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値上げ続くなか大胆な値下げ策 生協が勝負に出る「くらし応援全国キャンペーン」とは

 コロナ禍で一時期特需に沸いた食品小売業界。そのなかでもとくにその恩恵を受けた業態が生協である。そんな生協陣が新年1月から3カ月間、その特需を原資に強気なキャンペーンに打って出る。その具体的な内容とねらいをレポートする。

日本生協連と32の地域生協は、「くらし応援全国キャンペーン」を各地で実施する

くらしに身近な商品を
値引率7~10%で提供

 各地の生協が一つにまとまり「くらし応援」価格で全国キャンペーン――。物価の高騰や相次ぐ商品の値上げがくらしを直撃する中、日本生協連と32の地域生協は、2023年1月から3月までの3カ月間、商品値下げによる「くらし応援全国キャンペーン」を各地で実施する。
同キャンペーンの実施に至った背景を、日本生協連の山田英孝常務理事は「組合員のくらしを守り、支えていく全国の生協の思いが一致した」と述べる。
 
 「くらし応援全国キャンペーン」とは、日本生協連が全国に生協に供給するプライベートブランド(PB)「CO・OP商品(コープ商品)」の100品目と、会員生協の独自商品50品目以上を、期間中に7~10%の値引率で提供するという企画。生協がこうした生活応援キャンペーンを、同じ時期に、同じマークを掲げて、全国規模で行うのは今回が初となる。

日常でよく使う日配品を中心に、コープ商品の100品目と、会員生協の独自商品50品目以上を7~10%の値引率で提供する

 昨今の原材料や物価高騰は生協側にとっても厳しい。各社で値上げラッシュが続く中で、あえて値下げに踏み切り、くらし応援への姿勢を示すキャンペーンとして注目される。

 値引き対象商品は、日常でよく使う日配品を中心に選定。値引き参考価格の例を挙げると「牛乳218円→208円」「ロースハム198円→180円」「食パン118円→108円」「キャノーラ油448円→398円」などで、消費行動に影響を与えそうだ。

 日本生協連が22年6月に行った全国組合員アンケート調査(有効回答数4689件)では、値上げによる家計への負担を86%が実感し、節約意識が高まったという回答も87%となった。値上げを実感する商品は「パン」「食用油」「小麦粉・ミックス粉」などくらしに身近な商品が上がっている。キャンペーンの内容はこうした組合員の暮らしに対応し企画した。

メーカーや生産者の負担なし
コロナ禍での収益を原資に

 キャンペーン実施の背景について日本生協連営業本部の久保田諭本部長は「21年1月頃から物価高が続き、家計への負担が高まっている。今後も物価高は続く見通しで、全国規模のキャンペーンを生協の連帯によって打つことを決めた」と話す。

 コロナ禍でのステイホームによる需要の高まりで20~21年度、生協の経営実績は大きくアップした。その収益をキャンペーンの原資として活用する。取引先メーカーや生産者への負担はない。

生協陣はコロナ禍で得た収益をキャンペーンの原資に投じ、生協の存在を広くアピールする考えだ

コープデリ連合会は
総額10億円を投入

 キャンペーン実施にあたり、各地の生協では、店頭、宅配のカタログ紙面で共通マークをつけてアピールする。ちなみにコープデリ生活協同組合連合会(埼玉県:以下、コープデリ連合会)では220品目を対象に、総額10億円をかけて値下げし、特別価格で提供するという。

 なお、キャンペーンを行う生協は次の32生協だ。

 コープさっぽろ、コープ東北サンネット事業連合(コープあおもり、青森県民生協、コープあきた、いわて生協、生協共立社、みやぎ生協、コープあいづ)、コープデリ連合会、パルシステム連合会、東都生協、ユーコープ、東海コープ事業連合、トヨタ生協、かりや愛知中央生協、コープ北陸事業連合(とやま生協、コープいしかわ、福井県民生協)、コープきんき事業連合、コープこうべ、コープ中国四国事業連合、コープ九州事業連合(エフコープ、コープさが、ララコープ、生協くまもと、コープおおいた、コープみやざき、コープかごしま、コープおきなわ)。

 生協陣がここまで総力を挙げたキャンペーンをこの時期に実施するのは、全国各地の生協がともに取り組むことでスケールメリットを発揮するとともに、消費者にインパクトを持って生協の存在を訴求するねらいがある。「コープ商品のよさと生協の取り組みをあらためて知っていただき、(生協を)広く社会にアピールする機会にしたい」(山田常務理事)と期待を話す。

 このように、これまで各地でバラバラに活動している印象の強かった生協は着実に連帯の動きを強めており、コロナ禍で得られた原資をいかし食品小売業界のなかでも存在感を大きいものにしようとしている。同キャンペーンの効果に注目が集まる。