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島忠と融合!ニトリホームズ宮原店売場づくり徹底解説 ニトリが次にねらうのは家電チェーンか?

ニトリホールディングス(北海道/白井俊之社長)は6月11日、埼玉県さいたま市にニトリと島忠(埼玉県)の初の融合店舗、「ニトリホームズ宮原店」をオープンした。似鳥昭雄会長が「日本初の本格的な住生活総合提案型の専門店」と胸を張る、「ニトリホームズ」1号店のできばえと商品政策(MD)、今後の成長戦略はいかなるものか?

6月11日にオープンしたニトリホームズ宮原店

3600坪の巨艦ニトリホームズ誕生

 屋号「ニトリホームズ」は、家具とホームファッションの専門店「ニトリ」と島忠の家具とホームセンターを取り扱う「ホームズ」の2つを合わせたもの。島忠出身でニトリホールディングス副社長で島忠会長の須藤文弘氏は「ニトリとホームズの“いいとこどり”の店」と評する。

 1号店となった宮原店は、元々島忠のホームズ宮原店をリニューアルしたものだ。1Fが1809坪、2Fが1780坪の大型店で、1Fにはオーケー、2Fにはファッションセンターしまむらがともに各フロアの約1/3の広さでテナントとして入居する。

 テナント以外のフロア構成は、1Fがホームセンターとホームファッション、2Fが家具とホームファッションとなっている。

 ホームセンターゾーンは従来島忠としては2000坪が最大パターンだったのでほぼそれに準ずる規模、家具とホームファッションも、ニトリとしては最大店舗と同じ品揃えを導入した。

 品揃えはトータルで6万3820アイテムでうちホームセンターが4万9000アイテム、ホームファッションが1万2820アイテム、家具2000アイテムとなっている。このうち家具はニトリの商品が50%の1000アイテムで、ホームファッションは9割超の1万2000アイテムがニトリ商品となっている。

 

ニトリのPBと島忠のNBを掛け合わせ!

約100台を揃えるベッドマットレスは、低価格帯の約50台をニトリPBに変更した

「ニトリホームズ」の最大の特徴として須藤副社長は「プライベートブランド(PB)主体のニトリとナショナルブランド(主体)の島忠。双方の品揃えを合わせ、たとえば家具であれば低価格帯から従来のニトリにはなかった高価格帯まで1つの店で揃う店ができあがった」と語る。

ニトリホールディングス副社長で島忠会長の須藤文弘氏

 その一例が約100台を揃えるベッドマットレスだ。約半分の50台がニトリのPBで残りが島忠の仕入れ商品。5万円以下のものをニトリのPBに変更した。これにより従来と価格帯は変わらないものの、ニトリPB独自の機能性があるコストパフォーマンスに優れる商品が売場に並んだ。同時に、従来低価格帯のマットレスは粗利益率が低かったが、ニトリPBを導入することで、部門全体の収益性も改善した。その一方、シモンズやフランスベッド、エアウィーブなどの10万円以上の価格帯の商品も従来どおり品揃えしている。

 また家具売場では、ニトリ商品でコーディネートして展開する「ニトリスタジオ」をベッドとソファ売場に導入したほか、ニトリと島忠それぞれのMDでルーム演出したコーナー、さらにはニトリと島忠双方の商品でルーム演出したコーナーを導入するなど、双方の品揃えをまさに融合させた売場を随所で展開。従来のニトリにはない高価格帯のブランド家具があり、従来島忠にはない高コストパフォーマンスの家具がある。これは既存ニトリにもない売場だ。

 将来的にはたとえば、既存ニトリ業態のドミナントの真ん中に今回のニトリホームズ業態を配置しても面白いかもしれない。

キッチン・ダイニング用品のニトリ化が示すものとは

1Fホームセンターゾーンのキッチンダイニング用品は「ニトリ」の商品、売場演出

 次に1Fのホームセンター売場をみていきたい。同売場では品揃えを絞り込み、すっきりと探しやすい売場にしているのが印象的だ。プロ向けの品揃えもほぼなく、一般生活者を明確にターゲットとしている。

 「ニトリ」傘下になった強みを売場で最も感じられるのが、お皿やコップなどのキッチン・ダイニング用品売場だ。はっきり言えば「ほとんどニトリ」のMDなのだが、すっきりとトータルコーディネート提案されて価格帯も絞られており、見やすく・選びやすく・買いやすい。キッチン・ダイニング用品売場を仕入れ商品ベースで独自化できているホームセンターを筆者はほとんどみたことがない(※筆者は過去、約7年にわたってダイヤモンド・ホームセンター誌の編集長をしてきた)。であればPBを軸にトータルコーディネートを提案するのが最良の策と言えるだろう。

 ホームセンター業界はPB商品の開発競争が激化中だ。ねらいは低価格訴求とコーディネート提案。NB主体の島忠はPB開発が極めて遅れていたため、都心部の好立地を抑えながらもそこが最大の弱みというか伸びしろの少なさであった。今回、ニトリ商品によって、島忠のHCゾーンの魅力も改めて高まった印象だ。

 家電売場も最近のHC企業と同様強化されているが、ニトリのPB家電がメーンとなっている。最近テレビCMを流しているエアコンをはじめ、洗濯機、冷蔵庫などでもPBが並ぶ。


似鳥会長「機会があれば、家電の提携・買収も」

家電コーナーではニトリPBの白物家電を軸に売場をつくる

 家電といえば気になるのが似鳥会長の発言だ。ニトリホームズには家電の専門店がテナントとして入っておらず、館全体としては家電の品揃えに弱みがあるとみているようだった。そこで似鳥会長に家電強化の方向性を尋ねたところ、「基本はテナントを誘致していくが、もし機会があれば異業種との提携や合併なども考えていきたい」と語ったのだ。

 異業種のヤマダホールディングスは家電から始まり、リフォーム、家具へとその守備範囲を広げていったように、ニトリは家具・ホームファッションから始まり、今回の島忠との融合でHC商材、リフォームへとそのラインロビングを広げ、その広げる先には本格的な家電売場があることを示したものだ。その双方のねらいは「住生活総合提案型の専門店」が消費者にとって抜群に利便性が高いからに他ならないだろう。

 すでにニトリは家電商品のPBを展開しているが、これはあくまでも単身者向け。単身者が家具を揃えるときに一緒に新生活に必要な家電を一通り揃えられるという利便性の高さに目をつけたものだ。

ニトリホールディングス似鳥昭雄会長(会見時は報道の撮影用に一時的にマスクを外しただけです)

 しかし、似鳥会長は会見で2度までも「住生活総合提案型の専門店」という言葉を使って、ニトリホームズを先鞭にニトリが進んでいく姿を明示した。

 HCも家具も家電も今後大きな成長が見込める市場ではないが、それらをワンストップで取り揃えた店舗や企業体がそのなかで優位性を高めていくことは想像に難くない。今後のニトリの成長戦略から目を離すことはできなそうだ。

 なお、ニトリホームズはまず、1号店で改善を繰り返しながら、既存島忠・ホームズ店舗を順次改装、4~5年後くらいをめどに新規出店していきたい考えだ。