メニュー

業界の風穴あけた「セブン冷凍食品」はいかに売場を広げていったのか

コンビニで手軽に買える冷凍食品。各コンビニチェーンは新たな商品開発と売場の拡充を急いでいる。このジャンルで先行したセブンイレブンだ。同社が切り開いたコンビニに適した新たな冷凍食品とはどのようなものだったのか。流通ジャーナリスト梅澤聡氏の「コンビニチェーン進化史」から一部を編集してお届けする。

各コンビニチェーンで商品開発がすすむ冷凍食品。いかにコンビニ仕様にするかが重要だ

「冷凍食品」が新たな武器になる

 従来のコンビニの冷凍食品といえば、翌日の子どもの弁当用に、母親が前の晩に冷蔵庫におかずがないことに気がついて、急きょ買い求めるといった用途であった。そのコンビニの冷凍食品に風穴を開けたのは、2009年にセブンイレブンが発売した焼き餃子と焼売である。その前年、中国産冷凍餃子中毒事件が起き、その影響から冷凍食品全般が売上を落としていた。

 そもそも冷凍食品市場は、火曜日、水曜日、5割引きと いったスーパーマーケットの売場で育ってきたものだ。 コンビニの売場から冷凍食品がほぼなくなり始めたころに、あえて一人用の焼き餃子と 焼売を発売した。すると単身者や高齢者が増えてくる中で、これら個食用の冷凍食品が大ヒットした。コンビニは、個食用の商品に強かったものの、冷凍食品メーカーは個食用に力を入れておらず、売場も対応してこなかった。

 その後、かつてはアイスクリームだけの品揃えであった冷凍平ケースには、挽きたてアイスコーヒー用の氷入りカップや、冷凍食品を入れることで、年間を通して効率的な売場に変えてきた。

 その流れが現在まで続き、コンビニ冷凍食品の市場が徐々に拡大して、セブンイレブンの場合は新レイアウトによって品揃えの充実を図っている。2019年春に執行役員商品本部長に就任した高橋広隆は、「売場を拡大したのだから冷凍食品の売上が上がりました、 という考え方をしていない。新しい可能性、新しいハードを(チェーン本部から)もらったのだから、そこに入れるソフトこそが一番重要なのだと認識している」と、新たなヒット商品の開発に勤しんでいる。

購入はこちらから(Amazonへ遷移します)

 コンビニらしいセブンイレブンの冷凍食品は、18年秋に開発した「おかづまみ」シリーズだ。「手羽中唐揚げ」「甘辛だれの牛ホルモン焼」「チーズタッカルビ」といった1 〜2人用のおかずにもなるし、酒のつまみにもなる商品である。肉類以外にも「なすの揚げびたし」「海老と野菜のアヒージョ風」など、野菜や魚介を拡充している。

課題は夕夜間の需要をいかにつかむか

 さらに19年には「きょうのおかず」シリーズとして「炭火で焼いた牛カルビ焼」「豚の生姜焼き」 「海老チリソース」を投入している。 冷凍食品と並び、カウンターフーズにおいても、おやつやスナックだけではなく、「惣菜」をいっそう強化している。おやつやスナックは、若者や学生の間食需要を満たしているので、これはこれで重点商品だが、セブンイレブンは特に食卓に上がる惣菜をカウンターフーズとして充実させている。

 コンビニは、早朝および昼の需要については、立地の優位を活かして取り込んでいける。 課題は消費者が、比較的時間をかけて買物ができる夕夜間にある。その時間に競合チェーンのみならず、ドラッグストアやスーパーマーケットといった店舗で買物をするのではなく、いかにコンビニに足を向けてもらうかが問われてくる。そうした戦略の一環に、冷凍食品やカウンターフーズの拡充があるのだ。