ファミレスチェーン「デニーズ」が手掛ける冷凍食品ブランド「Denny’s Table(デニーズテーブル)」が好調に販路の拡大を進めている。2022年5月の発売からわずか1年足らずで、セブン&アイ・ホールディングス(東京都)傘下の食品スーパーのみならずなど全国の小売店で販売を開始した。本稿ではセブン&アイ・フードシステムズ(東京都/小松雅美社長)の部門担当者を取材し、Denny’s Table躍進の背景を聞いた。
ギフト商品から転じて冷凍食品の商品化へ
22年5月に第1弾として9製品を展開したDenny’s Tableは、同年10月に新たに9商品を追加し、現在は24製品を1品当たり400〜800円の価格帯で販売している。「お店のソースで仕込んだデミグラスハンバーグ」(税込580円)などをラインナップする。
デニーズはDenny’s Tableを立ち上げる前から、母の日やお中元などのギフト用としてメニューの一部を冷凍販売しており、コロナ禍の外出自粛で店舗の売上が落ち込んだことをきっかけにギフト用メニューの通年販売を開始した。その通年販売が想定以上にお客に受け入れられ、従来の3〜4倍もの売上を記録したという。
そうした成功体験をもとに、コロナによって変化した生活様式に合わせるかたちで立ち上げた冷凍食品ブランドがDenny’s Tableだ。
全国317店舗(22年8月末時点)あるデニーズのすべての店舗でDenny’s Tableを販売しており、23年内には311店舗に拡大予定だという。店頭販売だけではなくグループ会社であるイトーヨーカ堂(東京都)やヨークベニマル(福島県)、ヨーク(東京都)のほか、大手食品スーパーでも販売を開始している。さらにネットスーパーの「イトーヨーカドーネット通販」でも購入が可能だ。
Denny’s Tableが好調な売れ行きを見せている要因について、グループのシナジー効果が大きいと外販事業推進部長の堀川淳子氏は語る。
「外食産業の経験しかない当社は、冷凍食品の開発にあたり右も左もわからないところから始まった。デニーズで食べる料理の味を冷凍食品で再現するにはどうしたらいいかといった課題に対しては、セブン&アイのグループ企業から得たアドバイスが生きた」(堀川氏)
ポジショニング確立のための工夫
Denny’s Tableが好調な要因はほかにも、ターゲティングがうまくマッチした点も挙げられる。
先述のとおり「自宅でも外食を再現したい」というコンセプトから始まったDenny’s Tableは、30~40代の働きながら子育てをする女性をメーンターゲットに設定した。商品開発にあたって社内外で30~40代の働きながら子育てをしている女性に意見を募ったところ、お金で時間を買う人が多いことがわかったそうだ。「そうした世代が求める冷凍食品は、価格の安さよりも『早くつくれておいしい』商品だった」と堀川氏は説明する。
それに加えて「手抜き料理、もしくはいつも同じ料理だと家族に思われたくない」といった声が多いことも見えてきたという。結果として、価格の安さよりもおいしさや外食のプレミアム感を訴求する商品ができあがった。
デニーズは当初、Denny’s Tableの商品を実店舗とイトーヨーカドーネットスーパーの両方で販売開始しており、売れ行きは堀川氏の予想に反してイトーヨーカドーネット通販のほうがよかったという。その理由について、堀川氏は以下のように分析する。
「想像以上に、時間をお金でカバーしたいと考えているお客さまが多かったのではないか。Denny’s Tableのコンセプトがネット通販チャネルとマッチしたといえる」(堀川氏)
Denny’s Tableの新たなチャレンジ
Denny’s Tableで最も売れ行きのいい商品は、「お店のソースで仕込んだデミグラスハンバーグ」(税込580円)と「和風ビーフシチュー」(税込753円)だという。デミグラスハンバーグはデニーズで提供する料理と同じソースを使用している。これがDenny’s Tableの強みなのだが、デニーズはプロモーションにも余念がない。よりおいしく食べてもらいたいという思いからDenny’s Table公式のホームページやInstagram、デニーズの店舗などで、ひと手間を加えるだけのアレンジレシピを提案している。
デニーズは、Denny’s Tableのさらなる発展に向けて課題や展望について語る。
「今後はデニーズのブランドを生かすだけではなく、お客さまの想像を超える“尖った”商品を打ち出さなければならない。ほかにも、個食だけではなく家族向けの大容量商品も販売したい」(堀川氏)
1974年に国内1号店がオープンしてから来年で50年が経つデニーズ。歴史あるファミレスチェーンの強みを生かしてさらなるチャレンジを続ける。