商品をバージョンアップして価格帯を上げることにより、比較の対象が変わって新たな値頃感が生まれるーー。そんなこともあるようです。今、スーパーマーケットで盛んに開発されている高単価なおにぎりやベーカリーが、弁当や専門店商品との比較で値頃感を発揮しています。

おにぎりで200~300円台は高単価?でも弁当と比べたら……
近頃、弁当の主力商品は600~700円台になりつつありますが、かといってカテゴリーの下限価格は200~300円台を維持しています。その工夫については以前「マミープラス、クルベにライフまで! 低価格弁当の新トレンドは?」で触れました。
下限価格を維持する一般的な手法は、量目を調整することです。それではお腹に足りない? しかしスーパーマーケットでの買物は複数の商品を買い合わせるのが普通です。財布に余裕があればサラダをつけたり、汁物かカップ麺を足したり、飲み物やデザートだって考えられます。弁当一つで完結するより、栄養バランスをよくすることもできるでしょう。
弁当が高いなら、別の選択肢もあります。うどん、焼きそば、パスタなどの麺類も人気ですが、以前にはない高価格帯にチャレンジしているカテゴリーとして、おにぎりがあります。
昨今は、おにぎりをつくるための素材もコストアップしています。ですが、ここでいう「高価格帯」というのは、原価上昇に伴う値上げといったレベルの話ではありません。おにぎり1つで200円台、さらには300円台と、まさに“弁当の代替”になり得るような商品がスーパーマーケットの店頭で増えているのです。
おにぎりと弁当の「境界線」にある商品
もとより、おにぎり専門店にはそのくらいの価格帯の商品は存在しました。スーパーマーケットが専門店も視野に入れた高単価おにぎりを開発するようになったのは、内食ニーズが高まったコロナ禍以降のトレンドです。おにぎりを大きくしたり、具材のグレードをアップしたり増やしたりと、あらためてインストアでの商品化に力を入れています。
サミット(東京都)が「ららテラス北綾瀬店」(東京都足立区)で商品化した「具たっぷり」シリーズ(税抜298円)は、おにぎりの上に具材を乗せてラッピングしています。POPに書かれていたとおり「丼みたいなおにぎり」であり、見た目的にも、おにぎりと丼の境界線にあるような商品です。
いなげや(東京都)は、「偉大なおむすび」をシリーズ化していますが、200円台を中心とした商品群の上に、「めっちゃ偉大なおむすび」と名付けた税抜389円のラインがあります。加えて、ワンハンドで食べられる弁当として「オシ弁(推しのおかず弁当)」シリーズ(税抜299円)があります。具材を乗せた米飯の下に海苔が敷かれており、だからワンハンドで食べられるというのであれば、これもおにぎりと弁当の境界商品と言えます。
バーガー、サンドイッチにも高価格帯商品が登場!
カテゴリー内では高価格帯でも、弁当と比較すれば値頃な商品は、ベーカリーにもあります。その1つが「バーガー」です。これもコロナ禍からでしょうか、200~300円台の商品開発が増えています。一般的なベーカリー商品としてはやや高い価格設定ですが、こちらも弁当と比較すれば高額というわけではありません。昨今は外食チェーンのバーガーも値上げトレンドにあるので、そちらと比較しても割安感があります。
たとえばイオンリテール(千葉県)では、税抜280円でチーズバーガー、チキン南蛮バーガー、海老カツバーガーなどを展開しています。2025年6月にオープンした「イオンスタイル竹の塚」(東京都足立区)では、バーガーにコーヒーを合わせた「バリューセット」を用意していました。
ヤオコー(埼玉県)はチキン、フィッシュ、ケバブに加えるかたちで、「杉並桃井店」(東京都杉並区)で「海鮮レンコンチリバーガー」(税抜298円)を発売しました。独自色のあるメニューでラインアップを強化中です。バーガー以外にも、サンドイッチのバリエーションは以前から豊富です。カツサンドなどは古くからあるカテゴリー内の高単価商品です。
コープみらい(埼玉県)は、今期の新店で「カスクートサンド」のシリーズ化を始めました。常温で販売するバゲット系サンドで、ハム&チーズ、パストラミポークなどを税抜398円で展開します。常温でも葉物野菜やニンジンなど彩りのよい野菜を挟み、フレッシュ感のある見栄えに仕上げているのがポイントです。
おにぎりやバーガー、各種サンドのアップグレード商品は、高単価でリッチ感があります。それでも単品は500円未満です。低価格弁当と同様、ほかに必要なものを買い足せる余裕もありそうです。しかもカテゴリー内では高単価の部類ですから、いろいろなトライが可能でしょう。この価格帯では今後もおもしろい商品が出てきそうです。