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店舗レポート スーパーセンターオークワ掛川店にみるPBと総菜による差別化策

オークワ掛川店 外観

スーパーセンターオークワ 掛川店

〒436-0222 静岡県掛川市下垂木1874-2
電話:0537-23-0011
天竜浜名湖鉄道「桜木」駅より徒歩約15分

オークワ(和歌山県/神吉康成社長)は9月4日、静岡県掛川市に「スーパーセンターオークワ掛川店」(以下、掛川店)をオープンした。静岡県では2店舗目の出店で、同社のなかでは最も東側に位置する店舗である。オークワの認知度がまだそれほど高くない静岡県で、同社は総菜やプライベートブランド(PB)などを中心とする独自商品で他社と差別化を図る考えだ。

SuC業態としては静岡県初の店舗

津田悟店長
「静岡の方にもオークワを知っていただけるように、こだわりの商品を積極的に提案します」

 掛川店は、天竜浜名湖鉄道「桜木」駅から徒歩約15分の場所に立地する。「パレマルシェ 新所原店」(静岡県湖西市)に続き、静岡県内への出店としては2店舗目だが、スーパーセンター(SuC)業態、そして「オークワ」の名を冠した店舗としては掛川店が初となる。

 基本商圏となる半径3㎞圏内には1万1540世帯/3万1500人が居住している。とくに店舗から半径2㎞圏内の世帯平均人数は2.87人で、静岡県全体の平均よりも0.28人多いのが特徴だ。また、「掛川」駅周辺の資生堂やNECの大規模工場に勤める単身の従業員も多く住んでおり、5㎞以上の広域商圏では単身世帯の数も増えている。競合店としては、「スーパーマーケットバロー掛川店」や、8月に「アピタ掛川店」から業態転換したばかりの「MEGAドン・キホーテUNY掛川店」のほか複数の店舗があり、競争は激しい。

 掛川店の店舗レイアウトは、出入口を基準に右側が食品、左側が非食品売場となっている。オークワにとっては静岡県では初めてのSuC業態の出店であることから、奇をてらわず既存のSuCフォーマットを踏襲した。非食品売場では、近年大型店舗で導入を進めている100円ショップの「ダイソー」を展開。オークワがフランチャイジーとなって運営しているため専用のレジは置かず、直営部分のほかの商品と同様にダイソーの商品にもオークワのポイントが付くようになっている。そのほか、既存店でも導入を進めている直営の化粧品・医薬品専門店「サフランショップ」も展開している。

新たな3種類のPBを積極的に提案

 食品については、静岡県でまだオークワの認知度が高くないこともあり、「まず静岡の人にオークワのいいところ、いい商品を知ってもらいたい」(津田悟店長)という考えから、地場の商品を一部取り入れながらも主要商勢圏である関西の店舗と大きく品揃えを変えることはしていない。PBや総菜を中心とした自社の独自商品を積極的に提案し、顧客の支持を獲得したい考えだ。

 とくに売場で目立つのは、2020年3月から展開している3種類の新たなPBだ。「オークワプレミアム」は産地や素材・製法においてこだわり抜いた商品で、現在49SKUを展開。「オークワマルシェ」は各部門のバイヤーがおすすめするブランドで、現在44SKUを取り扱う。「オークワセレクト」はオークワとメーカーが共同開発した商品で、現在は酒類の3SKUのみ販売。これら3ブランドに加え、総菜では自社総菜工場の「オーデリカファクトリー」で製造したブランド「O-SOZAi」214SKUも展開している。

 競合店と差別化を図るうえで、掛川店でとくに強化したのは総菜だ。店舗に入ってすぐの場所にある総菜売場では、同規模の既存店と比較してアイテム数を約1.5倍に拡大した350アイテムを展開している。店内製造したおにぎりや、「満足のり弁当(白身フライ)」(398円:以下、税抜)のような「のっけ盛り」タイプの弁当を拡充した。そのほか、オークワマルシェの「三元豚のかつ重」(450円)やオークワプレミアムの「紀の国みかんどり使用 塩から揚げ」(100g当たり158円)など、産地や製法などにこだわった店内製造のPB商品や、前述の自社総菜工場で製造した「O-SOZAi」を売場各所に差し込んでいる。

 総菜売場に隣接するベーカリー売場でも、自社の独自商品を多く取り扱っている。オークワプレミアムの「葉とらず林檎のアップルパイ」(498円)は、栽培過程で葉をとらないことで糖度を高める「葉とらず栽培」で育った青森県産のりんごを使用しているのが特徴だ。そのほか、イタリア伝統の「フォカッチャ」や「チャバッタ」といった珍しいパンも品揃えしている。

