沖縄県で直営の食品スーパー(SM)や総合スーパー(GMS)のほか、フランチャイズ(FC)としてコンビニエンスストアやドラッグストア、外食チェーンや家電量販店の運営も行うサンエー(上地哲誠社長)。そんな同社が2020年2月期に事業計画の中心に据えたのが、19年6月にオープンした「サンエー浦添西海岸PARCO CITY」(沖縄県浦添市:以下、サンエーパルコシティ)だ。本記事では、サンエーが館内で展開する食品売場を中心に解説する。
※文中の価格は本体価格で2019年11月28日取材時のもの
地元住民と観光客の両方を集客するテナント構成
サンエーパルコシティがオープンしたのは19年6月27日。那覇空港からクルマで15分ほど離れた海沿いの好立地に開業した。百貨店大手のJ. フロント リテイリング(東京都/山本良一社長)傘下でファッションビルを運営するパルコ(東京都/牧山浩三社長)とサンエーの合弁会社であるサンエーパルコ(沖縄県/上地文勝社長)が運営している。地上6階建てで、店舗部分は1~3階。店舗面積は約6万㎡で県内の商業施設としては最大規模を誇る。
サンエーパルコシティでは、館全体で地元住民、日本人観光客、外国人観光客のすべてを取り込むべく、普段使いからハレの日まで多様なニーズに応えるテナント構成となっている。できるだけ広域から地元住民の集客を図るため、全250店舗中94店舗が沖縄初出店のテナントとなっているほか、VR体験施設や「4DX」「IMAX」「SCREEN X」などの最新設備を導入した映画館などのエンターテインメント施設にも力を入れている。また、国内外の観光客に対しては、沖縄や日本各地のグルメが楽しめる飲食店や伝統工芸品を購入できるショップなど、沖縄らしさ・日本らしさが感じられる数多くの店舗を誘致した。
成城石井コーナーをサンエー最大規模で展開
このように、館全体で「全方位型」の施策を講じるなか、1階にあるサンエー直営の食品売場はどのような売場づくりを行っているのか。まず特筆すべきはその大きさだ。サンエーパルコシティの食品売場の売場面積は約1000坪で、食品売場単体ではサンエー全店で最大規模の広さとなっている。
商品政策(MD)としては、サンエーの既存店とは一線を画したワンランク上の商品の品揃えの強化に注力している。
前述したように、サンエーパルコシティは地元住民や国内外の観光客を集客するため、幅広いニーズに対応した商業施設となっている。そのため、食品売場でも既存店で取り扱っている普段使いの商品だけでなく、ワインやウイスキーなどの酒類を中心にちょっとした贅沢を楽しむための商品や、観光客を対象とした土産商品などの品揃えを強化している。
また特徴的な売場として、出入口そばで、成城石井(神奈川県/原昭彦社長)の商品を集積したコーナーを設けた。サンエーは成城石井の親会社であるローソン(東京都/竹増貞信社長)のFC運営を手掛けていることもあり、16年から成城石井の商品の販売を開始した。現在ではサンエーと沖縄県内で展開するローソンの全店で導入しているが、サンエーパルコシティの食品売場ではそれらのなかでも約30坪という広さを確保。約800SKUを取り扱い、ワインやチーズ、ハム、ゼリーなどのほか、菓子や紅茶では成城石井のプライベートブランド(PB)も品揃えしている。
沖縄限定の「ローソンセレクト」
もちろん、高質の商品だけでなく、これまで地域住民に支持されてきた地元商品も品揃えしている。サンエーパルコシティでは県産品も既存店と同程度取り扱っており、その割合は全体の約3割を占めている。精肉売場では沖縄県のブランド豚である「あぐー豚」やラフテー、青果売場では県産のモロヘイヤや山東菜、日配品売場では沖縄そばの麺など、各売場に地元商品が差し込まれている。
地元商品でとくに売れ行きがよいのが、ローソンのPB「ローソンセレクト」の沖縄限定商品だ。前述したように、サンエーはローソンのFC運営を行っており、12年からはローソンのPBをサンエーの店舗でも販売し始めた。13年からは沖縄県内のメーカーと共同開発した限定商品の販売を開始し、現在は約50アイテムをサンエー・ローソンの各店舗で販売している。
海藻の一種で味噌汁の具材などに使われる「沖縄産あおさ」(198円)や、温めてご飯にかけるだけの「タコライス」(179円、2食分)、味噌を豚のラードで炒めたもので、おにぎりの具材などに使われる「あぐー豚入りあんだんすー」(198円)など、沖縄県を代表する食材や料理を中心としたラインアップとなっている。
総菜売場では精肉部門・鮮魚部門が開発した商品を集積!
そのほか、食品売場でとくに力を入れたのは総菜だ。サンエーでは、既存店で精肉・鮮魚の両部門が開発した総菜をそれぞれの売場で販売していたが、サンエーパルコシティでは「ミートデリ」「フィッシュデリ」として肉総菜・魚総菜を集積し、総菜売場で展開している。総菜売場と連動させる形で販売することによりお客が買い回りしやすいようになったことで、既存店よりも売れ行きがよいという。
また、サンエーの総菜売場としては全店で初めてオープンキッチンを採用。製造過程をお客に見えるようにすることで安全・安心を訴求している。また、沖縄料理は「結丸(ゆいまる)」、中華料理は「燦彩(さんさい)ダイニング」のようにカテゴリーごとに屋号を掲げることで専門性を打ち出しているのも特徴だ。
このような取り組みにより、サンエーパルコシティの食品売場における総菜の売上高構成比は既存店よりも2%ほど高くなっているという。
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サンエーパルコシティの周辺では、25年に返還予定の米軍基地「キャンプキンザー」が住宅地として再開発される予定だ。また、そのすぐそばではリゾート開発が進められるなど、商圏内で地元住民・観光客両方の増加が見込まれている。このような恵まれた事業環境のなか、サンエー直営の食品売場では一つ一つの商品や売場づくりの検証を進め、適正化をさらに進めていく考えだ。
「ダイヤモンド・チェーンストア」2020年2月1日号では、サンエー浦添西海岸PARCO CITYの詳細をレポートする予定です。お楽しみに!