある。そのため、自分の考えや個性、プライベート感を意識的に出すのがポイントだ。言葉づかいも、ややカジュアルな方が好まれる。人柄も込みで「隈元さんから買いたい」「隈元さんのコーディネートを真似したい」と販売員自体にファンがつくのがYouTubeやインスタグラムだという。

企画、撮影、編集も自分で。なんでもこなすオールラウンダー

撮影動画も自身で編集する

 隈元さんの強みは、その万能さにある。

 168cmの長身を生かしたコーディネート写真は、モデルさながらの華やかさがあるが、単に“映える”だけでなく、自身が担当する「Demi-Luxe BEAMS」の世界観を深く理解し、レーベルのファンが期待する情報を届けている。実はこれが、かなり重要。同社には、「Ray BEAMS」「BEAMS PLUS」など30種以上のレーベルがある。それぞれのレーベル担当者が世界観を正確に理解し客に伝える能力が、同社では問われている。

 また、トーク力にも優れている。学生時代に2年間、地元福岡のコミュニティラジオで週に一度1時間の生放送番組のラジオパーソナリティを務め、「5秒沈黙が続くと放送事故になる」とされるラジオ業界で瞬発力を鍛えたことで、ライブコマースで司会を任されるなどのチャンスに恵まれた。

 YouTubeでは、企画、撮影、編集まで一人で担い、近年は、若手の指導にも力を入れるようになった。持ち前のコミュニケーション力で、他部署のディレクターやバイヤー、プレススタッフと連携をとり、YouTubeでユニークな企画を展開できているのも隈元さんならではだろう。

販売員の実績を可視化しモチベーション向上へ

 いまや、何が“バズる”か、予想不可能な時代だ。隈元さんは「とにかくやってみることが大事」と話す。まずはブログを書いてみる。客や仲間からフィードバックをもらったら分析し、さらにブログを磨き上げていく。そうした作業の繰り返しでステップアップを図ってきた。

 オムニスタイル課 課長の橋本直久氏は、「情報は、量より質」と販売員に指導しているという。ここ数年で、SNSの投稿数が激増したのは良いことだが、その分、有益な情報が埋もれてしまうリスクもあるためだ。

 スキル向上のため、週に1度は、トップクラスのオムニスタイルコンサルタント(立ち上げ時の11名が参加している)を集めてミーティングを開く。評判がよかった投稿にはどのような特徴があるのか。実例を共有することで販売員のスキル向上を図っている。

 なお、販売員が投稿したコンテンツのPV、コンテンツを経由したECの売上、「お気に入り」の登録件数、フォロワーの増加数などのデータはすべて、社内用アプリケーションメニューから誰でも確認できるようにしている。実績をオープンにすることで、モチベーションを上げることが目的だ。

 一方で、隈元さんは、「数字を追いかけすぎないのも大切」と話す。フォロワー数やPV数などの数字にとらわれすぎると、「今月はフォロワーが増えなかった」「何が悪かったのだろう」などと落ち込んでしまい、本質からブレた投稿をしてしまうという。大切なのは、情報の質を上げることだ。「お客さまにとって有益な情報であれば、見てくださる方は必ずいるはずだと信じて、今後も接客に邁進したい」(隈元さん)。