メニュー

「おいしさ」のあくなき追求……原信・ナルスの青果戦略を徹底解剖!

アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長)傘下の原信(新潟県/丸山三行社長)とナルス(同:以下、原信とナルスの2社を原信・ナルスと総称)は、全社的に「おいしさ」にこだわった商品政策(MD)を基本方針に掲げている。そのもとで青果部門では、生産者との“共存共栄”をめざす商品づくり、そして店内加工のサラダや青果部門が開発する鍋スープといった、オリジナリティの高い商品を軸としたMDによって差別化を図っている。

インストアサラダ好調で過去最高益を達成

 原信・ナルスの青果部門の全店売上高は、2025年3月期実績で対前期比5.9%増だった。店内調理のサラダをはじめとした利益率の高い商品の売れ行きがとくに好調で、過去最高益を達成している。

 同社のMD機能を担う原信ナルスオペレーションサービス(新潟県/丸山三行社長)で商品本部生鮮部青果チーフバイヤーを務める山口武則氏は、「野菜の相場高騰は5月に入って落ち着いたが、サラダなどの即食商品の売上がよく、4月、5月の月次ベースでも全店売上高は好調だ」と説明する。

「原信古正寺店」の青果売場。緻密なカラーコントロールで商品を陳列する

 青果全体の価格政策では、指定野菜14品目に、26年度に追加されるブロッコリーを加えた15品目では、上限売価を設定して値頃感を維持。果物では、朝食で出現頻度の高いバナナやキウイをコモディティ商品ととらえ、為替の影響などで相場が高騰しても価格を維持して提供する方針を掲げている。

 原信・ナルスの青果部門に商品づくりは、「おいしく仕入れて、おいしくつくって、おいしさを伝える」という一貫した考え方に則っている。

 まず「おいしく仕入れる」ために、産地から出荷されて売場に並ぶまでの時間を短縮することで、より新鮮な状態で提供できる体制を構築している。

 たとえば地場野菜は、約1000軒の生産者と委託販売もしくは契約生産の2パターンで取引を行い、地域に根差した品揃えを実現。お客からの支持は厚く、地場野菜の売上高構成比は野菜カテゴリーの中でトップとなっている。

地場野菜コーナーでは、販売実績の進捗をリアルタイムで共有できるシステムを導入している

 委託販売では、販売実績の進捗をリアルタイムで共有できるシステムを導入。これにより、地場農家が売れ行きを見ながら追加納品できるようになり、売上伸長に寄与しているという。

 加えて、国が持続可能な食料システムの構築をめざして掲げる「みどりの食料システム戦略」に呼応するかたちで、原信・ナルスでは25年6月現在、24店舗で有機野菜のコーナー化も進めている。

 次に、「おいしくつくる」を象徴する商品が、野菜の好調を牽引する店内加工の即食商品だ。「トマトたっぷりフレッシュサラダ」(298円:以下税別)のようなサラダや、「千切りキャベツ」(1袋98円)をはじめ時短ニーズに対応した商品を品揃え。手間を惜しまず、店内カットにこだわる理由は、同社の「おいしさ」への追求にほかならない。

インストアサラダは、同社の「おいしさ」を追求した商品の1つだ

 そのほか、バイヤー自身が海外の産地を回って開拓した指定農園から調達する「カットパインブロック」といった商品も、おいしさをとことん追求する姿勢を体現したものだ。

 山口氏は「キャベツの千切りひとつ取っても、切り方による味の違いを研究し、作業効率も考慮した袋の形態や詰め方を追求している」と話す。

 また、バイヤーが目利きして仕入れた素材をただ使用するのではなく、POPやシールなどの販促物でも価値をお客に伝えることで、訴求力を高めたい考えだ。

キャベツの千切りひとつとっても、切り方による味の違いを研究し、作業効率も考慮した加工方法を追求している

青果部門で鍋つゆ開発、独自の商品開発を促進

 さらに原信・ナルスの青果部門では、素材とのクロスMDを想定した加工食品の開発も行っている。その代表例が、昨年発売し大ヒットとなった

・・・この記事は有料会員向けです。
続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。
モバイルバージョンを終了