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売上予測の2倍!高級街の銀座で、ワークマン女子が受け入れられた理由とは

20224月、銀座駅から徒歩2分の好立地に、「#ワークマン女子(以下、ワークマン女子)」イグジットメルサ銀座店がオープンした。ワークマン(群馬県/小濱英之社長)といえば、男性向けの作業服といった印象が強いが、新業態として“女性向け”に展開することで、開店から約4ヶ月となる銀座店は売上予測の約2倍を売り上げ、当初の見通しを大きく上回っている。

15時には品薄に

キャンプ用品売場

 「念願が叶い、銀座に出店することになった」と話すのは、ワークマンの役員待遇 新業態事業部 部長の島健太郎氏。銀座への出店計画は6年前からあったという。新型コロナの影響で銀座の地価が大幅に下がったことから“銀座進出”を果たした。

 ワークマンは国内に約950店舗を展開し、現場で働く職人を支えてきた。全国各地のロードサイドからワークマンの看板を見たという人も少なくないだろう。

 作業着や長靴などの高機能商品を職人向けに「ワークマン」業態を通じて販売してきた同社だが、機能はそのままにデザインやカラー展開を工夫し、一般消費者にも受け入れられる素地ができた。そこで2018年に一般消費者にターゲットを拡大した「ワークマンプラス」を展開したことから、“アウトドアのワークマン”としての地位も確立。最近では、お笑い芸人の田村淳さんが自身のSNSでワークマンの全身コーディネートを披露して話題になるなど、私服として愛用する人も増えてきた。

 そんなワークマンの次なる挑戦は、日本屈指の高級街に出店し、「“銀座にあるワークマン”としてこれまで以上に認知度を高め、ブランド価値を高めていく」ことだ。しかし、銀座といえば、客の目も肥えているはず。そんな中、「おかげさまでご好評をいただき、15時には品薄状態」と島氏はうれしい悲鳴をあげる。

 勝機はどこにあるのか。

高機能×低価格に“おしゃれ”をプラスしたら?

レディース撥水ライトプリーツスカート

 ワークマン女子のコンセプトは「カコクな365(日常)をステキに変える」。旗艦店となる銀座店は約90坪と限られたスペースながら、キッズ、レディース、ユニセックス、シューズ、いま話題のキャンプギアまでを取り扱い、おしゃれ好きの女性という新たなファン層を獲得している。

 一番人気は、「レディース撥水ライトプリーツスカート(1,900円)」。見た目はブティックで見かけるようなプリーツスカートだが、さまざまな機能が搭載されている。通常ひだ状に加工されたプリーツ素材は湿気に弱く、雨の日の着用は避けたいものだが、同商品には撥水加工が施され水を弾いてくれる。梅雨シーズンも気にせずおしゃれが楽しめるだけでなく、エコバックのように、クルクルと折り畳んでポケットに入れ込めば、持ち運びも可能だ。

 「デザインがかわいい」とSNSで評判なのが「レディースガーデニングサロペット(2,900円)」。他社のサロペットと異なるのは、機能性だ。ポケットが10個ついており、UVカット、高撥水、さらにストレッチ素材で動きやすい。これだけ機能を充実させれば値がはりそうなものだが、3,000円でお釣りがくる。6月中旬、店舗に訪れた40代女性は「黒がほしい。おしゃれ着として着るので」と目を輝かせたが、あいにくの品切れ。人気商品ゆえ、見かけたら迷わずレジカゴに入れること必至だ。

 平日の昼間は、2060代の女性が23人でショッピングを楽しみ、17時をすぎると仕事帰りのビジネスウーマンの姿が見え始める。土日はファミリー層で賑わい、子どもとの“リンクコーデ”をする人も。「晴海の方から自転車に乗ってご家族で来られる方もいらっしゃるようで、予想以上にファミリー層の方々にご来店いただいている」(島氏)

