セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)が、「コンビニでもない、スーパーでもない、新たな形のフードショップ」という新業態を8月上旬に東京都品川区中延に開業することがわかった。セブン&アイでは、イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)が食品スーパーを、セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)がコンビニエンスストアをそれぞれ展開しているが、これらとはまったく別の都市型食品スーパーを展開する格好だ。ねらいはなにか(編集部注 8/2ついにオープン!どこよりも詳しく売場づくりの特徴を解説! ついにベールを脱いだ!セブン&アイ新業態「コンフォートマーケット」徹底レポートはこちら)。
人事から垣間見えるセブン&アイの本気度
セブン&アイが新たに出店する新型スーパーは、同社が2018年4月に設立した「フォーキャスト」という会社が運営する。店名も同じ「フォーキャスト(未来を予測する)」になるとみられる。
フォーキャストの社長は、セブン-イレブン・ジャパン執行役員や、商業施設の開発運営会社であるセブン&アイ・クリエイトリンク取締役兼常務執行役員新業態開発本部長を務めた有坂順一氏。セブン&アイ社長の井阪氏、常務執行役員グループ商品戦略本部長の石橋誠一郎氏らとともにセブン-イレブンの成長を支えてきた、いわばエース級の人物だ。この有坂氏を法人のトップに据えて臨むのだから、フォーキャストが井阪社長肝いりの事業であるのは想像に難くない。
さて、このフォーキャストの1号店は、都営浅草線「中延」駅から徒歩2分、国道1号線に面した場所にある。6月5日現在、店舗の建設が続いており最後の仕上げに入っているところだ。建物は地上4階建てで、店舗面積は1433㎡。最近の食品スーパーは大型化しており、2000㎡規模がザラであることを考えると、それらより一回り小ぶりといったところか。後背地は住宅街が広がる。
店舗は総菜を含む生鮮4品をメインにしているようで、生鮮3部門は「バイヤーが産地・市場と直接交渉した食材をしっかりと品揃え」、総菜では「一品一品の素材・味つけ・調理方法にこだわってご用意」という触れ込みである。総菜は店内で製造し、量り売りも実施すると見られ、売場にはオペレーターを配置するようだ。インストアベーカリーもある。
現在、同店ではパートアルバイトを募集をしており、求人サイトによれば従業員約100人を募集しているようだ。営業時間は午後10時ごろであると思われる。
さらに「毎日の買い物を便利に楽しく、スマートにできるように」(求人サイトより)、新型店ではアプリやIT技術を駆使するという。売場のパースからは「デジタルサイネージ」を設置している様子がうかがえるし、レジもほとんどがセルフレジであるようだ。
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新業態出店の背景に、井阪社長の深謀遠慮か
セブン&アイグループでは、食品スーパーの事業会社であるヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)やヨークマート(東京都/大竹正人社長)のほか、総合スーパーを展開するイトーヨーカ堂も食品スーパー業態を展開している。今回の新業態出店で気になるのは、なぜわざわざ別会社を設立してまで食品スーパー店舗を出店したのかという点だ。
一般的に考えれば、コンビニエンスストアと食品スーパーを補完する、隙間を埋めるような新しい都市型業態を作り上げたかったということになるだろう。もっと言うと、井阪セブン&アイ社長の深謀遠慮が働いているのではないだろうか。“ヨーカドー式”のやり方にどっぷりと浸かった人材では、新たな食品スーパーの発想ができないため、「新しき酒は新しき革袋に盛れ」ということなのだろうか。
都市型スーパーについては、小売大手が種々実験を始めている。イオングループでは東京、神奈川で小型スーパーの「まいばすけっと」を約700店舗展開している。食品スーパー最大手のライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)も大阪市内に「ミニエル」という約250㎡規模の小型の新業態を出店しており、総菜の売上高構成比を従来の10%から40%までに高める実験を行っている。少子高齢化の進行による中食需要が高まりを追い風に、出来立ての総菜、新鮮な生鮮品といった、従来のコンビニエンスストア業態では供給不可能だった商品を提供する新たな小型業態の開発が今後活発化していきそうだ。