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「社長に内緒で」シリーズがSNSで話題! 綿半の食品PB、ヒットの裏側と新展開とは

中部地方を本拠にホームセンタやスーパーセンター、食品スーパーなどを運営する綿半ホールディングス(東京都)の個性的な食品プライベートブランド(PB)商品が話題だ。20222月に「社長に内緒で玉ねぎを入れすぎた 玉ねぎファンに贈るシャリシャリ玉ドレ」を発売したものの、後日、グループの中核企業である綿半ホームエイド(長野県)の牧島禎彦社長が「玉ねぎの入れすぎ」を指摘し、同社は自主回収を発表する事態に。これが「本当に社長に内緒だったの?」などのコメントで溢れてSNSで“バズ”り、ネットニュースにも取り上げられた。消費者を驚かせるPB商品の開発の裏側はどのようになっているのだろうか。商品開発を担うグループ会社、綿半パートナーズ(東京都)の事業担当者に話を聞いた。

自主回収を経て売上増加へ

「社長に内緒で玉ねぎを入れすぎた 玉ねぎファンに贈るシャリシャリ玉ドレ」

 安土・桃山時代に綿屋として創業した綿半ホールディングスは、1977年に綿半ホームエイド(長野県/牧島禎彦社長)を設立し、長野県にホームセンタ1号店を出店した。2007年には既存ホームセンターに生鮮食品を導入したスーパーセンター業態を初出店し、それ以降は既存ホームセンターのスーパーセンターへの転換を積極的に行っている。事業の多角化を進め、2015年には食品スーパー事業に参入した。

 PB商品の開発は2007年ごろにホームセンターの日用雑貨からスタートし、スーパーセンター事業の展開に合わせて生鮮食品、加工食品、日配品などへ取り扱うカテゴリーを拡大していった。PB商品の開発を担う綿半パートナーズのプロダクトユニット フードスタイルクリエーションセクション セクションリーダーの山崎高志郎氏は、「現在販売しているPB商品約300アイテム。このうち食品は、約半数を占めるまでに成長している」と話す。

 綿半パートナーズが2022年に打ち出した「社長に内緒で」シリーズは、プロのシェフによる監修のもと開発された。素材のこだわりや、一般的な商品よりも大幅に増やした内容量などが特徴で、串団子の「社長に内緒で多めつぶ練りくるみのもっちり団子」や、パスタソースの「社長に内緒で肉を入れすぎたボロネーゼ」などを販売している。

「社長に内緒で」シリーズ

 綿半ホールディングスが「社長に内緒で玉ねぎを入れすぎた 玉ねぎファンに贈るシャリシャリ玉ドレ」の自主回収を発表したのは202211月だ。同社HPによると、牧島社長が自宅で同商品を開栓したところ、中身が勢いよく噴出し、衣装および自宅内装を汚損したことがきっかけだったという。開発チームの調査によると、原料の玉ねぎに付着した酵母菌を完全に不活性化させることができず、内圧が高まったことが噴出の理由だったようだ。

 綿半ホールディングスがHPで発表した内容は、あくまで「ことの経緯と調査結果を詳細に記した」だけだと山崎氏は話す。しかし、同社の想定しないところで、この対応が誠実だと消費者のあいだで話題に。本来は望ましくないはずの自主回収という事態にもかかわらず、再販売した同商品の売上は一時的に大きく伸び、以降も好調だという。

ユニークな食品PBの開発の裏側!

 思わぬかたちで消費者を驚かせた「社長に内緒で」シリーズだが、これら食品PBはどのようなプロセスを経てつくられているのだろうか。開発体制やブランディングの裏側について聞いた。

 綿半パートナーズが現在の開発体制になったのは2020年だ。当時、食品PBの開発を行うフードスタイルクリエーションセクションのメンバーを5人増員し、体制を強化した。それまでは山崎氏の専任だったが、異なるバックボーンを持つ2060代の社員を加え6人になったことで、各自の経験を生かした商品を開発できるようになった。開発にあたり、コンセプトは「プレミアム感や満足感のある商品」で、顧客目線に立つことを重視しているという。

 商品のネーミングやパッケージデザインなどは、別の部署のブランドマーケティング部門が担当する。同部門は女性スタッフのみで構成され、ブランドコンセプトや商品価値にマッチしたデザインやロゴ、マスコットなどブランディングにかかわる部分を戦略的に検討していく。

 ブランドマーケティング部門の人員は、社内公募を行うなどグループ力を生かして登用している。他社の多くが外注しているデザイン領域を内製化することで、開発コストの削減にも大きく貢献している。

「高質でユニークなPB商品を生み出せる理由は『多様な人材の適材適所への配置』であり、それを実現できる『グループ全体の風通しのよさ』が当社の強みだ」(山崎氏)

 綿半パートナーズが現在、「社長に内緒で」シリーズに次ぐ新たな一手として注力している食品PBが、冷凍弁当「レイトウco.(コ)」シリーズだ。冷凍弁当は一般消費者以外に給食や介護食として企業が購入するケースが多く、市場規模は1兆円を超える。そこに注目した綿半パートナーズは、冷凍弁当の課題である加熱ムラを長年の挑戦と努力により解消した同シリーズを打ち出し、現在の売上は計画比約120%で推移している。

 綿半ホールディングスは235月時点で、食品の売上に占めるPB商品の構成比を11.3%まで上げている(214月時点では5.6%)。山崎氏は「今後はグループ内だけではなく他社店舗でも売るなど販売チャネルを拡大したい。目標は売上100億円を超えるヒット商品の開発と、売上構成比50%の達成だ」と話す。