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改装でロピア、アキダイとのトリプルネーム店舗に! スーパーバリュー等々力店の売場を解説

スーパーバリュー(埼玉県)は2023年7月、東京都世田谷区の「スーパーバリュー等々力店」(以下、等々力店)をリニューアルした。昨年にロピア(神奈川県)グループの子会社となり、既存店を“ロピアテイスト”をリニューアルすることで、競争力のテコ入れを図っている同社。今年に入ってからは東京ローカルのアキダイもロピアグループに入っており、今回の等々力店は、スーパーバリュー、ロピア、アキダイの3社による初のコラボ店舗となる。同店ではどのような売場づくりをしているのか。現地に足を運んだ。

スーパーバリュー等々力店の外観

改装でトリプルネーム店舗に!

 スーパーバリューが今回改装オープンした等々力店は、東急大井町線「等々力」駅から徒歩3分ほどの駅近立地にある。「等々力」駅周辺は、駅寄りに「まいばすけっと」、線路を挟んだ向かい側に「成城石井」があるくらいで、周辺競合はそれほど激しくない。近隣の食品スーパー業態としては、「等々力」駅の隣駅である「尾山台」駅と「上野毛」駅にそれぞれ「オオゼキ」が出店している。

 2022年にロピアを中核とするOICグループ(神奈川県 ※23年5月1日付で、ロピア・ホールディングスはOICグループに商号変更)傘下に入ったスーパーバリュー。以降、「スーパーバリュー越谷店」(埼玉県越谷市)、23年4月に「スーパーバリュー杉並高井戸店」(東京都世田谷区)を改装し、“ロピア流”の売場づくりを取り入れている。

 また、ロピアは今年3月に東京のローカルチェーンであるアキダイを買収している。社長の秋葉弘道氏がたびたびテレビ局のニュース番組などに登場することから「日本一有名なスーパー」とも言われるアキダイ。同社は以前より、ロピアと手を組み、「ユータカラヤ」や「ロピア」の一部店舗で青果部門を任されていた経緯がある。

 今回リニューアルした等々力店は、初めての「スーパーバリュー」「ロピア」「アキダイ」の“トリプルネーム店舗”となる。前述のとおり、ロピアグループに入ってからのスーパーバリューの改装店は、“ロピア流”の売場づくりを導入しているものの、店舗の目立つ場所に「ロピア」の屋号を掲げることはなかった。それに対し、等々力店は店名こそ「スーパーバリュー」としているものの、表通りのファサードに「スーパーバリュー」「アキダイ」「ロピア」の屋号を掲げ、コラボ店舗であることを強調しているのが印象的だった。

“アキダイ流”の青果売場

 ここからは主要部門の売場を見ていこう。

 入口トップの青果売場は正面にサイネージが設置され、お店の紹介とともにアキダイの“名物社長”がおすすめ商品を案内する映像で流されている。サイネージは店内にも設置されており、動画による案内はシズル感があり、購買意欲を高めている。

 商品構成、陳列展開はアキダイそのものであり、ロピアの青果部門の屋号である「八百物屋あづま」とはテイストが異なるようだ。双方ともに価格訴求が強いのは同じだが、「八百物屋あづま」は、たとえば果実などにおいて、同じアイテムでも産地違いや品種違いまで揃え、ラインロビング(特定のカテゴリーにおいて品揃えの専門性を高めることで、競合店との差別化を図ること)を狙った品揃えを展開することが多いのに対し、アキダイの場合は「梨ならこれ、桃ならこれ」と、自分たちの目利きを武器に、絞り込んだおすすめを売り込むのが特徴としている。

 ロピアと異なり、スーパーバリューの売場面積は狭いことが多いため、アイテムごとの陳列スペースに制約がある。果物の種類は豊富で、品揃えの幅があるが、割り切ってラインロビングはしておらず、奥深さはない。商品を選ぶ楽しさよりも、物の良さで衝動買いを促すのが特徴と言えるだろう。とはいえ調査日は、プラム系の果実を5種揃えており、しかもすべての商品を398円という統一した価格に設定しているなど、品揃えにメリハリをつけていた。また、店内ではカゴ盛りにした桃と梨を対面販売し、賑わいを意識した売り方を行っていたのも目を引いた。

「アキダイスタイル」は拡大可能か

 野菜はベーシックアイテムが中心であり、カット野菜も顔見せ程度で素材型の品揃えが中心となっている。購買頻度の高いAランクアイテム(キャベツ78円、レタス88円、小松菜68円など)を2ケタ売価で提供し、割安感を訴求しながら、売場全体に分散して陳列していたのが特徴的だった。また、目玉商品としてエノキ3袋100円や白ナス2本100円(写真)などを差し込み、衝動買いを狙っている。

 このように、店内をくまなく回遊してもらい、買上点数の増大を狙う売場づくりがポイントといえる。調査日は店内に3名のスタッフがおり、テキパキと仕事をこなしていた。その日に仕入れたものをその日に売り尽くす販売スタイルであり、商品化も簡素化されたものが多く、価格設定も柔軟に変更が行われていた。こうした販売スタイルの場合、現場は即断即決が求められる。これが青果部門の醍醐味ともいえるが、仕入れの在庫状況や販売動向を常に気に払う必要があり、このノウハウを一朝一夕で身に付けるのは難しい。

 今後、ロピアの店舗でもアキダイスタイルの青果売場を拡大するのであれば、「売り切り御免」の販売スタイルを確立する人材育成が不可欠となってくる。そのため、これに合わせた急激な店舗拡大には対応できないのではないかと懸念される。

 また、売り切り御免の売場づくりは、ロピアのような売場面積の広いチェーンで実現するのは現実的とは言えない。毎日売場を変更し、売り切りを行っていたら、現場に多くの人員を割く必要が出てくる。そうした面を考えると、アキダイに期待されているロピア内での役割は、青果全般の売場づくりというよりも、強みを生かした部分的な対応になってくるのではないだろうか。

 日々の買い物の中で必ずお買い得品があり、目的来店を高めるにはアキダイのやり方は理にかなっている。スーパーバリューの小型店にある青果部門においてはアキダイの拡大余地が大きいと言える。

 後編では、鮮魚、精肉、総菜の売場を解説していく。