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「食べづらいサンドイッチ」を食べてわかった!  スーパーの総菜にあと1つだけ足りないこと

宮崎のローカルスーパーが開発したサンドイッチが大きな注目を集めている。「食べづらいサンドイッチ」という奇妙な名前のついた商品だが、SNSで話題となっているほか、複数のメディアも報じるほどの人気ぶりを見せている。早速現地で食べてみると、意外にも、食品スーパーの総菜に不足しているものが見えてきた。

 宮崎のローカルスーパーで大人気!「食べづらいサンドイッチ」

 九州・宮崎。小売業界においては、さして大きな注目を浴びるようなマーケットではないかもしれない。しかし、飛ぶ鳥を落とす勢いで店舗網を広げているドラッグストア大手のコスモス薬品(福岡県)は宮崎県北部の延岡市が創業の地。2005年までは宮崎市に本社を置いていたことは意外と知られていない。

 さて、本題はここから。その宮崎で今、とあるローカルスーパーで売られているサンドイッチが、にわかに注目を集めている。その名も、「食べづらいサンドイッチ」。インスタグラムやツイッターなどSNSで話題となり、メディアでも報じられるほどだ。

 同商品を販売するのは、宮崎県内で「ながの屋」「うめこうじ」の2つの屋号で10店舗の食品スーパーを展開する永野(永野雄太社長)。何か惹かれるものがあり、宮崎に飛んでみた。

宮崎県佐土原町にある「食の森うめこうじ 佐土原本店」

 訪れたのは、宮崎空港からクルマでおよそ30分、宮崎市のお隣・佐土原町にある「食の森うめこうじ 佐土原本店」だ。JR日豊本線「佐土原」駅からも徒歩圏内である。

 早速、総菜売場をめざして歩いていくと、「食べづらいサンドイッチ」はすぐに見つかった。冷蔵ケース3段を使ってコーナー展開されており、周囲の商品と比べても明らかに異彩を放っている。

これが話題の「食べづらいサンドイッチ」。野菜がはちきれんばかりに詰まっている

 写真を見ていただければわかるとおり、たしかに「食べにくそう」だ。レタス、紫キャベツ、人参の細切り、トマトがぎっしりと詰まっており、真ん中に目玉焼きが所在なげに挟まれている。とてつもないボリュームの野菜類がとにかく主張してくる。実はハムも1枚挟まっているのに気づいたのは、食べ進めた後のことだった。

 訪店時、佐土原本店の売場に並んでいたのは、「目玉焼き」のサンドイッチのみで、「辛子入り」と「辛子なし」の2タイプが2切れ(本体価格350円)と1切れ(同180円)のパックで売られていた。その後に訪れた「ナガノヤ芳士店」(宮崎市)では目玉焼きのほかに「白身魚フライ(タルタルソース)」も販売していたので、時間帯・店舗によっていくつか種類があるようだ。

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食べてわかったヒットの理由

食べてわかった!ヒットの理由

 

食べると具材がこぼれてしまう。確かに食べにくいが、しかし美味しいのだ

 いざ実食。予想していたとおり、やはり食べにくい。押しつぶしても野菜が溢れてきてしまうので、とにかく口をあんぐりと開けて突っ込んでいくしかない。しかしその煩わしさは、噛みしめるごとに口の中に広がる野菜のみずみずしさによってかき消されていく。それだけだと淡白になってしまうところ、ハムの塩気と辛子ソースのピリッとした刺激が加わることで、意外と食べ飽きることがない。これで1切れ180円であれば、コストパフォーマンスはかなり高いと感じた。

 味と値段以外にも、食べづらいサンドイッチがヒットした理由はいくつか考えられる。

 まずは商品の見た目。「インスタ映え」はすでに死語になりつつあるようだが、実際にインスタグラムで検索をかけてみると、食べづらいサンドイッチの写真がいくつもアップされている。サンドイッチやハンバーガー、ケーキなどを切り分けた際の断面に“萌える”という「断面図マニア」なる勢力も存在し、そうした人々の間でも話題となっているようだ。

 さらに、「ギルトフリー」である点も1つのポイントだろう。ギルトフリーとは、「罪悪感を持たずに食べられる、かつ食欲をしっかりと満たせる商品」を指すもの。昨今、一部の食品スーパーでも「ギルトフリー」を謳った弁当などが販売されている。そこへいくと、野菜のボリュームたっぷりの「食べづらいサンドイッチ」はまさにギルトフリー。健康志向の高まりとともに、性別・年齢を問わずに野菜の摂取量を意識する人も多く、そういった需要も取り込んでいると考えられる。

 

スーパーの総菜にもネーミングセンスが問われる!

スーパーの総菜にもネーミングセンスの良さが問われる。写真は同じくウメコウジで売られていた「チキン南蛮(間違いなし)」

 しかし、ヒットの根源はネーミングにあるとも感じた。たとえばこの商品、「たっぷり野菜のサンドイッチ」という平々凡々な商品名であったら、ここまで話題を集めることはなかったのではないか。「食べづらい」というネガティブな要素をあえて前面に出すことでお客の目を引き、「確かに食べづらいけど、見た目もいいし美味しい」という、この商品ならではの”食体験”を見事に表現している。

 考えてみれば、外食やコンビニに比べると、食品スーパーが独自開発した商品が、メディアでも報じられるほど大きな話題を集める機会は決して多くない。毎週のように新商品が投入されているのにもかかわらず、だ。もちろん、味のよさは大前提。見た目も重要だ。ここまでは多くの食品スーパーもこだわっている。しかし、そこに「ネーミングセンス」のよさが加わると、より爆発力のある商品が生まれるのではないだろうか。

 南国・宮崎の暖かな日差しのもと、サンドイッチの具材をボロボロとこぼしながら、そんなことを考えた。