 ワークマン女子といっても、メンズウェアも、キャンプギアも扱っている。例えば、ウェアにも使用している撥水加工の生地をテントに応用した「BASICドームテント」は4,900円で提供。「男性のお客さまがオープンすると真っ先にキャンプギアのコーナーに走っていき、お目当ての商品をカゴに入れてから、衣料品を見て回る姿が印象的だった」(同)

 なお、銀座店はECサイトで注文した商品の受け取り場所にもなっている。これまでは、遠方のワークマンまでわざわざ足を運ばなければならなかった客が、通勤途中などに気軽に商品を受け取れるようになった。

背伸びはしない。高機能・低価格の波が銀座にもくる

銀座イグジットメルサ外観

 場所が銀座だからといって、背伸びはしない。銀座店の限定品は用意しないし、他店舗と比べて品揃えが豊富ということも特にない。価格もワークマン女子のプライスレンジのままだ。

 「出店前にさまざまな他企業の方々と話をする機会をいただいた。我々と同じフロアに100円雑貨のセリアさんが入るお話も開発の交渉の段階で耳にしていたし、ダイソーさんも4月に銀座に出店されている」(島氏)

 ワークマン女子銀座店は、ユニクロとGUの間に位置することから、買い回りも期待できる。「銀座にも低価格で高機能の波がくる。価格も商品も何も変えることはない。これまで通り自信を持って勝負しようと腹が決まった」(同)

 ただし、客をワクワクさせる演出を怠ってはならない。例えば、東京ガールズコレクションに出展したコーディネイトを着せたマネキンを店にも設置して“マネキン買い”できるよう工夫し、高級ブティックのような“高見え(実際の価格帯より高級に見えること)”を狙って、蛍光色のマネキンを採用した。床材は木目調で、やわらかな印象を心がけた。

 春に、「まん延防止等重点措置」が全面解除となってから、銀座にも人が戻りつつある。「銀座で働いている人も多くいるため、仕事で着用される商品の購入などでご利用していただけると考えている。勝機はそこにもある」(同)

“銀座仕様”のオペレーション確立へ

役員待遇 新業態事業部 部長の島健太郎氏

 一方で、銀座の地で勝負するからこそ見えてきた課題もある。現在取り組んでいるのは、オペレーションの改善だ。

 現在、銀座店に登録しているスタッフは約20名で、内78名が店舗に常駐している。一方で客は平日に約300人、休日には700人が訪れ、他店舗と比べてかなり多い。「時間帯によってはレジ待ち客で長蛇の列ができてしまうためレジ対応に追われ、顧客体験を満足に提供できていない部分がある」(島氏)

 例えば、このようなトータルコーディネートをすれば、雨の日の保育園の送り迎えが楽になる、など「発見と日常がすてきに変わる体験をお客さまにご提供したい」(同)

 こうした課題を踏まえ、銀座店の店長には、長年、銀座の地で接客を行なってきた“接遇のプロ”を選任。銀座クオリティに合わせて接客の質を向上していく考えだ。

 なお、#ワークマン女子業態の売上は、まだ全社の1割に満たないが、トライアンドエラーを重ね、今後も出店速度を加速させていく。

次は、シューズ専門店。さらなる拡大目指す

「ワークマンシューズ」池袋サンシャインシティアルパ店

 2022616日、東日本では初となるワークマンの靴専門店「ワークマンシューズ」が東京・池袋にオープンした。大阪・難波に次いで2店舗目となる。同時開店する#ワークマン女子池袋サンシャインシティアルパ店の真横にあり、シューズ店と女子店を合わせると132坪。首都圏の商業施設内店舗としては最大売場面積の旗艦店となる。

 ワークマンシューズには、独自開発の高低反発のランニングシューズや、ワークマンお家芸のレインブーツ、脱げにくく疲れにくい構造のパンプスなど機能性の高いシューズがずらり。「高機能で履きやすい一般靴を低価格で提供している企業はあまりない。池袋店の年間売上は#ワークマン女子店と合わせ、歴代No.1を目指している」と島氏。

 「シューズの発信拠点としてさまざまな実験をしていきたい」と、10月に吉祥寺の商業施設にもオープン予定。10年で200店舗まで増やす計画だ。