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日本酒市場、季節感のある演出や総菜とのコラボ、飲み方提案でトライアル促進を

コロナ禍以降、価格改定の影響を受けた節約志向による大容量品と、健康志向の糖質オフ系や小容量の付加価値品という消費の二極化が進んでいる日本酒カテゴリー。近年は和食以外にも合わせやすいフルーティーで香りの高い日本酒が人気を集めている。

外飲み回帰はあるものの家飲みもある程度定着

コロナ禍以降、価格改定の影響を受けた節約志向による大容量品と、健康志向の糖質オフ系や小容量の付加価値品という消費の二極化が進んでいる日本酒カテゴリー。(i-stock/kuppa_rock)

 KSP-POSデータによると、2022年4月から23年3月の日本酒(清酒)カテゴリーの期間通算金額PIは、対前年同期比1.0%減の9860円、数量PIは同4.3%減の16.00となった。

 月別の金額PIの動向を見ると22年10月、12月を除いてわずかに前年を割り込んでいるが、それほど極端な落ち幅の月はない。また数量PIの前期比は金額PIと比べ低めに推移している【図表】。

 日本酒(清酒)カテゴリーは例年、気温が下がり店頭に鍋物商材が増える10月ごろから数字が上がり、歳暮や年賀といったギフト需要および人の集まる機会が増える年末年始が山場となっている。

 サブカテゴリーで見ると、純米吟醸酒、純米酒、料理酒、その他清酒については、金額PIが前年を上回っている。

 コロナ禍以降、在宅時間が増えたことで家飲みを楽しむ層が増えており、その流れの中で家庭内での日本酒需要も伸長した。しかし、長引くコロナ禍や物価の上昇によって生活者の消費マインドが変化。節約志向やまとめ買いの観点から選ばれる大容量タイプと、糖質オフなどの健康志向系や小容量のこだわり品といった付加価値タイプによる消費の二極化が見られる。

若年層や女性など新規顧客をつかむ売場づくりへ

 23年に入って新型コロナウイルスの流行も落ち着き、外飲みの市場も徐々に回復してきたが、市販用の売上も極端に減少していないことから、家飲み消費もある程度定着したとみられる。

 昨今の日本酒はフルーティーな香りを楽しめる商品が多く、和食だけでなく洋食や中華などさまざまなメニューに合わせやすい。

 価格訴求だけでなく醸造法や味わいの違い、料理との合わせ方など自分向きの商品と感じられる提案でトライアルにつなげることが、マーケットの拡大につながるだろう。

 白鶴酒造ではワイン用酵母と日本酒用酵母を掛け合わせて開発したハイブリッド酵母を使用した新商品「HakutsuruBlanc」を発売した。大関では業界初となる有機JAS認証を取得した純米酒「#J(ハッシュタグJ)」を展開する。

 小西酒造ではグラスでカジュアルに楽しむ「KONISHI ひやしぼり」シリーズを提案。菊水酒造では発売50周年を迎えた「菊水ふなぐち」を中心にキャンペーンを展開する。宝酒造は人気のスパークリング日本酒、松竹梅白壁蔵「澪」のリニューアルを実施し、若年層に訴求する。

 日本酒は長年中高年層に支えられているカテゴリーであり、それぞれのブランドが多くのロイヤルユーザーを抱えているが、今後、市場を拡大していくためには若年層や女性といった新しいユーザーの獲得が重要になるだろう。

 夏場に向け冷酒や微発泡タイプによる提案を行うほか、日本酒のタイプ別の選び方や飲み方提案、季節感のある演出や総菜とのコラボレーションなど、手に取りやすい環境をつくることで日本酒売,場を盛り上げたいところだ。