コロナ禍に対応した個食商品も展開

 農産売場では、山形県鶴岡市伝統の枝豆である「だだちゃ豆」などのPB商品を売場各所に展開するほか、単身世帯や高齢者にも買いやすい少量サイズの商品やカットサラダを充実させた。とくにカットサラダは年間を通して一定の金額で仕入れているため相場の変動を受けにくく、他店舗でも売場を広げているという。

 オークワの“看板部門”である水産売場では、オークワプレミアムの「Mowi (モウイ)サーモン」などのこだわり商品を取り扱うほか、刺身や寿司を強化した。とくに最近はコロナ禍で家族で1つの大皿から取り分けるスタイルが敬遠される傾向にあるため、2~3人前の大容量商品ではなく、1人前の商品を多く取り扱っている。水産部門における刺身・寿司の売上高構成比は年々高まっており、掛川店では約30%まで高める考えだ。

 刺身・寿司を強化する一方、対面加工コーナーも設け、産直の丸魚など鮮度感のある商品も充実させている。「新鮮な丸魚を取り扱うのは、売場全体で鮮度の高さをアピールするためのイメージ戦略でもある。鮮度の高い丸魚があるからこそ、刺身・寿司の鮮度に対する信頼も得やすい」(水産部門担当者)。

 畜産売場では、店内製造のローストビーフなど、酒のおつまみになるような商品を充実させたほか、ファミリー層向けに大容量の商品を増やしている。また、近年は健康志向の高まりから「大豆ミート」のような植物性の代替肉の売上が伸長しており、掛川店でもコーナー化した。そのほか、コロナ禍の影響で個食需要が高まっていることから、秋以降は1人前の鍋セットを強化する考えだ。

 これまで見てきたように、掛川店ではPBや総菜を中心とする独自商品を積極的に提案するほか、一部の売場ではコロナ禍で生まれた新たな需要への対応も見られる。また、掛川店ではオープン時こそ有人レジを使用していたものの、通常は完全セルフレジとセミセルフレジのみの対応となり、今後の新規出店や改装の際は従来型の有人レジは導入しない方針だ。これもコロナ禍で人との接触をできるだけ避けたいというニーズに応えたものといえる。

 現在、和歌山県や奈良県を中心に1府7県で店舗を展開するオークワ。今後の静岡県内への出店は未定だが、「配送拠点の立地上の問題から、掛川店より東部での出店の可能性は低い」(広報担当者)とのことで、静岡県西部で徐々に店舗数を増やしてドミナントを構築し、静岡県での売上アップをめざしたい考えだ。

売場フォーカス

アイテム数を約1.5倍に拡大した総菜売場

掛川店では競合店との差別化を図るため、同規模の店舗と比較して総菜のアイテム数を約1.5倍に拡大。手づくりのおにぎりや「のっけ盛り」タイプの弁当の品揃えを増やした

新たなPBを積極的に導入

20年3月から「オークワプレミアム」「オークワマルシェ」「オークワセレクト」の3種類のPBを展開し始めたオークワ。掛川店ではこれらPBを各売場で積極的に導入している

産地や製法にこだわった総菜

総菜売場では、オークワマルシェの「三元豚のかつ重」(450円)やオークワプレミアムの「紀の国みかんどり使用塩から揚げ」(100g当たり158円)など、産地や製法などにこだわった商品を売場各所に差し込んでいる

イタリアの伝統パンも販売

ベーカリー売場ではこだわりのPBのほか、イタリア伝統の「フォカッチャ」や「チャバッタ」といった珍しいパンも品揃えしている

少量サイズの使い切り野菜

農産売場では、単身者や高齢者向けに少量サイズの野菜の品揃えを強化している

「大豆ミート」コーナー

オークワでは近年、健康志向の高まりから「大豆ミート」などの植物性の代替肉の売上が伸長している

“看板部門”の水産売場

オークワの“看板部門”である水産売場では、産直の新鮮な丸魚で鮮度を訴求するほか、刺身や寿司ではコロナ禍への対応として1人前の商品を増やした

フランチャイジーとして運営する「ダイソー」

オークワでは近年、大型の店舗では自社がフランチャイジーとなって100円ショップの「ダイソー」を運営しており、導入店舗では客数が伸長している

「サフランショップ」

非食品売場では、化粧品や医薬品を販売する直営の専門店「サフランショップ」を導入している

レイアウト

店舗概要

オープン日 2020年9月4日
店長 津田悟
営業時間 9:00~21:30
売場面積 4936㎡(直営部分)
アイテム数 約5万4000アイテム(うち食品約1万700アイテム)
従業員数 正社員24人、パート・アルバイト76人(8時間換算)
駐車台数 378台
年商目標 22億円